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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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7-6 ビビ対ゲルマ


ビビ、ゲルマが互いに槍を構える。ビビは短槍であり、固い槍、黒狼爪だ。一方、ゲルマは長槍であり、柳の様にしなる槍だ。槍先を揺らすゲルマ。間合いも長く、ビビには不利に見える。


ゲルマが素早く突きを放つ。的確にビビの急所を狙った突きだ。それを槍と体捌きで突きを捌くビビ。ゲルマの柳の様にしなやかな槍は、一見見た目とは違う動きをする。右を突いた様に見せかけ、当たる直前に槍をしならせ、左を襲う。頭部を狙うと見せかけ、腹を襲う。なかなかに老獪な動きをさせるゲルマ。ビビも持ち前の反射神経で、全てを捌くが、ゲルマの槍捌きに後手に回っている。


槍のしなりを利用した動きは、不規則な動きをする。それも連続となると、ビビも防戦一方であり、なかなか攻めにまわれない。


「そらそらそら!」


ゲルマが連続の突きを放つ。防戦のビビだが、好機を狙っているのは間違いない。


ゲルマが突きを放ち、槍を引く瞬間を狙って、ビビはゲルマの懐に飛び込む。そして黒狼爪を薙ぎる。だが、ゲルマは槍の独特のしなりを利用して、その薙ぎを体術で避ける。


「やるな!」


間合いを離すゲルマ。ゲルマの好位置にまで下がった。また、槍先を回し、ビビの動きに牽制を入れる。


「いくぜ!」


ゲルマは下段の攻撃は囮に、槍を上に伸ばし、上段の頭部を狙う。しなりが増しているからか、その攻撃の威力や伸びが増している。


槍を上段に掲げ、その攻撃を防ぐビビ。槍合わせとなる。力はビビが勝っているのか、弾かれたと同時にゲルマは間合いをとった。ビビはその短くなった間合いを離さないように懐に飛び込み、ゲルマの懐で連続の突きを繰り出す。だが、身の軽いゲルマは、その全てをいなし、間合いをとった。


「やるな、ビビ。流石は俺を負かせた女だ。」

「黙れ!ゲルマ!」

「ふん!その気の強い所も変わらないな。」


鞭のようにしならせた槍を振るい、ビビを襲う。ゲルマの槍は不規則な動きが更に増していく。


「さあ、防げるかな!」


ゲルマの猛攻に、ビビが圧される。全てをかわしきれない攻撃なのか、次々とかすり傷を作るビビ。幸い、急所は全て外している。


「そらそらそら!」

「ぐう!」


ゲルマの猛追に防戦一方のビビ。身体中に次々と傷を負う。どれもがかすり傷だが、このままでは深傷を負うのは明らかだ。


いつものビビならば、もっと自分を生かした動きをする筈なのだが、自分の汚点であるゲルマを前に、頭に血が上っているのであろう。


「ビビ!落ち着け!」


俺はビビに声をかける。俺がビビにかけたその言葉が気にいらないのか、ゲルマは顔をしかめた。


「なんだ、貴様。」


槍を巧みに操り、足下にあった石を弾き、俺に向かって飛ばす。だが、ビビは黒狼爪でそれを防いだ。


「あなたの相手は私です!」


俺を狙ったのが癪に触ったのか、ビビはますます頭に血が上る。


「は!まだまだやる気だな。それでこそビビだ!」


ゲルマの猛攻は続く。不規則な連続の突きに、防戦一方のビビだが、体捌きと槍捌きで、ゲルマの槍を次々とかわしていく。


「やるじゃねぇか!だが、これはどうだ!」


槍先を円に回し、次の軌道を予測させない動きをするゲルマ。ビビもしっかりと構え、事態に備える。


槍先で切り裂く動きをさせるゲルマ。そのしなやかな槍を充分に生かした攻撃だ。


その攻撃を流の体捌きでかわすビビ。必殺の一撃だったのだろう、ゲルマの表情に驚きを見せた。


「やるじゃねぇか!」

「あなたの槍は見切りました。」

「言うじゃねぇか!ならば!」


ゲルマはその長い槍を生かした突きを放つ。身体を、腕を最大に伸ばし一撃だ。伸びのあるその攻撃がビビを襲う。


「はっ!」


ビビはその槍を力ずくで弾いた。ゲルマの槍は高々に打ち上げられた。そして空いた懐に間髪入れずに、流の動きでゲルマの懐に潜り込み、石突きを腹に。震脚を含めた強烈な一撃をめり込ませる。そう、剛の動きだ。ゲルマはくの字になり、汚物を吐きながら、両膝を着いた。


