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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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7-2 ウィズ大森林その2


進行方向を変え、俺達は森の茂みに入った。馬車の荷台は無限保管に収納し、ビビは先頭に立ち、テラスを背に乗せているレンを引っ張っている。俺はマリアを背に乗せているイトを引っ張っていた。


森の奥深くとなれば、道はもうない。強いていえば、獣道のような道があるだけだ。


木々に邪魔され、俺達の進行を遅らせる。


その夜。このままではいけない、と俺は思った。今は確実に徒歩の方が楽だ。馬の体躯はこの森では格好の餌になる。


「レンとイトの安全を確保したい。」


その言葉に、マリアが反応した。


「あなたのチートで何とかなるんじゃない?ほら、空間魔法?とかいうもので。」

「俺は魔法は使えないぞ。」

「例えの話よ。あなたの無限保管?があるならば、生物も入れられる空間を創れば良いんじゃない?」


マリアの言葉に、俺は目から鱗がでた。そうだ。確かに生物も入れられる空間を創れば、レンとイトを保護出来る。


じゃあ、どうするか?俺は考えた。


必要な物は何だ?空間?空気?重力?いや、全部か?


訳がわからないな。無限保管は俺の世界と繋げた産物であり、この世界とは違うものだ。


ならばどうすればいい?俺は頭を捻る。いくら考えても、その空間を想像出来ない。


「テラス、どうすれば良い?」


困った時は、助けてテラスさんだ。テラスならば良いヒントをくれるかもしれない。


「んーと、おおきなはこ?」

「大きな箱?」

「うん。はこ。そして、そのなかでせいかつするの。」

「生活?」


うん、よくわからない。空間を箱として、その中に生物の生活を安定させる。で良いんだよな?


「これもソーイチのせかいとおなじだよ。」

「無限保管の事か?」

「ちがうよ。おなじだけどちがうせかい。」


世界。違う世界を想像。世界を創造する。


俺は空に舞い、森を見る。見渡す限りの森だ。


空間を創造。それは想像(イメージ)だ。俺は眼に見える空間に目で線を引く。立方体の四角い空間。空気、水、重力、光、それらを空間内に閉じ込める。


その想像を、創造するために、無限保管を連想させ掌握させる。


立方体が光を放つ。空間がそのままの物質に昇華された。それをそのまま無限保管に収納する。


地上に降りて、確認をする。居住地区(クリエイトホーム)の完成だった。


先ずは、俺自身がその居住地区に入ってみる。空間に穴を開ける感覚で入った。


そこは、空気も水も重力も光もある。居住出来る空間を創造した。



この空間は森から創ったので、木々が乱立し、生活に難がある。だから、その木々を伐採する。これは、想像だけで解決した。そして、地面に草原を想像すると、みるみると草が生い茂る。見事な草原に早変わりした。


