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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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7-1 ウィズ大森林

お待たせしました。ウィズ大森林編になります。


頑張って書いていきます。


街を出れば、すぐに森へと入る。ここがウィズ大森林の入り口だ。森の道幅はある程度はあれど、舗装は粗い。荷台がガタガタと上下に揺れる。ガウスにいた時に、更に改良した荷台部分だが、それでも揺れはある。これ以上の改良は、リニア式でもしない限り無理だと判断をする。その改良には、磁石が必要不可欠だ。この世界にあるかどうかわからない代物であり、マリアに聞いても、見た事はないと言う。今すぐに必要ではないから、急ぐ必要はないが。


そして俺は、森の大きさを知るに一度空を飛ぶ。何故かテラスを抱き抱えて、だ。


「あは!すごーい!」


一面の森に俺は驚愕する。地平線の先まで森が見えるからだ。彼方まで森しかない。その広さに、色々と不安になった。


先ずは、食糧だ。これは、魔物や魔獣がいるので、何とかなるだろう。ビビと協力して狩りをしよう。


水。ここまで大きな森だ。小川があればすぐに補給した方が良いだろう。


後は?・・・、ないか?


住み家がある俺達に、野宿は快適だ。服はある程度は揃っているし、小川を見つけたら、洗濯をすれば良い。


衣食住、何とかなりそうだ。俺の不安は杞憂のようだ。


俺のチート能力に感謝する。長い旅でも、快適に過ごせるこの能力。本当に感謝しかない。


さて、森に入り二日目。小屋を無限保管から出し、休憩をしている時、ビビと狩りに出掛けた。生い茂る木々に木漏れ日が差し込む。そこで、第一魔獣を発見した。


「鹿か?」

「はい。」


大きな鹿が群れでいる。ここは狩らせて頂こう。


「行きます!」


鹿の群れが、ビビの突撃に反応してか、散り散りに逃げ出した。それでも、脚はビビの方が早く、楽々と槍を鹿に突き刺した。


「やりました!」

「流石ビビ。」


俺は大きな獲物を狩ったビビを誉める。尻尾をブンブンと振り、嬉しさを表現していた。


鹿の血抜きをして、無限保管に収納する。


「さて、戻ろう。」


俺達は小屋に戻った。


「大物ね。」

「はい。」


マリアに今日の成果を見せる。血抜きはしてあるので、後は解体をするだけだ。それはマリアに任せる。

解体だが、内蔵はいつも棄てている。食べるなら、しっかりと下処理をしないといけないのだが、ここでは出来ないので、穴を掘り、そこに埋めている。


みるみると解体をするマリア。その手慣れた動きは、熟練者を彷彿させる。


「ん、なに?」

「いや。」


ナイフ片手に微笑まれると怖い。いや、かなりだな。


「刺すわよ。」

「冗談でもやめてくれ。」


マリアの邪魔はよそう。俺はその場を離れる事にした。





三日目。川を発見する。ここでは水の補給だ。


本来ならば、川の水は生水なので、沸騰させてから飲み水にするのだが、俺には無限保管がある。生水を無限保管に収納するだけで、簡単に飲み水に変化するのだから、本当に役に立つ。

川には魚もいたので、少しばかり魚も採った。釣りではない。手掴みだ。


川でバチャバチャと魚掴みをしていたら、突然、熊が森から現れた。よほど腹が減っているのか、俺達を見て、よだれを滴しこちらに向かってくる。ビビは嬉々として、その熊に挑む。今のビビならば、熊は簡単に倒せる。任せよう。



槍を熊の急所の頭に一刺し。熊が攻撃を振るう事なく、食糧に変化させた。


熊の血ぬきをして、無限保管に収納する。解体は、ビビとマリアに任せている。


食糧を手に入れ、小屋に戻る。そこに、テラスとマリアが留守番をしている。


熊を狩った事をマリアに報告し、今回は龍の鱗で作ったナイフを渡す。このナイフならば、何でも切れるだろう。


「凄い切れ味ね。」


硬く軽いそのナイフを持って、どんどん熊を解体をするマリア。ビビもその解体を手伝う。


速度が段違いに速く、解体を短時間で終了させたマリア。そのまま龍の鱗のナイフは渡していよう。俺には黒石ナイフがあるし。


川辺で一夜。食事をし、風呂は久々に川を利用した露天風呂にした。風呂は毎日入っているが、露天風呂は格別だ。今回は皆で入る。とても甘美な時間ではあったが、生殺しの時間でもあった。


