2-14 村長の出発、そして
夢うつつのままに、俺は目を覚ます。日の出前。左腕にはテラスが絡み付いている。今日は左手をふとももではなく、両手で包んでいる。暖かい。
腕が柔らかいのに挟まれ、幸せだ。
ビビは右脇で丸くなっている。頭を胸の辺りに、寄り添いながら寝息をたてている。軽く頭を撫でる。耳をピクピクと動かし、上体をゆっくりと起こす。服は着ていない。
「おはよう、ございます・・・。」
まだ寝ぼけているのだろう。呆けた表情と、たわわと揺れる胸元が合わさって妙に艶っぽい。
「おはよう。」
右手をビビの頬に添え、ゆっくり引き付ける。
口元に軽くキスをする。
ビビは、口元にてを当て、顔を赤らめた。
テラスの拘束を優しく解き、上体起こす。
「背中を向けて。」
ビビに言う。ビビはゆっくりとたおやかに背を向ける。
無限保管から櫛を取りだし、髪をすく。
耳をピクピクとさせ、尻尾を軽く振る。背筋を伸ばしながら、櫛の感触を気持ちよくしているようだ。髪が艶やかに光り整う。
「あの、ありがとうございます。」
「綺麗だよ。」
俺は軽く頭を撫でる。ビビの耳や尻尾が喜びを表している。
「まだ早いですが、朝の支度をしますね。」
「いや、それは待って。」
ビビの行動を、俺が止める。
「村の入り口に行くから準備して。」
「はい、わかりました。」
ビビが頷き、準備を始める。俺は左側に視線を向ける。
軽く髪を弄り、耳に触れる。
「う、ん?」
「おはよう。」
薄目を開き、呆ける。
「うん?おはよ~・・・。」
テラスの口元に軽くキスをする。暖かい。
手元を背中に回し、上体を起こす。
「う?ん?」
「起きよう。」
背中に廻り、テラスの髪をすく。綺麗な白銀色の髪が艶々しくなる。
「えへへ?ありがと?」
まだ寝ぼけているのか?テラスの頬をふにふにする。
「ソーイチの手は大きいね。」
「覚めたか?」
「うん、まだ眠いよ。」
「今日は早起きしてくれ。村長を見送るぞ。」
「あ、そうだね。」
目を覚ましたテラスが動かない。
「?どうした?」
「いたい、お股が痛い。」
「えっ!?」
「痛くて動けない。」
あ!やってしまった!
「ビビは?」
「私は痛くありません。」
着替えが終わったビビが、淡々と話す。
「ちょっとだけ我慢してくれ。もうすぐ日の出だから。」
テラスに服を着せ、俺のコートを被せる。出血は・・・無い。ビビには外套を羽織ってもらった。
黒石を2個出し、櫛にあるテラスの髪を取る。両手に1個と髪を持ち、掌握、創造。
〈白銀石〉
完成。
テラスをお姫様だっこをして、外に出る。薄日が射してきた。
急ぎ目に、尚且つテラスには振動をあたえないように慎重に村の入り口に急ぐ。
村長宅前にはトソがいた。間に合った。
「ソーイチ様、おはようございます。」
「おはようございます。早いですね。」
「なるべく早く出発する予定でしたので。クコももうじき来ますよ。」
直ぐ様、クコが家から家族と出てきた。
「ソーイチ様!お見送りですか?ありがとうございます!」
「いえ。クコ村長、トソさん、頑張って下さい。」
「はい、何から何までありがとうございます。必ず、この村を救ってみせます!」
彼らと固い握手をする。
「あの、お二人の外套をお貸していただけませんか?」
「はい?」
二人の外套を借りる。
テラスに祝福を頼む。テラスが外套に軽く唇を添える。
俺は外套を受け取り、無限保管に入れ、出す。
「何を?」
二人に外套を返す。
「はい、テラスに安全祈願をしてもらいました。あと、俺からも御守りです。肌身離さず持って下さい。」
二人に白銀石を渡す。テラスの加護が詰まった石だ。二人を護ってくれるだろう。
「帰られましたら、祠でも造ってこの石を奉って下さい。」
「は、はい!ありがとうございます!」
二人は外套を着て、白銀石を御守り入れに入れる。また固い握手をする。クコ村長は婦人と固い抱擁をして、再開を約束した。
トソは・・・、うん、ドンマイ。
二人に手を降り、見送る。見えなくなるまで見送る頃には、村人全員が集まっていた。
頑張れ!