「立ちなさい!」


容赦なくビビは黒狼爪を薙ぎり、ゲルマを身体ごと吹き飛ばす。地面に転がるゲルマは、受け身を取れずに地面に突っ伏す。


「まだです!この程度で倒れる事は許しません!」


ゲルマにゆっくりと近づくビビ。ゲルマも膝を震わせるながら、直立に立ち、槍を構える。


「やりやがったな!孕ませるのは無しだ!ここで殺してやる!」

「やれるものなら!」


ビビを襲うゲルマ。先程のダメージがあるのか、老獪な動きはなくなり、直線的な動きに変わる。


こうなると、ゲルマの槍はビビを捉える事は出来ない。ビビは全ての攻撃を、避け、かわし、いなし、そして出来た隙に、石突き容赦なくぶつける。


ビビの持つ黒狼爪はとても固く重い。その威力は、鈍器で殴られたのと同じだろう。

ゲルマの利き腕であろう右腕に黒狼爪の一撃を食らわせた。ゲルマの腕の骨が砕けた音が聞こえた。


「あがああああ!!」


痛みで悶えるゲルマ。地面に突っ伏した。


「まだです!まだ!」

「ひい!」


利き腕が砕けた事により、ゲルマの戦意は消失したのだろう。立ち上がり、逃げるゲルマ。


「逃がしません!」


ビビの驚異的の瞬発力で、ゲルマの懐に飛び込み、槍先をゲルマの脚に突き刺す。


「ぎゃああああ!」


雄叫びをあげるゲルマ。これで逃げる事も出来なくなった。


「さあ、立ちなさい!闘いはまだ終わっていません!」


ゲルマを睨むビビ。その眼光にゲルマは怯えている。


「ビ、ビビを、こ、こいつを殺せ!殺すんだ!」


回りに発破をかけるゲルマ。ゲルマを崇拝している者達が、槍を構えビビを取り囲む。


「はは、殺れ!殺せ!」

「以前の私と思うな!死にたくなかったら死ぬ気でかかって来い!」


雄叫びをあげるビビ。その声は空気を震わせた。威圧には充分な事だっただろう。ゲルマの部下達は、ビビの咆哮に怯えていた。


「殺せー!」


やけくそに攻めるゲルマの部下だが、その攻撃は単調であり、ビビの怒気にびびっている。こうなるとビビの敵ではなかった。


ゲルマの部下達を蹂躙するビビ。殺しはしていないものの、戦意を失くすには充分な怪我を負わせていく。


一人、また一人と痛みで叫びをあげるゲルマの部下達。戦意喪失し、うずくまる。逃げ出す者も出てくる。


部下達を一掃し、一歩ずつ、ゲルマに近寄るビビ。うずくまるゲルマを足下まで近寄った。


「死になさい。」


ビビがゲルマに槍を向けた。だが。


「し、死ぬのはてめえだ!」


ビビを狙った矢が飛ぶ。的確に顔を狙った矢だ。


貫いた、と思われた。だがビビは、その矢を口で防いだ。丈夫な歯で矢を噛み防いだのだ。


ビビは足下の石を投げ、矢を放った者の頭部に当てる。隠れていたゲルマの部下を無力化した。


「やはり、あなたは卑怯者だ。狼族の誇りもない。あなたの存在は恥です。もう死になさい。」


突然うずくまるゲルマ。不恰好だが、土下座をしているようだ。


「殺さないで下さい。お願いします。お願いします。」


無様に懇願するゲルマ。その行動に、ビビの表情が変わる。まるで般若のような怒りの顔だ。


「以前の私なら、これであなたを見逃したでしょう。ですが、あなたはやりすぎた。死んで詫びをしなさい。」


ゲルマに黒狼爪を突き刺そうとしたその時だった。


ゲルマは黒い(もや)を出し始めた。


この重圧。俺は知っている。あのリューアの時と一緒だ。


「こいつは使いたくなかったんだがな。もうどうでもいい。ビビを殺す!ここにいる全員も殺す!全て殺してやる!」


立ち上がるゲルマ。ゲルマの左手には見覚えのある暗い石を持っていた。


「狼人は勝たなきゃ意味がないんだ!君臨する事は勝つ事だ!俺に負けはあってはならない!」


暗い石を飲み込むゲルマ。禍々しい雰囲気を醸し出す。ゲルマの血が徐々に黒くなり、砕けた腕は治っていた。


距離を離すビビ。


ゲルマは黒い靄を出しながら、不気味に立つ。そして、咆哮をあげた。ビビの咆哮とは違うものだ。それは畏怖、恐怖を感じさせるものだった。


「死ね、ビビ。」


ゲルマはそう呟く。恐怖の存在が、一歩ずつビビに近寄り始めた。


俺はたまらずビビに近寄った。


「ビビ!」

「ソーイチ様!これは私の問題です!」

「だが!」

「例えこれが暗であっても、これは私の問題なのです!」


ビビは俺の介入を拒んだ。これは完全に暗の案件だ。ビビにはまだ荷が重い筈だ。


「意固地になるな!もうゲルマは狼人ではない!」

「ですが!」

「協力して、あいつを葬る。いいな。」

「・・・、はい。わかりました。」


不気味な動きでゆっくりと近寄るゲルマ。


「があああ!!」


再び咆哮をあげるゲルマ。みるみると身体を変化させていく。筋肉は盛り上がり、背丈も伸びた。巨躯になるゲルマ。脚の怪我も塞がり、血が止まる。


顔をあげるゲルマの額には、暗い石が嵌まりこんでいた。


「殺す。」


ゲルマの口から涎を滴し、眼が血走り、暗い靄は一層大きくなっていく。


「殺す。」


更に巨躯になるゲルマ。皮膚が裂け、筋肉が露出する。黒い血が滴り落ちる。


「皆殺しだ!」


その言葉に、俺は構える。ビビも同じように構えた。



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