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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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3-19 計画準備期間 その1

グラス製作の前に、やることをしよう。

マリアには金箔をお願いする。テラスをお供にした。

「金箔か・・・、あまり期待しないでね。」

自信はないようだ。大丈夫、テラスがいる。

「テラス、お願いしても良いかな?」

「うん!任せて!」

胸をぽやんと叩く。多分マリアのまねだろう。かわいい。


ビビには流の二の型を教える。

「教えていただくのは嬉しいのですが、ソーイチ様のお手伝いが疎かになってしまいます。」


確かに、ビビの気持ちもわかる。


「ありがとう。でもね、多分必要になると思うんだ。今回は型の鍛練をしてくれないか?」

「私は不要ですか?」

俯いてしまった。そんな訳ない。

「そうじゃないよ。必要だから鍛練をしてもらいたいんだ。皆の為に。これだけは、ビビにしかお願いできないから。」

「私にだけ、ですか?」

涙ぐむビビ。安心して緊張の糸が切れたのかもしれない。

「そうだよ。ビビが必要だよ。」

「はい、すみません、ありがとうございます。」

泣いてしまった。そんなつもりはなかったのだが。抱き締めて、頭を撫でる。



「はい、もう大丈夫です。ご教授お願いします。」

泣き止んだビビは真剣な眼差しで俺を見る。

「じゃあ、やるよ。」

「はい!」


俺は二の型を教える。一の型を基礎に足運びと体捌きに変化を加えたものだ。今回は、ビビに短棍も持ってもらう。長さは胸位の短い物だ。

ビビの長所は接近戦にある。長物はビビには合わないだろう。短くして、長所を伸ばす。黒鋼槍の間合いの修正の為にも今の内に馴れてもらう。


二の型の難題。それは軸足の平行移動がある。物理的に無理に見えるが、特殊な膝の動きと股関節の動きを合わせてそれが出来る。わかりやすいように繋ぎを脱ぎ、実践する。ビビも実践するがなかなかうまくいかない。膝の動きと股関節の動きを丹念に教える。


「へ、変態!」

「ん?お帰り。」

マリアが帰ってきた。何故変態?あ、パンツ一丁だからか。大した事ない。

「は、早く服着なさいよね!昼間から発情してんじゃないわよ!」

顔真っ赤のマリア。テラスは俺に抱きつき、

「ただいま!ソーイチ、ビビ!」

「お帰り。」

「お帰りなさいませ、テラス様。マリア殿。」

マリアの羞恥を華麗にスルーする。


「早かったね?見つかったのかい?」

「うん!職人の人から分けてもらったの。マリアの頼みなら聞かないわけにはいかないって。」

マリアもこの街の人に愛されている証拠だな。

「じゃあビビ、鍛練励んでくれ。」

「わかりました。必ず体得してみせます!」

強い意思の目だ。大丈夫、ビビならすぐに体得するよ。

「さて、俺達も頑張りますか!」

「うん!」

テラスと工房に向かう。

「スルーするな!早く服を着なさい!バカッ!」

マリアの大声に気付く。パンツ一丁のままだった。繋ぎを着て工房へ。膨れっ面のマリアも一緒だ。





俺の仕事はワイングラスとロックグラス、それを収める木箱の作製だ。急げば2日だが、3日にしよう。1セットだけは、時間をかけるつもりだ。

マリアはデザインをしてもらう。勿論、櫛のだ。

「今さら必要?」

諦め顔のマリア。

「いや、絶対に必要だ。だから、デザインを考えてくれ。」

真剣に話す。

「そ、そうなの?」

目を丸くする。マリア自身、櫛のデザインは諦めていたかもしれないが、そういう訳にもいかなくなった。

「あぁ、頼むよ。」

「そう、ね。わかったわ。やってみせるわ!」

「テラスはマリアのお手伝いをお願いするよ。」

「うん!わかった。」


よし、3人はこれでいい。俺はグラス製作に取り掛かる。無限保管に入れてある硝子入りの樽を出す。


ワイングラス4セット、計20個を難なく造る。一度造ったからか、簡単に出来た。まぁ、集中、掌握、創造を使ったからだが。

「チート野郎・・・。」

「今は誉め言葉だ。」

デザインが難航している為か、俺のチートに嫉妬はあるかもしれない。だが、マリアは自身の大概能力に気がついてないのか?


日も落ち、夜御飯は俺が作る。マリアが忙しいからだ。無難にシチューにしたが、ビビには特製ステーキを大量に作る。巨大牛がまだまだあるし、塩も売ってるからな。満腹になってもらおう。


「あんなに食べるのに、あのスタイルはズルい。」

「食べても太らないんだろうな。」

「うらやましぃ・・・。」

マリアの恨めしい言葉だった。ドンマイ。

「なんかムカついた。殴らせて!」


何故だ!解せぬ。


食後も製作の準備だけはする。ビビは鍛練しているので指導する。マリアは工房でデザインと格闘中だ。テラスに任せよう。


風呂も忘れない。マリアがいるので一緒に入れない!にやけ顔のマリアが

「今日は私が一緒に入るから、あんたは来ちゃ駄目よ。ほほほ。」

なんてこった!チッキショーメ!


と思いながら、夜中一人風呂に入っていたら、テラスとビビも入ってきた。嬉しい!

二人に沢山甘えて、心を癒す。石鹸さんも大活躍だ!

小屋で就寝。テラスは柔らかく、ビビは暖かい。


幸せだ。





製作2日目。


朝早く、ビビの鍛練に付き合う。汗をかいたので風呂を焚き、3人で入る。


朝御飯を食べ、工房へ。ビビは鍛練だ。


マリアも頑張っている。沢山のデザインを持ってきて、テラスに見せる。テラスは全部褒めるが、マリアは納得していない。頑張れ。


俺はロックグラスの製作だ。間違えて20個造ったがまあいい。硝子はまだまだある。クリアと赤を造った。前の橙色は硫黄のせいかもしれないな。今回の硝子は質がわりかし良かったので、そのままの着色になったようだ。


午後は箱を造る。ワイングラスは勿論、ロックグラスも造った。5個1セットだ。着色は赤にしてある。この着色剤は使えるので、購入した。前に駄物グラスを買った店だ。他の色もあったので購入する。布もそうだが、木の着色と目処めを兼ね備えているからだ。漆の代わりになる。


夜御飯はマリアが作った。唐揚げとサラダ、ビビに大量の唐揚げを準備していた。

これなら満足するでしょ!みたいな確信した表情のマリアがいた。

ビビもしっかり平らげる。大概だ。

マリアが悔しそうなのは何故だ?


稽古、風呂、就寝。



製作3日目。


極めつけのワイングラス製作に入る。今日は製作に没頭すると3人に告げてある。

気合いを入れ、取り掛かる。


形は同型のワイングラスだが、金箔を縁に添える。このままでは剥げるので、コーティングが必要だ。だから今回は創造を使い、ガラスでコーティングする。熱で溶ける、変色する、普通なら。だが、チートには関係無い。グラスの縁に煌めく金色を創りだした。ちょっとケバいが貴族にはうけるだろう。

また、光で乱反射するように、ガラスの内部に加工を施した。透き通るが、光煌めく。テラスの磨きで更に光る。こいつの製作はセットで一日かかった。


価値ですか?マリアは金貨100枚でも足りないと言ってた。金剛石クラスとか。苦笑しかない。


終了が夜中になったが、風呂に入る。テラスとビビは寝ていた。今日は一人でいい。少し落ち着きたい気分だった。


時間はまだある。やる事はいっぱいだ。


俺はヴェルケスの未来を考える。


その先の幸せを。



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