7-3 ウィズ大森林その3
風呂で汗を流す。ビビが背中を流していると、テラスとマリアも入ってきた。
「結構、音が響いていたけど、怪我はない?」
「ああ、ないよ。」
「はい。大丈夫です。」
マリアの心配に、俺とビビは答える。ビビの全力を受け止めるのに、俺も段階を一つ上げた。チートこそ使わずにいたが、それでも俺の力を引き出したビビの成長には驚いてばかりだ。
「私はまだまだです。これからもご指導をお願いします。」
と言って、ビビは俺の腕を抱き締める。その大きな胸が当たり幸せな気分になる。
「むう!」
対抗心か、テラスも俺の腕を抱き締めてくる。幸せサンドに、俺は溶けそうになる。
「だらしない顔をしない!」
マリアがジト目で俺を見る。マリアも参加すると思ったが、それはなかった。
「それで、身体は大丈夫なの?回復はしたの?」
「ああ、もうバッチリだ。」
「まあ、あれね。昨日は凄かったから、回復したのはわかるけど、ね。」
昨日の余韻か、マリアは顔を赤くした。その表情だけで俺の理性が弾けそうになった。
「マリア、おいで。」
俺はマリアを引き寄せ、強引にキスをする。濃厚なやつだ。初めは固くなったマリアだったが、徐々に軟化していく。力が完全に抜け、俺に身体を預けるマリア。息が荒い。
「スイッチが入った?」
「馬鹿。」
身体を預けるマリアは俺を抱き締める。
「ずるい!わたしも!」
「ソーイチ様。」
テラスとビビもおねだりをする。順番にキスをする。
全員のスイッチが入った。そのまま、その柔らかく温かい身体を求める。
テラスもビビもマリアも、俺の欲求を受け止める。艶声を出し、身体を痙攣させ、絶頂を向かえる。
ビビとマリアは体力の限界か、倒れてしまう。俺はまだまだ足りない。テラスが微笑み、俺に抱きつく。
「テラス。」
「いいよ。うつわをみたして。」
俺はテラスを抱く。俺から離れないテラスは、そのまま何度も痙攣し、絶頂を向かえる。
「いいよ。ソーイチ。」
意識も朦朧としているが、俺を離さないテラス。
器が満たされる。魂が活性化する。
俺はテラスを抱き締めたまま、果てた。
欲に溺れた俺は、謎の充実感があった。女性陣も肌艶が良い。
「えへへ。」
「幸せ、でした。」
「そうね。」
女性陣も満更でもないようだ。俺はリビングでゆったりとしているが、女性陣が妙に距離感が近い。いや、密着している。
「こころはみたせた?」
「ああ。満タンだ。」
「では?」
「そろそろ出発かな?」
万全になった俺は、この居住地区から出た。
★
外は丁度昼位だろうか。とても明るく、爽やかだ。
森の中であって、空気が濃い。緑の空気の新鮮さが、肺を洗う。深呼吸して血の巡りが活性化するようだ。
ビビを先頭に、森を歩く。生い茂る木々を避けながら、目的地に向かう。
俺は気配察知をフル稼働する。いつ襲われてもいいようにと準備をする。ビビもいつもの薄着になり、五感を研ぎ澄ましている。彼女もまた、臨戦態勢だ。
警戒しながらの歩行は、速度に難があるがそれは仕方ない。ここは既に狼人の縄張りに侵入をしているからだ。
ビビが言うには、狼人の狩りは集団が基本のようだ。ビビみたいな例外も存在するが、それは極少数だ。
全方位を警戒し、集団行動をする。
気配を感じた。それも複数だ。ビビも感じたに違いない。
「ソーイチ様。」
「任せる。」
俺はビビにこの場を任せる。もし狼人ならば、同士討ちになるからだ。俺達がいるからこそ、ビビにこの場を任せたい。
「私はビビ!南の村のビビです!矛を収めてほしい。だが、そちらが立ち向かうならば、武力により排除致します!」
森に響くビビの声。俺達を囲う者達にもこの声は届いただろう。
気配が近づく。囲みを小さくしているようだ。
俺達の正面に、一人の狼人が現れた。髪は白く、背筋も曲がっている。顔は狼とヒトの中間であり、槍を携えていた。
「ビビか?」
「ダリ爺!」
ようやく、ビビは槍を下げる。俺達も武器を下ろした。
「お久しぶりです、ダリ爺。」
「おお、ビビ!皆、武器を下ろせ!」
この一言に、緊迫した空気は霧散した。六人の狼人がビビの前に現れる。彼等もそのザントと同じ顔つきだ。武器は槍に弓を携えていた。
「久しいな、ビビよ。」
「ダリ爺も。」
感動の再会なのだろうか、ビビとダリは互いに手を握る。
「無事であったか。」
「はい。」
「お前がいなくなって心配したぞ。」
「申し訳ない。事情がありました。」
ダリはビビを見つめる。孫が帰って来たような優しい目だ。
「ビビ。」
俺はビビに声をかける。
「はい、紹介します。こちらは東の村のダリです。私の恩人の一人です。」