テラスはそのまま求めて来たが、今回は断腸の思いでその誘惑を断った。


「ソーイチ、おねがい。」

「駄目です。」


うん、可愛い。だが、駄目なものは駄目だ。色欲に飲まれてはいけない。


テラスの抗議をうやむやにし、小屋に戻り、仮眠をとる事にした。


前半はビビが見張りをして、後半は俺だ。テラスとマリアは十分に休んでもらう。これがもう当たり前になっている。


朝になりまた出発をする。


本当に快適な旅に、俺は緩む気持ちになる。だがここは危険地帯。気を張るのは程々にして、油断ないように努めた。



森に入り五日目。


俺の気配察知が警鐘を鳴らしている。


「誰かが見ているね。」

「はい。ただならぬ殺気を感じます。」


ビビもこの気配に感づいたようだ。馬車を止め、辺りを見回す。


テラスとマリアは荷台に引き込ませる。


「ビビはレンとイトの護衛を!」

「はい!」


ビビは行者席から馬達の前に出る。俺は荷台の屋根に立つ。


ビンビンと感じる殺気は、この馬車を中心に囲んでいる。


囲まれた。


ただならぬ殺気は、なおも続く。こちらの出方を伺うように。


俺は、一際殺気を放つ方へ、木の上、黒石の指弾を放つ。手応えは、ない。


それを気に、殺気は一斉にこちらに迫る。


上からの気配。何者かはこの馬車を襲ってきた。


空中戦。その何者かの懐まで跳躍し、一撃。間髪入れずに、立体機動、空中を縦横無尽に駈けた。


馬車を中心に倒れる賊。俺の一撃に気絶しているようだ。


賊は体躯は細く、斑柄。豹の獣人だった。


「この地は我が縄張り!ここまで荒らしに来たか!この狼人が!」


ビビめがけて、一際大きな殺気が迫る。


ビビも反応し、黒狼爪を前面に出し、それに応戦する。


背は大きいが、線の細い身体の豹の獣人。槍を携えといる。


俺はビビに加勢をしようとしたが、ビビに止められた。


「これは私が!」


豹の獣人の猛攻に、ビビは応戦している。不規則でしなやかな動きをする豹の獣人は、ビビを翻弄しながら、攻め続ける。



俺は余計な邪魔が入らないように、木の上で待機している豹の獣人を、黒石の指弾で制圧していく。


木の上から落ちる豹の獣人。的確に急所に当てているので、気絶しているようだ。


さて、ビビは大丈夫か?俺はその闘いを静観した。





フェイントを交え、ビビの鋭い突きをしなやかにかわす豹の獣人。間髪入れずに豹の獣人はカウンターを入れるが、それにビビが反応する。


お互いが隙を伺う。豹の獣人は槍を上段に構えた。独特な構えだ。ビビは中段に、半身の構え。隙を限りなく少なくし、相手の動きに反応しようとしている。


豹の獣人の動きは独特であり、その長い脚と柔らかい膝が、動きを軽やかにする。


ビビは反対に動かない。常に豹の獣人を正中に合わせ、相手の動きに、翻弄されないようにする。


動いたのは、豹の獣人。一際高い跳躍からの槍の一振。渾身の一撃だろう。その攻撃を、ビビは受け流す。豹の獣人の槍はビビの横に流される。すかさずビビは槍を半回転させ、石突きを豹の獣人の背中に一撃を加えた。


