3-20 計画準備期間 その2
製作4日目。
マリアのデザインが完成した。
モチーフは翼だ。ありきたりの様な気がする。マリアも納得はしていないが、これにしたようだ。
「テラスちゃんがどうしてもこれが良いって言うのよね?斬新さが無いから気に入らないんだけど・・・。」
「なんで?これ、とても素敵よ!」
笑顔のテラス。間違いないな。
「彩飾と装飾はどうするんだ?」
それはラフデザインだったからだ。
「デザインが決まれば清書はすぐよ。お昼には渡せるわ。」
内心複雑そうだが、決めたようだ。
それで良いと思う。根を詰めても迷いが出るだけだ。
「少し立体的にしようと思うけど、いける?」
「任せろ!」
「大した自信ね。いいわ、難易度高いのを要求してみせるから!」
挑戦的になるマリア。士気も高くなった事だし、これなら満足なデザインを持ってくるだろう。
それまで時間があるので、道具の手入れをする。
こればかりは手抜きが出来ない。製作より手入れのほうが時間がかかる時もある。今は無限保管の力がある為、そこまで丹念にする事がなくなったが、今回は気を引き締める為にも手入れをする。砥石を使い、丹念に、ゆっくりと。
昼過ぎ、マリアがデザインを持ってきた。ラフとはかけ離れた派手なデザインだ。翼も立体的、彩飾もグラデーションありで、正直ケバい。
「虹の翼をイメージしたわ。これ一つで技術力がわかる代物よ!」
完全に意図を忘れている。マリアの相手は貴族であって俺ではない。まぁ、やるけど。
「どうよ?これは難しいでしょ?!」
ドヤ顔すらしてくるとは思ってなかったが、満足のデザインが出来たのなら一向に構わない。
「虹ね・・・。」
そういえば、虹色の石を兎から貰っていたな。彩飾はこれをイメージするか。
無限保管から虹色の石を取り出す。ついでにマリアに見せてみた。
「なに、これ?え?え?」
混乱?困惑?よくわからん。
「初めて見た石だわ。稀少な物だろうけど、価値がわからないのよ。どうしたの、これ?」
「森の精霊さんから頂いた。」
「・・・、精霊?本当に?」
ウソつかんよ。どうせばれるし。
「うん、これは人に見せてはいけないものね。私も黙っているから、絶対に落とさないでよ!」
「わかってる。」
マリアの興奮に冷静で返す。価値がわからないと言っていたが、人には価値がわからない、のかもしれない。マリアの鑑定は信用している。だからこそ思う。大切にしよう。
櫛の製作に入る。
形は片翼。丸みもあるが、立体的の彫り出しをする。
細かい作業が続く。一羽一羽掘り出し作業だ。飾りを先に造るのは、櫛先に負荷をかけさせない為だ。
堀込みではなく、掘り出しなので時間がかかる。イメージは出来上がっているが、一つ一つが細かい。根気の作業だ。チート?勿論、使っている。
マリアが何日も考えたデザインだ。それに答えようじゃないか!
片側の作製が終わって一息つくと、食事の香りがした。気がつけば夜になっている。辺りには誰もいない。冷めているが、ありがたくいただこう。
掘り出しだけは朝までには終わらせたい。
反対側の作製に入る。掘り出し方も逆になるので、集中せねば。掘り出しをする。
黙々と、淡々と、集中切らさずに作業をする。目は離さない。手を止めない。思考を切らさない。ただ、櫛を完成させるために、丹精を込める。
★
製作5日目。
気がつくと、朝になっていた。掘り出しが終わり、研磨もした。ようやく装飾が完成した。今までで一番時間がかかったのはいうまでもない。
効率厨いたら駄目出しするレベルだなぁ。
櫛の労力としては無駄が多すぎるが、それでも構わない。完成まで頑張ろう。
徹夜は慣れている。背筋を伸ばし、固まった身体をほぐす。
朝御飯が運ばれてきた。マリアだ。テラスもいる。
「あの、さ、根詰めすぎないでよ。」
心配させてしまったか?確かに徹夜したからな。
「大丈夫だよ。」
笑顔で答える。
テラスが抱き締めてきた。
「頑張って!」
「ありがとう、テラス。」
御飯を食べ、一息。続きを始めよう。
櫛先は均等に、これはすぐに完成する。乾燥も必要だが、天日ではなく囲炉裏の熱で乾燥させる。天日では焼けてしまうからだ。その間に着色剤の準備をする。凹凸があるため、刷り込みは指でやるしかない。桶、水、布も用意する。
擂り鉢で着色剤の粒子を細かくする。浸透力を上げる為だ。重ね塗りも必要になるから、かなりの時間がかかるだろう。
乾燥も終了し、着色に入る。虹色、しかもグラデーションもあるので、順番が大事だ。こればかりは虹色の石を参考にする。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色。しかもグラデーションも入れる。違和感無く、それでいてケバくない配色バランスが必要だった。