「私はソーイチと言います。」
俺が挨拶をすると、ザントは怪訝な顔をした。
「どういう関係だ?」
睨むように、こちらを見るザント。
「私の主人であり、家族です。」
ビビが俺の代わりに話をする。
「主人、家族。」
「はい。」
「やはり、ビビは家族を選んだか。血は争えんな。」
だが、こちらを見るダリは、睨みを止めない。
「強いのか?」
「はい。私は主人の足元にも及びません。遥か先の存在です。」
「そうなのか?信じられん。」
ダリの険しい睨みが増す。その眼光は鋭い。
「まあよい。ビビがこれ程慕うのならば、そうなのであろう。」
鋭い眼光をやめ、穏やかな目に変わるダリ。
「まあよい。ここで立ち話もないであろう。村に招待する。」
「爺さん?」
「構わん。こちらはビビの主人だ。丁重にもてなすのが道理だ。」
若い狼人の言葉に、ダリが答える。若い狼人は納得してはいないようだが、年長者の言葉には従うようだ。
「こちらだ。」
ダリが先頭になり、村に案内をする。俺達もその案内を受ける。険しい獣道だが、そこを軽々と進む狼人達。テラスとマリアがそのペースについていけないので、歩みは遅い。俺とビビはともかく、テラスとマリアは人並みの体力だ。慣れない獣道に悪戦苦闘となっていた。
「このままだと日が暮れるな。」
若い狼人がぼそりと呟く。嫌味ともとれるその言動だが、実際に村に到着したのは日暮れ前だった。
「お帰りなさい、ダリ。」
村の門の前にいた狼人がダリに声をかける。
「収穫はありましたか?」
「収穫はないが、客人だ。」
「誰です?」
「南の村のビビだ。」
ダリの言葉に、門番の狼人が驚いた。
「ビビ!あのビビですか!」
「久しいですね。」
「間違いない!ビビだ!元気だったか!」
門番の狼人もビビを歓迎する。俺達を見て怪訝な顔をするが、事情を説明すると、渋々と村の中に入れてくれた。
村は小さめ。家が密集しており、簡素な木の家が並ぶ。雨風さえ凌げれば良いような、ぼろ家が立ち並ぶ。村の周囲には、木の柵が並んでおり、これが防御柵なのだろう。
ダリの帰還に、村の狼人が集まってくる。主に子供だ。
「ダリ、お帰りなさい。今日は何が狩れた?」
「すまないな、今日は何も狩れなかった。」
「そっか。」
「ダリ、肉は?」
「今日は我慢だな。」
「えー。お肉食べたかった。」
無邪気な顔の子供達に、ダリが優しい目で相手をする。
「あれ?ビビお姉ちゃん?」
「本当だ!ビビだ!」
子供達はビビを囲む。一人一人を撫でるビビ。ビビもまた、優しい目で子供達の相手をしていた。
「ねえ、あなたはだあれ?」
一人の狼人の女の子が声をかけてきた。
「俺はソーイチだよ。」
「変な顔ね。」
「ヒトだからな。」
「ヒト?」
「そうだよ。」
悪びれた様子はなく、ただの疑問に答える俺は、子供達に対しても、優しく対応した。
「この辺りはヒトはいませんから。珍しいのでしょう。」
ビビが子供達の反応に答えた。確かに、興味本位にこちらを伺う子供達。
「耳は何処にあるの?」
「尻尾は服の中?苦しくないの?」
「ビビと同じ顔だ!」
何か子供達が増えてきたので、無限保管にあった木トンボを取り出して、それを飛ばす。それを追いかける子供達。何個も何回も飛ばし、子供達と遊んだ。いつの間にかにテラスも一緒にはしゃいでいた。
「これちょうだい!」
「いいよ。皆にあげるよ。」
「やったー!」
「わーい!」
子供達はおおはしゃぎになり、各々その木トンボを飛ばし遊ぶ。
「これはヒトの遊具か?」
「そうですよ。」
「不思議な遊具だな。空に飛ばすとは。」
そんな大層な代物ではない。
「子供達が喜んでいる。感謝する。」
ダリが俺の肩を軽く叩く。子供達が無邪気に遊ぶ光景に、ダリも満足しているようだ。
「こちらだ。」
ダリが催促する。その案内についていく。到着した家。一際大きな家だ。その家の中に入る。
「お帰りなさい。」
「ああ、今帰った。」
「成果はどうでしたか?」
「すまんな、今日は成果無しだ。あと客人だ。」
「誰ですか?」
こちらを覗く女性。ビビの顔を見て、驚きを隠せずにいた。
「まあ、ビビじゃないの!」
「お久しぶりです、メメ。」
メメはビビを抱擁する。
「元気だった?怪我はない?」
「はい、私は元気です。」
ビビを抱擁した後、俺の事にも気がついた。
「あら、こちらは?」
「はい、私の家族で主人のソーイチ様です。」
「まあまあまあ、ビビの主人ですか!」
「はい、ソーイチと言います。」
テラスとマリアも紹介する。
俺の言葉に、メメが優しく微笑む。
「ビビの家族ですか。今日は賑やかになるかしらね。」
メメは俺を見てそう言う。賑やか?