まさにチートだ。


俺は居住地区から出る。すると、マリアが俺を見て叫んだ。


「ちょっと!何処に行っていたの?急に姿を消して!心配したじゃない!」

「ああ、ごめん。とりあえず空間を創ったから、中を見てみなよ。」

「は?空間?」

「マリアが言っていた空間を創ったんだよ。これならレンとイトを保護出来る。」

「え?私は冗談半分だったんだけど?」

「まあ良いさ。とりあえず中に入りなよ。レンとイトも一緒に。」


空間に穴を開け、皆を招き入れる。


「は?え?」

「素敵な草原ですね。」

「きれい。」


広がる草原に、マリアは唖然としていた。ビビは生い茂る草原に心を奪われていた。テラスもこの空間を賛美している。


レンとイトが急に走り始めた。広い空間がよほど嬉しいのか、草原を駆け巡る。ビビがそれに参加し、テラスもレンとイトを追いかけた。


俺は、すぐ横に無限保管から小屋を出す。


さて。


「マリア、頼みがある。」

「え?何?改まって?」

「実は俺、限界なんだ。後で運んでくれ。」

「え?えー!」


気力の使い過ぎか、理由はわからないが、俺はそのまま倒れてしまった。


「馬鹿じゃないの!」


マリアのその言葉だけは耳に残りながら。







目を覚ますと、身体が重い。ベッドに寝ていた俺は、回りを見渡す。居住地区を創ってからの記憶が曖昧だが、俺は倒れたのまでは覚えている。


片腕にテラスがいる。いつものように、腕を抱き締めていた。裸で。


その拘束をほどき、ベッドから降りる。少しだけの立ち眩みがあったが、回復はしただろう。


部屋を出て、リビングに。そこにはマリアがいた。


「おはよう、マリア。」

「やっと起きた!もう!心配させないでよね!」

「ごめん。こんなに疲れると思わなかったからさ。」

「まあ、私も気軽に言ったのもあるから、私にも一因はあるけども。」

「それは言いっこ無しだ。とりあえず、どのくらい寝ていた?」

「この空間、ずっと明るいから時間感覚がわからないけど、多分一日は寝ていたわ。」

「そうか。道理で腹が減った訳だ。」

「何か食べる?」

「ああ。頂くよ。」

「ちょっと待っててね。」


マリアはパタパタと台所に向かった。俺はリビングのソファーに座り、一息。感覚的だが、もう少しは休んだ方が良いと感じる。


マリアが料理を並べると、ビビも小屋に入ってきた。


「お目覚めでしたか。体調は如何ですか?」

「正直、もう少しは休みたいかな。」

「でしたら、沢山食べて、沢山休んで下さい。ここは外敵はいないようですから。安心して休めます。」


ビビはこの空間を全部見回したのだろうか。汗で服が身体に張り付いていた。


「ビビさんはお風呂に入ってからね。あ、お風呂は沸かせる?」

「ああ、そのくらいは出来る。」


重い身体を立たせ、風呂を沸かす。ビビが風呂に入っている間に、俺はマリアが用意した食事を頂く。


よほど腹が減っていたのか、結構あった量を完食した。風呂から上がったビビの少しだけ悲しい眼が、俺に罪悪感を抱かせる。


「大丈夫よ。ビビさんの分はちゃんとあるから。」


マリアは、ビビの食事を用意した。明らかに笑顔のビビ。マリアさんありがとう。


「それじゃあ、もう少し休むよ。」

「ゆっくり休みなさい。」

「はい、おやすみなさい。」


俺はベッドに戻り、また寝た。





俺が全快するまで、体感で三日はかかった。食べて寝て、の繰り返し。しっかりと休んだ結果、身体に充実感が漲った。


風呂に入り、汚れを流す。もちろん、テラス達も一緒だ。久々の風呂に、俺の理性がはち切れそうになる。


「げんきになった?」

「ああ。もう元気だよ。」


テラスは俺に密着し、その柔らかさを体感させる。その誘惑に負けそうになる。


「えへ、げんきだ。」

「はい、そうですね。」

「もう、馬鹿なんだから。」


俺の下半身を見て、テラス達が喜びを露にした。いや、しないよ。確かに回復はしたけどさ。


「だめ。もうがまんできない!」

「そうですね。ここには外敵もいませんし。」

「やっぱりこうなるわよね。うん。」


女性陣の圧力に、俺はなす術もなかった。


俺はその柔らかい肢体に溺れる事になった。







目を覚ませば、全裸だった。女性陣もだ。昨日のお楽しみに、女性陣は満面な笑みを浮かべ寝ていた。俺はテラスの拘束をほどき、ベッドから降りる。

清々しい朝と感じるのは、やはりこの空間が平和だからだろう。服を着て外に出れば、レンとイトがこちらに向かってくる。


「おはよう、レン、イト。」


二頭は俺の挨拶に反応し、首を軽く振る。優しい目が何かを訴えている。そう、世話を要求していた。

俺はブラシを取り出し、レンとイトにブラシをかける。とても気持ちが良いのか、俺に身体を預けるようにすり寄る。


「ここは気に入ったかい?」


