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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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2-11 クコ村での準備


 次の日。


 村長は村人全員を集めて、村の今後を説明する。


 ロレウス公爵との交渉。


 村人に動揺が拡がる。


 黒糖を使い、村を救う。それは、賭けといって良いだろう。

 無事にロレウス府に着くか?ロレウス公爵に会えるか?黒糖の価値に気づいてくれるか?


 考えればキリがない。安全マージンなど無いのだ。


 俺も不安は拭えない。自分で行けば確実だが、それは駄目だ。村で頑張ってもらわねば。


 村長から、俺達の旅立ちも話してくれた。

 村人は絶望のような暗い顔をしている。

 子供達は、別れを拒否している。


 決心が鈍りそうだ。


 心を鬼にし、俺の意思を説明する。


 納得はしたみたいだが、不安はあるだろう。


「私達は、毎日が命懸けだ。だが、このままでは村は間違いなく滅ぶ。皆死んでしまう。あの巨大熊が現れた時点で、私達は間違いなく死んでいたはずだ。」


 村長の説明は続く。


「だが、ソーイチ様は私たちをお救いし、そして、今後の道を示してくれた。」


 それは大袈裟だ。


「私は、ロレウス公爵府に向かい、必ず公爵様にお会いし、村を救う。その間、皆はこの村を守ってほしい。困難を皆で乗り越えて欲しい。」


 重い空気だ。不安が無くなるわけではないのだ。


「急な集会に集まってくれて、感謝する。話しは終わりだ。各々で、村を守る知恵を考えて欲しい。私は、二日後に村を出る。何としても、収穫前に戻る。それまで頑張ってくれ。」


 村長は解散を告げた。村人も暗い表情で持ち場に戻る。狩りをする若い衆には、励ましが必要と村長に口添えした。


 俺もその間に、やれることをやろう。


 ビビに狩りをお願いする。大きい獣は少ないだろうが、確認は必要だ。ついでに若い衆に合う狩場も見つけてもらう事にした。


 村長夫人に、黒糖を作ってもらう。山で収穫したサトウエダの半分だ。穂先は畑に作付してもらう。根元も同様だ。絞りきった枝のカスは燃やして灰にし榁へ。肥料として利用する。テラスは夫人の手伝いをするようだ。任せよう。だが、味見は少しだけ、と念を押した。


 サトウエダ専用の畑を開墾する。樹木は俺が伐採し、根も掘り返した。雑草抜きや石取り、耕作、やることは沢山あるが、後は任せる事にした。榁の肥料を活用してほしい。


 小屋を造る。前に造った簡単な小屋だ。寝れれば良い。前に造った小屋を少しだけ広くした。中には、柔らかい樹葉を敷き詰める。藁があれば、と思ったが、無いものはしょうがない。前回より早く出来たので、無限保管に入れる。仮拠点にしよう。


 河には罠を造る。鮭が下流から上流に上るのを利用した罠だ。大きいのは造れないが、定期的に魚が捕れるのは良いことだろう。


 日も落ち、拠点で黒石と木で様々な道具を造る。槍先、石槌、石斧、砥石、蚤等、数多く造る。明日、村人に配ろう。


 ビビが巨大鹿を獲ってきた。村人に渡し、俺達には兎を捕ってくれた。途中、テラスを迎えに行く。沢山は食べていないのを確認した。手には水飴を持っていた。


なるほどね。婦人の機転だろう。


 兎を捌いて、焼く。ナイフはしっかり手入れした黒石ナイフだ。実用的に造ったので、見た目はアレだが、切れ味はかなりの物だ。俺用の砥石が優秀だ。刃は黒紫に光っている。兎の毛皮はラッキーアイテムかもしれないので、無限保管に入れてある。



「ソーイチ様は凄いですね。」

ビビが食後の歓談に言ってきた。

「そうかい?」

「はい。」

 俺は枝豆の蔓を網に加工しながら、ビビと会話をする。

「何故、そこまで強いのですか?力だけでなく、知恵や心も。」

「何故かな?」

 確かに、力はチートだ。力があるから、危険なく生活している。使い方?オレツエ~、には興味ない。勝負は良いが、争いは拒否したい。皆仲良しが理想だ。知恵は先人の知恵や教育だし、心は、性分、か?

「何故、他人にここまで出来るのですか?村も、私も。」

「ん~、性分なんだよ。世話になったから恩を返す。沢山話し合って縁を結ぶ。お互い努力して絆を深める。知った人が不幸を避けられるなら、手助けしたいんだよ。自己満足なんだろうけど。」

「私には、わかりません。」

 俯くビビ。


人種の違い?文化の違い?まぁ、良いさ。大切なのはわかることじゃない、認めるということ。同意ではなく、認識だ。


 網が完成し、無限保管に入れる。


「これから互いに認めれば良いんだよ。まだ出会ったばかりじゃないか。一緒に行動して、沢山経験して、共に歩めば、わかるだろうさ。」

「そう、ですね。」


 少しは晴れたか?口元に笑みがみえる。


「難しいお話してる?」

 テラスが覗き込む。

「これからも、仲良くしよう。という話だよ。」

 テラスの頭を優しく撫でる。心地よい感触とテラスの微笑みが、俺の心を優しくする。話し合いは大事だ。相互理解の為にも。今度はビビの話が聴きたいな。

「そうなんだ。じゃあ、お風呂!」


 何故そうなる?


