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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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8-2 ブルガン到着

さて、ブルガンに向かう事になった訳だが、また二週間も徒歩で移動するのは面倒だと話し合いで決まり、女性陣は俺の居住地区で待機し、俺が全力の移動をする算段になった。


テラスは一緒にいたいと駄々をこねたが、今回ばかりは居住地区でお留守番だ。テラスを抱えての移動すると、やはり手加減をする事になる。


「はいらなきゃだめ?」

「今回はそうしてくれ。その方が安全だ。」

「むー。」


膨れ面が可愛いが、駄目なものは駄目だ。半ば強引に居住地区に入ってもらう。


「日が沈んだら、俺も入るから。それまでは良い子にしているんだぞ。マリア、後は頼んだ。」

「わかっているわ。あなたも無理はしないでね。」

「緊急事態の時はお呼びください。私も加勢しますから。」

「そうだね、そうするよ。」


ビビの言葉に俺が返す。まあ、ビビを呼ぶ事は殆どないと思うが、それは言葉にしない。

今回の行動は移動を目的にしている。もし敵が現れても、逃げる事にしている。無闇やたらと戦う選択はない。


女性陣を居住地区に入れた。さて、俺一人。今までの賑やかさが嘘のように静かになる。


「さて、と。」


俺は念入りに柔軟をする。気合いを入れる体操のようなものだ。


ウッドバーグを出る。


「おい、ヒトよ。何処に行くんだ?」

「ああ、ブルガンに向かうんだが。」


門番の犬人に呼び止められた。


「馬車を待たないのか?ここからブルガンまで、馬車でも二週間はかかるし、なにより一人では危険だぞ。」

「一応確認だが、この道は一本道か?」

「ああ。この道はブルガンまで一本道だが、って人の話を聞いているのか?」

「大丈夫。なんとかなるさ。逆に大所帯は御免だ。」


俺の言葉に、門番の犬人はため息を吐いた。


「忠告はしたからな。死んでも知らんからな。」


その言葉を背に俺はウッドバーグを出た。





道なりに進む。 ある程度進み、ウッドバーグが見えなくなった所で、俺は俺は空を見上げる。


まあ、安全なのは空だよな。


軽く二段跳躍をして、森を見下ろす。道は見えるから、その道に沿って、俺は空中走行を始める。


久々に空を跳ぶ。女性陣を担ぎながらのこの走行は、やはり無理があったからな。居住地区のお陰で、なんとか自由に空を跳べる様になった。


少しずつ、足の裏に感覚を集中し、気を高める。一気に速度を出さずに、少しずつ速度を上げていく。


あまりにも広大な森林を下に、道を外れないように、俺は空を跳ぶ。道を見失ったら、間違いなく迷子になる。これだけは注意しなければならない。なので、あまり高度はとっていない。道からも丸見えかもしれないが、交通量が皆無に等しい道だ。また、賊も鳥か何かに見間違えるだろうから、俺は堂々と空を跳んでいた。


とりあえず、道なりに進む。馬車でも二週間かかる道程だが、これならかなり時間は短縮するだろう。半分の一週間で到着出来るのではないかと、想定した。


日が沈みかけ、道が見えなくなる前に、大地に足を着ける。居住地区に入ると、女性陣のお出迎えしてくれた。


「ソーイチ、おかえり。」

「おかえりなさいませ。」

「おかえりなさい。ご飯は出来てるわよ。」

「ただいま。」


飛び付いてくるテラスに、側を離れないビビ。マリアは食事の準備をしながら、俺に声をかけた。


夕飯は賑やかだった。


テラスは居住地区のイトとレンの世話をしていたようだ。ビビは鍛練をして汗を流し、マリアは家事全般をしていたようだ。


「この空間は快適に近いけど、何か閉塞感もあるのよね。」


マリアはこの居住地区の欠点を話す。何かが足りないのか。俺にはわからない。まあ、人工空間だ。欠点もあるだろう。


「そうですね、私には風を感じないのが違和感でしょうか。」


なるほど、風の流れか。とはいえ、風の循環をさせるには、何をすれば良いのやら。


「レンとイトがさいきんなかよしなの。いつもくっついているの。」


それはあれか?発情期か?