流の足さばき。その後の剛の一撃だ。震脚もしており、見た目よりも威力は高い。


吹き飛ぶ豹の獣人。木にぶつかり、そのまま倒れた。






俺とビビは豹の獣人を縛った。誰も死んでいない。一際強かった豹の獣人は厳重に縛った。


「終わった?」

「ああ、終わったよ。」


俺の言葉に、マリアが安堵する。総勢八人の豹の獣人は木に縛りつけた。


「さて、どうするか?」

「この森は弱肉強食です。法もありません。害があるならば、始末した方が良いと思います。」


ビビが物騒な事を言っている。始末は簡単だが、俺はこの豹の獣人の言葉が気になった。


「この地は我が縄張り!ここまで荒らしに来たか!狼人が!」


前者は主張だが、後者は、どういう意味だろうか。


それを問いただす為にも、ここは始末しない選択をした。


暫くして、豹の獣人が目を覚ました。回りを見回し、今ある現状を知る。


「縛らせてもらった。逃げる事は出来ない。こちらの質問に答えたら、命は助けてやる。」


睨む豹の獣人。唸り声をあげ、こちらを威嚇する。


「さっさと殺せ!この畜生共!」


「よく考えろ。今生きているのは、俺の気まぐれだ。その気まぐれが心替わりしないうちに、話した方が身のためだ。」


俺は睨みに恐怖を混ぜる。完全なる脅迫だが、今は効果を発揮するだろう。


「・・・何が知りたい。」


唸りを止め、話しかける豹の獣人。ただ、眼だけはいまだに睨み付けている。


「荒らしに来たか、狼人が、と言っていたな。その意味を話せ。」

「そのままの意味だ。」

「狼人がこの地を荒らしているのか?」

「何を白々しい!」

「勘違いするな。俺達は五日前にこの森に入ったばかりだ。現状は知らん。何があった。」

「そんな嘘に騙されない。お前等も奴の手先だろうが!」


話にならない。現状を知りたいだけなのだが。


「ならば、何故俺達の馬車を襲った?」


俺の言葉を理解したのかはわからないが、豹の獣人はポツポツと話し始めた。


「・・・、お前達の馬車に狼人がいたから、お前等もあいつの仲間と判断した。」

「あいつ、とは?」

「ゲルマだ。」


その言葉にビビが僅かに反応した。


「ビビ、知っているのか?」

「はい。我が村の長です。」

「やはりか!やはりお前等も奴の手先か!」


豹の獣人はビビの言葉に確信を持ったようだ。眼が狂気に満ちている。


「さて、そのゲルマがこの地を攻めている、それで良いんだな?」

「今さら!」


豹の獣人が罵声をあげる。完全に勘違いなのだが、誤解を解くのは無理そうだ。


「そうか。ビビ、ここでの縄張り争いは頻繁なのか?」

「いえ。お互いの縄張りには近づかないのが暗黙とされています。」

「我等の地を汚したのは、お前達が先だ!」


豹の獣人が叫ぶ。我等に非はない、と主張するかのように。


「豹の獣人の村は何処にあるんだ?」

「それはわかりません。神出鬼没ですので。」


ビビの答えに、俺は違和感を感じた。


神出鬼没の豹の獣人を相手にするならば、縄張りを荒らす行為は被害を生む。その被害を抑えるのならば、そうそう行動は出来ない。


狼人の村の長であるグエンには、被害を抑える何か秘策でもあるのか?と疑いたくなる。


「なあ、これからお前達は狼人をどうするんだ?」

「知れたことを!我等に楯突いた事を後悔させてやるのみだ!」


意気揚々と語る豹の獣人。自身が捕縛されているのにも関わらずにだ。


それにしても、面倒な事だ。部族争いに関わりを持つ事になりそうだ。


ここで放置の選択もあるが、ビビの故郷が関わっているのだから、見過ごせない。最悪、ビビの故郷は蹂躙されるだろう。

そして、豹の獣人の村も発見次第、被害に会う。俺としては、この醜い争いを止めて欲しい所だ。


「ビビ、彼等を自由にしてやって。」

「はい。わかりました。」


そう言って、ビビは豹の獣人の縄を切る。この行動が意外だったのか、自由になった豹の獣人は、こちらを睨むが立ち去らない。


「何故、解放する?」

「俺達はその縄張り争いには関与していないからな。そのまま立ち去るならばそれで良いし、次にまた俺達を襲うならば、今度こそ容赦はしない。」


その言葉に、豹の獣人は後退りする。


「後悔するぞ。」


そう言って、豹の獣人達は森の茂みに入っていった。気配が消え、回りは穏やかな空気に覆われる。


「良かったのですか?」

「構わないよ。だけど、このまま放置も出来ないかな。」


ビビの質問に俺が答える。そう、このままにしたら、きっと後悔するだろう。


「いくの?」

「ああ。」


俺は決意を固める。そして、


「ビビの故郷は何処だい?」


そうビビに問いかけた。


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