俺は心で叫んだ。
★
小屋に戻り、朝食にする。
テラスの調子がやはり悪い。
やってしまった!
注意しながら、なるべく動かなかったが、テラスには無理をさせてしまった。
「大丈夫だよ?」
テラスが強がる。
「いや、大事を取って、今日は休みにしよう。」
「そうですね、お辛そうです。」
ビビが同意した。心配そうにしている。
「平気、だよ?」
「駄目。お休みにします。」
小さくなるテラス。
「ごめんなさい・・・。」
「謝らないでくれ。謝るなら俺のほうだ。無理させて御免な。」
「そんな!違うよ!?」
「俺はね、テラスが、ビビが大事なんだ。だから、今日はゆっくりしよう。時間はあるから、謝らないでくれ。」
「うん、・・・わかった。」
額にキスをする。予定を一日延ばすだけだ。大した事はない。
「ビビはテラスと一緒にいてくれ。俺は旅の準備をするから。なに、直ぐに整うよ。」
「はい、わかりました。」
ビビはテラスに寄り添ってくれた。俺は準備に入る。
小屋に、風呂を造る。広々とした風呂を。また、貯水槽も造った。トイレも造るが、水洗は流石に無理なので、穴堀トイレにした。黒石のスコップも造る。
水は湧き水から汲んだ。少し往復したが、大した事はない。浄水は、無限保管に期待しよう。
柔らかい樹葉も沢山集める。トイレ用と寝る用だ。服を掛けるハンガーも造る。木材、黒石、食糧も集めた。
テラスとビビに、小屋に入ってもらう。皆の服を洗うと提案すると、ビビが落胆していた。何故?
彼女達の下着に動悸しながら洗濯をする。俺は真っ裸だ。しょうがない。
囲炉裏の火で、服を乾かす。3人で寄り添いながら、今後の事を話する。
俺の提案
〈旅は皆の安全第一。〉
大事な事なので、しっかり話す。怪我は勿論、体調の管理はしっかりとする。なるべく3人で行動し、別行動の時は必ず報告する。また、テラスは自衛が出来ないので、一人の行動を禁止した。過保護かもしれないが、用心に越したことはない。また、女性の生理も視野に入れ行動するから、ちゃんと話して欲しい。
テラスの初潮はまだだったので、尚更注意が必要だ。
〈旅路中のエッチ禁止。〉
「何で~!」
「危機管理です。」
「そんなぁ~・・・」
テラスはわかるが、何故かビビも落胆している?
テラスが交渉してきた。
「キスは?」
「良いよ。」
「ハグは?」
「良いよ。」
「お風呂は?」
「3人では無理かな?野盗対策あるし。」
「添い寝は?」
「これも見張りがあるから、3人では無理。」
「オッパイ?」
「駄目。」
テラスは直球過ぎる。
「欲求不満になる!」
なんでそんなに肉食なんだ?ビビはわかるが。狼だけに。
「次の街に着いて、安全確認したら、解禁で良いよ。」
「む~、わかった。」
不満はあるようだが、納得してくれたみたいだ。それにしても、危機管理が無さすぎる。心配だ。
「二人からはあるかい?」
「特に無いよ。」
「私もありません。」
ん、よし。服も乾きそうだし、次は、って?
え?!
二人が腕から離れない。
「旅路前なら良いよね?」
あの、何をいってますか?
「もう少しソーイチ様を感じたいです。」
いや、待って、待ってって!いやいや、押し倒さないで!
「ソーイチ、今は良いんだよね?」
「いや、テラスは痛がってたでしょ?」
「旅が始まって我慢するなら、痛いのは我慢する。」
いやいや、本末転倒でしょ?
「いや、体調優先だから。」
制するが、止まらない。
「私も、欲しい、です。」
肉食過ぎる!いや、マジ!勘弁して!
「ソーイチ・・・」
「ソーイチ様・・・」
いやいや、駄目だって、ね?駄目だから。いや、ほんとに、ね?やめよ、だからオフゥ・・・。
何故、こうなった?
これで2章クコ村編は終了です。次は3章です。2章の後日談になるクコ村長の旅路、ビビの心境等の番外編も書く予定をしています。3章終了後に書けるよう頑張ります。