他愛のない会話をしながらの食事に、みんなが思い思いに話をする。


食事が終わり、風呂に入る。もちろん、みんなでだ。テラスの発情ぶりには困ったものだが、そこはあれだ。まあ、あまり気にしない方が良い。


女性陣の愛に溶かされながら、お互いに愛し合う。


そして、女性陣の甘い香りに鼻をくすぐられながら、俺は目蓋を閉じる。


一日が無事に終わった。







道を辿りながら、俺は空中走行をしている。かなりの速度が出ているのは体感でわかる。空気抵抗が俺の走行を邪魔をする位に速い。翼があれば、空を飛ぶと感じてしまう。グライダーでも欲しいくらいだ。


俺は移動の際に、気配察知は忘れていない。道なりに点々とだが、気配を感じる事がある。やはり賊がいるのだろう。道を走る馬車を待っているのかもしれない。


俺は賊の相手はしない。俺はスルーして先に進む。一々相手をしていたら面倒でしかない。そう考えると、空を跳ぶ選択は間違っていなかったのだろう。


昼間は移動を、夜はしっかりと食事と睡眠を。それを繰り返す。大きな障害もなく、7日で俺達はブルガンに到着した。


「ん~!やっぱり外の空気は良いわね。解放感も感じるわ。」

「風の流れがありますから、やはり外は良いですね。」


安全とはいえ、やはり居住地区の閉塞性には難があるようだ。大地を踏み、風を感じるのは体に良い事なのだろう。


「レンとイトも出すか。」

「ううん、イトがね、むりかもしれないの。」


テラスがイトを気遣う。


「おなかにね、いのちをかんじるの。」

「つまり、懐妊か?」

「かいにんはわからないけど、そうかんじるの。」


テラスの言葉だ。イトが懐妊したのは間違いないだろう。そうなると、イトには無理をさせない方が良いだろう。それにしても、レンもしっかりやっていたんだな。


「しばらくはイトを気遣う必要があるな。厩舎の管理をしっかりしないとな。ところで、レンとイトは居住地区で大丈夫なのか?」

「うん!」

「そうか。」


居住地区は安全な場所なのは、もう立証済みだ。この際、レンとイトは居住地区で留守番にして、徒歩でブルガンに向かうとしよう。


「さあ、行こうか。」

「うん!」

「はい。」

「そうね、行きましょう。」


俺達は眼前にあるブルガンに向かった。







ブルガンに到着し、大きな門の前に並ぶ列に加わる。並んでいる者達は皆武装をしており、冒険者や探索者のようだ。脇には馬車を通す専門の門もあり、検閲をしていた。


暫くはこの列に並ばないといけないだろう。素直に並び、順番を待つ。なにやら視線を感じるのは気のせいにしたいと思う。


順番が来たので、俺達は門番に話をする。


「・・・、ようこそブルガンへ。入街税を払う前に、身分証を見せてもらえるか?」

「身分証は無いですね。我々は西の大陸から来ましたから。」

「そう、なのか?」


門番は困惑を隠さない。確かに、俺と女性三人の組み合わせだ。信じられる話ではないだろう。


暫く雑談風の尋問が続いた。ここまで来た経緯を話していく。


「つまり、ウッドバーグから来た訳だな?」

「はい。」

「ならば森を抜けた訳だな。賊には襲われなかったのか?それに魔獣もいただろう?」

「それはなんとか見つからない様にしましたから。彼女は鼻が良いのです。」


俺はビビを見る。


「狼人か。まあ、そうだな。だかな、ヒトがここに来る事態が珍しいのだ。にわかに信じられんよ。」


困惑を疑念に変える門番は、俺達を歓迎は出来ないようだ。


「俺達は街には入れない?」

「そうではない。にわかに信じられないだけだ。だが、初めて入るのならば荷物の検査をさせてもらうぞ。何を持ち運んでいるかわからないからな。」

「それは構いません。」


俺達は念入りのボディチェックを受ける。荷物も全部出され、一つ一つ検査をする。


テラス達も検査をされる。門番の中に女性がいたので安心した。その女性がテラス達のチェックをする。


無限保管に入れている物は見せない。その方が良いだろう。


「まあ、良いだろう。危険な物を持ち込んではいないようだ。ようこそブルガンへ。」

「えっと、税はどうしますか?俺達は西の大陸の貨幣しかないですが?」

「そうだな、西大陸の貨幣ならば一人銀貨五枚だな。高いが両替代込みだ。」

「わかりました。」


俺は銀貨を二十枚渡し、街に入る。


「一応だが、君達の身分証の発行を奨める。何でも良い。ギルドで身分証を発行するんだ。これからの事を考えると、そうした方が円滑に事が運ぶからな。」

「わかりました。そうします。」


俺達は門番の忠告を受け、ブルガンに入った。






ブルガンは東大陸一番と言われる位にでかい街のようだ。人も多く、様々な獣人が往き来している。


さて、どうするか。ギルドで身分証を発行した方が良いと言っていたし、先ずはそれをするか。


「ギルドも様々あるようね。商人、探索者、水運、森運、従魔、なんかいっぱいね。」

「どうしましょうか、ソーイチ様。」

「俺とビビは探索者、マリアとテラスは商人が良いんじゃないか?テラスはマリアの助手で登録すれば良いし、俺とビビの実力ならば、探索者にはなれるだろうし。」

「それが無難ね。先ずはソーイチさんとビビさんの探索者ギルドから攻めましょうか。」


マリアが街の地図を頼りに、探索者ギルドを目指す。大きな街だ。適当に歩けば迷子は確定だろう。ところで、


「地図なんていつ手にしたんだ?」

「門番の女性に親切にもらったのよ。本当に助かるわ。」


なるほどね。


「それと、銀行もあるわ。後で貨幣の両替をしましょう。」

「そうだな。使えない貨幣は無駄だからな。」


マリアを先頭に、俺達は探索者ギルドに向かった。


街の中に入り、大きく立派な石造りの建物、探索者ギルドに到着した。中へと入ると、大きなフロアに、カウンター、受付嬢が数名といる。中は活気があるのか、獣人が多い。いや。獣人しかいない。何やら一瞬の視線を感じたが、すぐに霧散した。


