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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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1-1 白い世界


 俺は、死んだのか?



 気がつくと、暗い視界が真っ白な世界に変わっていた。


 上下左右何処を見渡しても、白。白一色。


 明るいのではない。白しかないのだ。影すらない。



 異常な景色に、俺は恐怖感で震えていた。



 と、とにかく、落ち着こう。




 俺は胸に手を当てる。



 ん?

 あれ?


 感触が無い?


 俺は思わず、腕を平手で叩く。



 痛くない。

 それどころか音がしない。


 呼吸は・・・していない?

 臭いは、感じない。

 味覚も、駄目だ。


 目を瞑っても、白い世界が見渡せる。

 瞑っているかわからなかったので、手で覆う。

 白い・・・。



 五感の全てが無くなったのか?いや、視覚は違うか。




 結論。


 俺死んだ。



 そう結論した。


 ため息を、、出そうとしたが、息が出ない。



 この歳で死ぬなら、もう少し楽しみたかった。


彼女とかつくって、あ~んなイチャイチャやこ~んなイチャイチャしたかった。

 それに俺の遺作が大根おろし器になってしまった。不満があるわけではないが、もう少し格好つく物にしたかったな。


 仕事の実用的な物以外にも、趣味的な物とかも作りたかった。



 あ~ぁ、短い人生だったな・・・。



後悔が溢れ出す。やりたい事をやれずに人生を終了するとは思わなかったからだ。


沢山後悔した。思い出を反芻した。涙は出ないが、心で泣いた。大声を上げた。じたばたと駄々をこねた。



・・・・・・・・・。



はぁ・・・。



諦めがついたのか、妙に落ち着いた。



また、辺りを見渡す。



白、白、白、・・・



 遠近感も何もない世界。ただ白一色の世界。



 立っているのか、横になっているのか、それとも、宙に浮いているのか、それすらもわからない。あえて例えるなら、宇宙空間のような感じだ。


 五感を失ったからか、虚無感に覆われていたが、いや、よく考えたら、思考ができる。体はあるし、服も着ている。



 うん、ちょっと考えてみるか。



 視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚のうち、視覚以外は感覚が無い。臭いがしない。唾液の味がしない。手を叩いても音がしないし、感覚も無い。視覚にしても、視認としてはおかしい。瞼を閉じても視認出来るのは、視る、で視ていないのだろう。五感は失っていると考えるが、違うと気づく。


 今の俺にあるもの。


 身体はある。手を叩けたからだ。後は、思考が出来る。脳が生きているのかどうかはわからないが、取り敢えずは考える事が出来る。


 失ったのではなく、脳が感覚の受け取り方に異常があると結論した。


 手足が動くのは、触覚が働いている証拠になる。視覚は眼での視認ではないが、視る感覚はある。他の感覚も同様だろう。確認は出来ないが、この考えで納得する事にした。




 さて、こんなトンデモ展開でよくある話だと、神様や駄目な女神とか来て、転生させてやる。とか、死後の世界へいらっしゃい。とか言う変なのが来て、天国地獄のどちらかご招待!おめでとう!って来てもおかしくないのに、一向にお迎えが来る気配がない。



 このまま何もないのか?このままなのか?



 もう一度、辺りをよく見渡す。何も無い?無いのか?本当に白以外は何も無いのか?



 目を凝らすように、全身で辺りを注意深く見つめる。見つめる。・・・小さな黒点以外は何も見つから・・・



 見つけた!


 黒点!



 俺は、歓喜した。白しかないこの世界に、別の何か、違うものを見つけたからだ。


 ここからだと距離はわからないけど、何も無いよりはましだ。



 とにかく、行ってみよう。


そう俺は決意した。







 進んでいるのかわからない。歩いても走っても、跳んでも、その黒点に近づいているかわからない。移動の際の風を感じないのだ。脚が空回りしているのかもしれない。


 それでも、足を動かせば、近づいているはずだ。


そう信じ、俺は足を前へと動かす。


しばらく動かしても何も感じないので、やり方を変えてみる。


 俺は、足に感覚的に神経を集中し、足の裏にスパイクがあるように意識して歩を進める。

 それは、白の世界に少しでも引っ掛かるようにするために、感触は無くても、諦める事はなかった。




 一向に近づく気配がない。不思議と疲れは感じないので、歩を進めるか止めるかは、諦めなければという根性論になりそうだ。


 根性だったら自信がある。いじめられっこだった俺は、子供の頃に爺さんが開く護身拳法の道場通いを始め、ぼろくそに鍛えられ、いじめられっこから脱出した。高校ではスパルタ部活のしごきに耐え、就職後も職人気質の師匠や先輩たちの怒号にも負けず努力してきた。この程度、苦労でもなんでもない。

 足を動かせば良いんだ。手や腕を使ったって良い。とにかく、前へ行くだけだ。


 俺は、気合いで全身を奮い立たせた。





 あれから気づいた事。それは意識の集中。これが俺自身の解決策となった。


 あれから動かす脚に一瞬だが、足に引っ掛かりを感じた。

 感覚は無いはずなのに、それを感じた。


 1歩の意識。1歩の感覚。


俺は何故か嬉しくなった。意識の集中は精神の疲労を伴ったが、それを払拭するものだった。


だったら!


 次に俺は、全身の神経を胸の真ん中に集中し、それを全身に拡げるように意識する。手足の先にまで意識を集中させる。

すると、感覚を感じた。何もない白の世界で、感覚を得たのだ。


 うん、いける!


 歩を感じる。風は感じないが、歩を進める感じはする。ゆっくりで良い。この感覚のまま、歩を進めよう。


 弊害が生じた。身体が、とてつもなく重い。


 だが、今までに無い感覚を感じるようになり、嬉しさのあまり、俺は心が高ぶっていた。疲れるという事はなかったが、全身に負担を感じはじめていた。


空間の抵抗感だろうか?


だが、俺は歩くのを諦めなかった。


彼方に見える黒点に向かい、歩んでいった。





 あれから諦めずに歩を進め、ついに俺は目的地に到着した。どれだけ時間がかかったかはわからない。時間という概念すら感じない空間。だが俺は、目的地に到着した。



 全身が震えている。理由はわからない。疲労?達成感?身体の限界?希望?それとも絶望?全身が震えている。



 目的地のその黒点だった場所には、禍々しく漆黒のオーラを放つ暗い棒状の物と、その横にへたりこむ銀髪の少女がいたのだった。



読みにくかったらすいません。

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