「ところで、ガリ達はどうした?」
「ガリは今日の成果を処理しているわ。」
「そうか。」
ダリとメメは夫婦か主従かはわからないが、長年連れ添った相手なのだろう。
「では、ここで待とうか。肉でも持ってきてくれ。」
「はいはい。」
メメは家の奥に入り、大きな箱を持ってきた。中には乾燥肉が入っていた。
「腹も減っただろう。さあ、食べなさい。」
ダリの言葉に、乾燥肉をかじる。かなり固い乾燥肉だ。ビビは喜んで食べていたが、テラスとマリアは苦戦していた。
「やはり、ヒトは顎が弱いな。」
あの固い乾燥肉をいとも簡単にバリバリとかじるダリ。強靭な顎だ。
無限保管に収納しているパンをテラスとマリアに渡す。固い乾燥肉にギブアップしていたからだ。
「戻った。」
「お帰り、ダリ。それにテテにササ。」
三人の狼人が家に入ってきた。一人は若者の男性ガリ。後ろ二人に女性の狼人テテとササだ。
「あら、ビビじゃない!生きていたのね!」
「本当だ!ビビじゃない!」
「久しぶりです、テテ、ササ。それにガリ。」
「おう!ビビよ!」
大人三人の帰宅に合わせてか、子供達も帰って来た。
「ただいまー、腹減ったー!」
「あー!あの時の兄ちゃん姉ちゃんだ!」
「おもちゃくれた兄ちゃんだ!」
狼人がどんどんと増える。部屋いっぱいに人が増えた。
「今日は猪が狩れた!親父は?」
「俺は駄目だった。代わりにビビ達に出会った。」
「そうなのか。」
家族団欒なのか、思い思いに話をするダリ達。女性陣は猪を捌き、男性陣は今日の報告でもしているようだ。
「積もる話しもあるが、先ずは食事にしようか。」
ガリが囲炉裏に火をおこす。その回りに串肉を刺して炙る。子供達はその肉を凝視する。焼け具合を今かと待ち構える。
焼けるのと同時に、皆が一斉に食事を始めた。
それは圧巻だった。あの大きな猪の肉がどんどんとなくなる。俺達も御相伴に預かったが、ペースが早い。味付けは塩のみの素朴なものだった。
「折角の再会なのに、酒が恋しくなるな。」
「無理を言わない。全部もっていかれたのだから。」
「そうだな。」
なにやらダリ達の言葉に違和感を感じた。
「酒ならありますよ。」
俺は無限保管から酒瓶を取り出す。ドワーフの国で買ったワインだ。
「おお!」
ダリやガリが食い付く。大人人数分のコップを持ってきて、宴会に突入した。
「旨い!」
「ああ。上質なワインだ!」
「本当、美味しいわね。」
ダリ達に好評であり、すぐに空になってしまった。
「久し振りに飲んだ。いや、旨い酒だった!」
「本当に。ワインなんてなかなか飲む機会がないからね。」
ダリとメメが俺を賛辞する。ガリ達も同様だった。
「今日はここで泊まっていけ。寝る場所はいくらでもあるからな。」
ダリが言う。ここは平屋ではあるが、大きな家だ。部屋も数あるのだろう。
疲れが出たのか、テラスとマリアはもう眠そうだ。ビビはまだ元気だが、ワインが回ったのか、俺から離れない。
「ではお言葉に甘えて。ビビも行くよ。」
「はい。ソーイチ様。」
部屋はあったが、そこには柔らかい葉っぱが敷き詰められただけの部屋。それでも、今は睡眠が重要であるかのように、テラスとマリアはすぐにその葉っぱに寝転がった。
俺は何故か懐かしさを感じた。初めて小屋を作った時は、柔らかい葉っぱを敷き詰めただけの場所に寝ていたからだ。
「今日は寝るか。」
「はい。」
俺とビビも、その葉っぱの場所に寝転がった。