目で訴えるレンとイト。相当気に入っているようだ。これからは離れる事はないのが嬉しいようだ。


「街道に出たらまた仕事をお願いするから、その時は頼むよ。」


レンとイトは鼻を鳴らす。


「ご飯にしようか。」


無限保管からレンとイトの餌を出す。塩も忘れない。


勢いよく食べるレンとイト。レンとイトも食欲旺盛だ。


「おはようございます。」

「あ、おはよう、ビビ。」


小屋からビビが出てきた。いつもの薄着の格好。鍛練の時の格好だ。


「久しぶりに、乱取りをやるか。ビビの本気を肌で感じたい。」

「よろしいのですか?」


ビビがなにやら嬉しそうだ。尻尾がブンブンと千切れんばかりに振っている。


「良いよ。ここなら多少騒いでも問題はないだろうから。」

「ですが、この黒狼爪をソーイチ様には向けられません。」

「なら、この棍を渡すから、これでやろう。」

「はい、それでしたら。」


無限保管から棍を出して、ビビに渡す。そういえば、ロイド男爵が言っていたな。


たまには本気を受け止める事も大事だよ。


そうだな。ビビの実力を知る機会にもなる。ならば、この乱取りで、ビビの実力を見極めよう。


対峙する俺とビビ。ビビは棍を中段に構える。俺は無手だ。構えはない。自然体に立っているだけ。


「いつでも良いよ。」

「はい、行きます!」


赤い気を纏うビビ。足元が色濃く、そこに気を集中しているのがわかる。


たった一歩の踏み込みで、俺の懐に飛び込むビビに、俺は流の足運びで流れる。柔の体捌きにビビの力を利用する。ビビの首元に手刀を入れるのだが、ビビにかわされる。ビビの棍が俺の腹を襲うが、縮地を使いその棍の攻撃をギリギリにかわす。


この一連の流れだけで、ビビの実力を見極めた。俺が手加減を出来る存在ではない。


手甲を装備する。気を練り、発動させる。俺はビビみたいに、外部には漏らさない。全てを腹の底に押し入れる。


空気が震えるのがわかる。俺の気の発動が、この一帯に変化をもたらす。


俺は構えはしないが、自然体にビビの正面に立つ。ビビは汗を大量に吹き出している。俺の気に反応したのか、ビビのその表情は苦悶を浮かべていた。


俺を見つめるビビ。攻める事なく、ただ、俺の動向を見つめていた。


一歩、歩む。その瞬間、ビビが俺に向かってきた。


先程と同じ攻撃だが、速さが違う。その速さに合わせ、俺は流の足運びをする。棍の軌道を手甲で受け流し、滑らせビビの手首を掴む。柔の体捌きでビビの体勢を崩し、そして投げる。


投げる瞬間、俺は腕の力を抜いた。背中から落ちるビビは、しっかりと受身をとる。最後まで投げを敢行したら、ビビが怪我をするからの配慮だ。


受身から、直ぐ様立ち上がるビビ。呼吸を整え、構える。


「まだやれるかい?」

「もう一度、お願いします!」


ビビは思い切りのよい返事をする。


直線的な動きのビビ。その一歩、瞬発力に長ける。懐に飛び込む速さは流石だ。棍を薙ぎるビビ。


次はその攻撃を受け止める。手甲があるから、棍の攻撃を遮る。重い一撃だ。

ビビは次々と連続の突きを放つ。俺はそれを全て払いのける。深めに入った突きの刹那の隙を逃さずに、棍よりも懐に入り込む。ビビの脇に逸れた俺は、がら空きになっているビビの腹に、軽く手のひらを当てる。そして、距離を開けた。


「冷静に熱くなれ。隙を作るな。」

「はい!もう一本!」


棍を強く握るビビ。中段の構えから、また懐に飛び込む。ビビの熱い想いを受け止めるように、俺はビビの攻撃を受け止めた。


攻撃に集中するあまり、足元がお留守になるビビの脚を弾く。同時に上半身を反対側に引き込み、回転させる。このままだと怪我をするので、身体で受け止め、その回転を止める。


「も、もう一度!」

「よし、来い!」


俺とビビは時間のある限り、乱取りを続けた。






「やはり、ソーイチ様には敵いません。」


一休憩、ビビは汗だくになりながら、地べたに座り俺に話す。


「動きは良いよ。ただ、柔がまだまだだね。形が剛に寄りすぎている。」


流と剛は合格点を出しても良い。ただ、柔の体捌きが固い。苦手なのだろうか。


「柔は相手の重心を崩す役割もある。その重心を見据えた動きをするのがコツだよ。」

「はい。」


力が入り過ぎているのも影響しているのだろうが、しなやかさがありながら、その重心を崩す動きが直線的であり、崩す要素がなかった。


「型を思い出すんだ。その動きが柔を生み出すよ。」

「はい!」


ビビの良い返事に、俺はうん、と頷く。元々、直線的な動きが得意のビビに、柔の柔軟さが組み合わされば、かなりの強さが向上するだろう。


「今日はおしまいにして、風呂に入るか。」

「はい。お背中お流しします。」


俺達は小屋に戻った。


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