「一緒にお風呂入って、仲良くなるの!」

「風呂は炊くけど、一緒が前提なのか?」

「そうだよ。」


 テラスさんはブレないな。


「今日はね、ソーイチの背中を流すの。村長さんの奥さんから聞いて、布も貰ったんだ。」


 布は貴重品のはずなのに・・・。


「奥さんね、村長さんにしてあげてるんだって。だから、私もしたいの。」

「背中を流す?」


 ビビがキョトンとしている。


「うん!背中を布でコシコシするんだって。」


 間違ってないが、なんか違う。


「ソーイチとビビの背中を流すね。」

「では私は、僭越ながらテラス様のお背中を流しますね。」

「駄目だよ。ビビもソーイチの背中を流すの。ソーイチも、私とビビの背中を流してね。」


 風呂一緒ですか、そうですか。


「お風呂~!」


 今日は背中を流すのですか、そうですか。


 風呂を焚くとき、理性を保つ方法を考えるのだが、時間が足りなすぎた。何故なら、一瞬だからだ。







 背中を流してくれる。テラスは、

「なんか恥ずかしいね。」

と、フワフワした感じで、軽くなぞるように流す。少しこそばゆい。優しさが込められているのか、嬉しさが込み上げる。


 ビビは、

「失礼します。」

と言ってしっかり流してくれた。程好い力加減が、マッサージのように妙に気持ちが良かった。



 テラスの背中は綺麗だ。透き通る白い肌とはこの事かと言わんばかりに主張する。思わず、唾を飲み込む。

 軽い力で流す。テラスの耳が真っ赤になっていた。ぷるぷる震えているのが、妙にそそらせる。ビビも同じように流す。表情がにやけている。もしかしたら、ビビの手は、マッサージ効果があるかもしれない。・・・違う。


 ビビの背中を流す。しなやかだが、引き締まった背中はとても綺麗だ。ビビも恥ずかしいのか、顔が赤く、尻尾は垂れ下がっていた。軽い力で流す。ピクンッと動くのが妙にエロチックだ。テラスが流す。ビビの微笑みが見えた。俺と同じ感想だろう。


 なんか、理性が馬鹿らしくなってきた。確かに魅力的な二人がいる。それ以上の優しさに包まれている。


 受け入れれば良い。


 そう、自分の感情を、二人の信頼を、愛情を。


 テラスに微笑む。いつもテラスには助けられている。本当にテラス様様だ。背中を流すだけなのに、こんな心境になるとは思わなかった。


「気持ち良かった?」

「あぁ、気持ち良かったよ。ありがとう、テラス。」

「えへへ。」


 左腕に絡み付く。柔らかいのが押し付けられるが、妙に安心感をくれた。


「ビビもありがとう。」

「いえ、恐縮です。」


 ビビは向かい側にいる。とても素敵な光景だ。見事な双丘も見えるが、綺麗さが勝っていた。


「ビビもこっち。」

とテラスは俺の右側を指差す。

「はい、・・・失礼します。」


 隣に寄り添うビビ。肩を合わせる。ビビの手を握り微笑む。

 ビビは顔を赤くして俯いてしまった。


「一緒にいるって素敵だね。」

テラスが言う。

「そうだな。」

俺もそれに答える。

「でもね、家族は離れてもいつも一緒なんだって。凄いね。」

「ん?どういう事?」

「あのね、村長さんの奥さんがね、村長さんと離れても、家族は心が一緒だから、いつも一緒って言ってた。」


 なるほどね。絆、親愛、大切な事だ。


「そうだな。」

テラスに微笑む。

「私達も家族だよね。」

「あぁ、もちろんだ。」


 肯定する。こんなにも優しさや安心、愛情に包まれ充実しているのだ。俺達は家族だ。離れる事態にならないようにはするけど。


ビビが俺の手を強く握る。

「わ、私もです、か?」

「「当然。」だよ。」

テラスとハモる。ビビも家族だ。

「私は、従者ではないのですか?」


何を言ってんだ?


「違うよ、家族だよ。」

テラスが微笑む。

「・・・あり、がとう、ご、ざい、ます。」

鼻を真っ赤に、頬を伝わる涙が見える。俺は手を握ったまま、手の甲で軽く拭き取る。


そうだ、家族だ。


俺は二人を寄せる。


この穏やかで愛しい時間を、大切に過ごした。



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