「・・・いらっしゃいませ、探索者ギルドへようこそ。今日はどの様なご用件でしょうか?」

「身分証の発行をお願いしたいのですが。」

「身分証ですね。畏まりました。探索者ギルドの試験を受けて頂きますが、よろしいですか?」

「はい。」


淡々と事務作業をする受付嬢。


「では、どちら様が試験を受けるのですか?」

「俺と、ビビが。」


ビビが軽く会釈する。


「・・・、わかりました。では、奥の部屋にお入り下さい。試験官をお呼びします。」


俺達は言われるまま、奥の部屋に入る。


部屋は大きな空間であり、木製の的や金属で出来た案山子がある。俺達が回りを見回すと、大きな足音と共に、誰かが部屋に入ってきた。


「貴様らが今回のひよっこか!どうれ、その実力を計ってやる!」


大きな虎の獣人が大声を出す。結構な声量だ。


「先ずはそこの女からにするか!狼のようだな!得物(武器)はなんだ!」

「私はこの槍です。」

「では、この案山子を貫け!言っておくが、この案山子は自由に動くからな!」


なにやら案山子に液体をかける試験官。すると、案山子が命を得た様に自由に動き始めた。


「貫いたら貴様の勝ちだ。では、始め!」


自由に動く案山子。跳んだり跳ねたり、縦横無尽に動き回る。


ビビは冷静に構え、案山子に集中する。案山子の動きも遅くはない。速い方ではあるが、ビビには遅く感じる速さだろう。


ビビが動く。それは一瞬だ。


次の瞬間には、案山子の頭に槍の先が刺さっていた。


「・・・ふむ!良いだろう!その踏み込みの速さ、申し分ない!流石は狼といったところか!合格だ!」


ビビは合格のようだ。まあ当然だろう。


「もう一人と聞いたが誰だ?!」

「俺です。」

「・・・貴様がヒト風情で探索者になる無謀者か!」


ヒト風情、か。やはり獣人はヒトを見下してしまうようだ。


「試験は先程と同じだ!貴様の得物はなんだ!」

「この刀、ですが。」


本来なら無手なのだが、それは隠す方が良いと判断した。武器を持たないヒトを真面目に判断はしないと思ったからだ。


「よろしい!では、案山子を斬れ!以上だ!では、始め!」


俺は居合の構えをする。案山子に集中、縮地を使い、刀を抜く。


それは刹那。試験官の合図と共にその動作を行った。


動かない案山子は一文字に斬れて倒れた。



「・・・!」

「終わりましたが?」

「!い、良いだろう!合格だ!」


試験官は今の光景を認めたくはないようだが、案山子が斬れ倒れているのだ。合格するしかないのだ。


「貴様らの強さは認める!ようこそ探索者ギルドへ!」


あっさりとギルドの身分証を手にした。






ギルド事務室。


「本当にですか?」

「間違いない!あのヒトは本物だ!」

「私は構いませんが、他の人が黙ってませんよ?」

「構わん!奴の強さは本物!そしてあの狼もだ!あの案山子を一瞬で倒したのだ!そこらの奴等とは桁が違う!」

「まあ、タイガさんが責任をもつなら私は構いませんよ。」

「いいから身分証を作れ!奴等を他に取られる前にな!」

「わ、わかりました。そんなに剣幕しないで下さい。」

「これは地声だ!」






「では、身分証です。ランクは下から1、最大10とありまして、お二人は先ずは1のランクになります。探索者のランクにあわせて仕事がありますので、それを目安にして下さい。」