紫から始める。方翼の外側にした。指で擦り付ける。馴染むように何度も行う。布も使う。多少の当たりもつけて他の着色もするが、これは乾燥にばらつきがおきない様にする為だ。乾燥させ、着色を繰り返す。指や布で色を延ばしながらグラデーションを造る。
何度目かの乾燥の時に、御飯に気がつく。マリアもいた。気がつかなかった。
「もういいから!休みなさい!」
何を怒っている?もう少しで完成するんだが。
「身体を壊しちゃうわよ!少しは休みなさいよ!」
これ位は大した事無いんだが。徹夜も馴れてるし。
「そりゃぁ、私のデザインも原因かもしれないけど、そんなに無理するとは思わなかった。だから、休んで!お願いだから!ね?」
「ありがとう。でもね、もう少しで完成するから、頑張らせてくれよ。」
「バカッ!!」
走って出てってしまった。言葉を間違えたか?だが、今は櫛だ。もう少しで完成する。
彩飾が完成する。だが、まだだ。羽の一片を削り、そこに金剛石の欠片を嵌め込む。小さな羽の一片なので、アクセントになるだろう。
小屋に行くと、テラスとビビが寝ていた。マリアもいた。もしかしたら、愚痴でも言ってたのかもしれない。軽くテラスの髪を透く。抜けた髪も使う。
「また使わせてもらうよ。テラス。」
頬にキスをする。テラスが笑顔だ。
起きてる?いや、寝てるな。了承と受け取ろう。
最後の仕上げ。
七色の櫛と、テラスの髪を融合させる。勿論、創造を使う。白銀石の要領だ。恐れているのは、七色が消える事だが、多分大丈夫。多分。
光虹櫛
完成。無限保管に入れて出す。
これは・・・。
外が明るくなってきたか?
外にでてみる。
日の出だ。
二徹して完成か。櫛が日の光に煌めきを出す。金剛石も独自の七色発光する。なんともはや・・・。
国宝、まさか伝説級とかじゃないだろうな?
完成に満足感はあるが、苦笑してしまう。俺も大概だ。
ビビが小屋から出てきた。朝の鍛練だろう。
「おはよう。」
「おはようございます、ソーイチ様。」
小走りで駆け寄ってきた。頭を撫でる。尻尾が切れる勢いで振っている。よっぽど嬉しいのだろう。
「櫛が完成したから、後でお披露目するよ。」
「そうですか!おめでとうございます!」
ん?おめでとうなのか?まあいいや。
「稽古つけるよ。」
「ありがとうございます。ですがお疲れではないのでしょうか?」
「大丈夫。さ、一緒にやろうか。」
「はい!よろしくお願いします!」
棍を持ち、二の型を行う。ビビの足運びに無駄な力があるな。だが、筋が良い。これなら間に合うだろう。流石ビビだ。
汗を流し、風呂へ。
「おはよう。」
「おはよ、ソーイチ。」
「・・・おはよ。」
マリアは低血圧か?目覚めが悪い。だが、乱れた髪と衣服がセクシーだ。ありがとうございます。
「風呂に入るけど良いか?」
「うん、私は御飯の準備をするわ。ごゆっくり・・・。」
まだ寝ぼけているな。お披露目は後にしよう。
「お風呂!」
テラスが嬉しそうだ。そういえば、2日は入っていないな。
風呂を焚き、皆で入る。
至福!疲れが取れる。
眼福、正に眼福!
テラスの煌めく身体、ビビのしなやかな身体が心を癒す。風呂は最強だ。
今日は二人ともベッタリだ。身も心も癒される。
石鹸で身体を洗う。テラスの様子が違う。顔が赤いな。
石鹸で身体を洗ってもらうが、んっ!何してるんですか?
テラスが身体を擦りつけてきた。これはたまらん!
ぎこちない動きだが、身体全身を擦り付け洗ってくれる。胸の感触が、ふとももがヤバイ!
ちょっ?!えっ?!
ビビは背中だ。背中を覆うように、抱き締めながら擦り付ける。これもヤバイ!
「何を?して、いる、のかな?」
テラスは真っ赤な顔をしている。
「あのね、頑張った旦那様には、ご褒美にご奉仕するんだって。すごくよろこぶって北の村の人が言ってた。」
グッジョブだ!いや、違う!ご褒美は嬉しいが、ご奉仕はしなくてもいい。だが、これは断れない。断れる訳がない。正に天国!徹夜明けもなんのその!
って、テラスさん?あの、えっ?
「ソーイチ・・・。動かないでね・・・。」
うん、そうだよね、そうなるよね。
そのまま中へ。そのまま動かない。テラスも俺を迎え入れ抱き締めたまま動かない。俺も抱き締める。
その後、歯止めが効かなくなった。
洗い場で、浴槽で、就寝場所で、何度も愛した。
テラスは優しく包み込む。ビビは激しく求めてくる。俺はそれに答える。いや、俺が二人を求める。何度も、何度も・・・。
そのまま眠る。二人に包まれて、寄り添われ、愛され、俺は眠る。