渡された木の札。そこに名前とランクが書かれてあった。ランクは1。まあ当たり前だが。


「ランクアップは真面目に働けば、すぐに上がります。初めは簡単なお仕事から始まりますが、大事な仕事ですので、真面目に働いて下さい。」

「わかりました。」


受付嬢の説明を聞き、俺は札をしまう。それにしても、回りの視線が痛いな。チラチラではなく、完全にガン見していた。


「ヒトが探索者になるのは珍しいのです。それだけ注目も浴びるでしょう。ヒトなのですから、無理はせずに地道な仕事を選んで下さい。あまり欲を出すと怪我をしますよ。」

「御忠告ありがとうございます。地道にやりますよ。」

「そうしてください。」


言葉にトゲがあるのは仕方ない事と諦めよう。まあ、仕事で見返せれば良いだけだ。


探索者ギルドを後にする。次はマリアとテラスだ。


すぐ近くに商業ギルドがあった。ここでもあまりヒトは歓迎はされなかったが、マリアは簡単な計算に、本物を見分ける試験を受け、簡単に合格した。テラスも助手として参加し、ちゃっかりと合格していた。


何故か受付嬢や試験官ががっかりしていたようだったのは気のせいにしておこう。


「簡単だったわね。」

「まあな。次は銀行だな。」

「ええ。」


銀行に行き、西大陸の貨幣を半分両替をした。少し手数料があったが、マリアの交渉もあり、微々たるものだったので、あまり問題はなかった。


銀行を出る。さて、次は。


「ソーイチ様。」

「わかっている。」

「下手くそね。私にもわかるのだもの。」


俺達は誰かに後をつけられていた。面倒は御免だ。撒く事にしよう。


大通り、人が溢れる場所に行き、足早に先に進む。人が障害物になり、俺達を隠す。


木を隠すなら森の中。俺達は、その大勢の人の中に溶け込んだ。



「奴等は何処に行った!」

「あっちを探すぞ!」

「匂いはないのか!」

「こんな場所じゃ混ざってわからねえよ!」

「くそが!」



足早に去っていく獣人達。俺達を見失い、見当違いの場所に向かって行った。


撒いたようだ。さて、どうしようか。


「あの連中、何が目的かしら?」

「さてな。」

「潰しますか?」

「いや、どうせろくなことにならないから、ここは穏便にすませる。」

「でも、あいつらはまた来るわよ?」

「その時はその時。場所を考えて対処すればいいさ。」

「これからどうするの?」

「休むか。先ずは人がいない場所を探そうか。」


俺達は大通りを離れ、地図を頼りに人がいない場所を探した。


路地に入り、回りを確認してから居住地区に入り、小屋で休む。マリアは食事の準備を始めた。テラスとビビはレンとイトの世話をしている。俺はやることがないので、櫛を作ることにした。


「あっ!」

「え?なに、どうしたの?」

「いや、探索者じゃなくて、技工、鍛冶ギルドもありだったなと思っただけさ。」

「もう、大声出さないでよ。びっくりしたじゃない。」

「ごめんごめん。」


最近は物作りを疎かにしていたせいか、その事を忘れていた。俺の本業は金属技工士という事を。


「さ、ごはんよ。皆を呼んで。」

「わかった。」


テラスとビビを呼び、一緒にご飯を食べる。他愛ない会話をしながら、これからの事を決めるのだった。



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