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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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6-7 ガウスでの冒険者とは


今日からは観光を主にする。折角来たのだ。観光をしない手はない。


迷宮都市ガウス。西の大陸では、始まりの場所とも呼ばれている。何が始まりかというと、冒険者の始まり、という意味だ。

ガウスにある迷宮は基本的にはやさしめであり、冒険者を目指すなら、この迷宮で腕を上げる、という意味が込められている。

確かに、ウッドゴーレムや巨大な蜘蛛は、ヒトでも対処出来る代物だろう。

だが、ストーンゴーレムは違う。これは硬すぎて、討伐には、熟練者以上の実力が必要になるようだ。しっかりと連係し、隙を作り、大技を決める。といった手順が必要で、冒険者ランクもC以上の実力が必要とされていた。


ならば、ガウスの迷宮を踏破にはどの程度の実力が必要か?最後に登場するガーゴイルの存在は確認されており、これを倒すと、Bランクが与えられる、という。


つまり、俺達はBランク以上は確定なのだ。


そして、そのBランクは実力者の証であり、色々と都合が良くなる。冒険者の栄誉だからな。


さて、この迷宮はやはり、ガーゴイルで終了となっていた。更に奥は誰も知らないようだ。混乱を避ける為にも、ペタの事は黙っていよう。


先ずは此処で一般レベルのCランクが目標となり、そこから各地に冒険をする。といった感じだ。


これは全て、酒場での情報だ。猿の獣人が教えてくれた。彼もまた冒険者であり、ランクもDランクだった。


先輩冒険者に敬意し、情報をいただいたお礼に、酒をご馳走した。

酒は口を軽くする。情報収集には都合がいい。冒険者心得の他に、この街の情報も頂いた。


このガウスの街に肉料理が多いのは、やはり獣人が多いからだろう。ビビが喜んでいた。東には全くなかった香辛料も多く、それに安い。マリアに買い物を頼み、色々と吟味する。


「カレー、作れないかな?」

「良いわね!作ってみようかしら!」


マリアがスパイスの配合量は知っているのか疑問だが、カレーが食べれるのならば、協力は惜しまない。


「米、欲しいなー。」

「無理言わないの。ナンで我慢しなさい。」


まあ、カレーが食べられるのであれば、文句はない。だが、久々に米が食べたくなる。米を探す旅も悪くないかもな。


それにしても、

「買いすぎじゃないのか?」

「これくらいは普通よ。」


沢山の買い物に、俺は苦笑した。





沢山の買い物をした。商品は全て無限保管に入れてある。今日の夕飯は外で食べる事にした。肉全般の注文をすると、ビビの眼が輝く。


相場的にも安く、兎に角旨い料理に舌鼓をする。ビビさん、ちゃんと噛んで食べようね。


テラスは果物を、マリアはバランス良く食べていた。あ、ビビさんおかわりですか。


「まっずい料理だ!此処はごみを客に食べさせんのか?!」


罵声が聞こえる。近くのテーブルだ。冒険者らしき人物男五人が、口々に悪口をいっている。


「もっと上等な物を作れや!」

「酒だ!さっさともってこい!」

「こんな下の食堂に味を求めるのが間違っている。」

「確かになぁ!ひゃはは!」


なんだろうね。チンピラが幅を効かすような態度だな。


「さっさと酒をもってこいや!愚図が!」


その悪態に必死で心を抑える店員。男の店員が急いで運んだら、腹を蹴られた。


「愚図は何をやっても愚図なんたよ。」

「あーあ、服が汚れちまったぜ。どうしてくれんだよ!」


更に悪態が悪化する。女性店員は男共の態度に振るえているし、店主は謝っているが、暴力を振るわれていた。


「ソーイチ様。」

「行くか。」

「程程にね。」



俺とビビがその冒険者の元に向かう。


「なんたよ。てめえら。」

「男はいらねえ。その上等な女を置いて消えな。」


一人の男がビビに手をだそうとする。その下衆な笑みに反吐が出そうになる。ビビはその男の手首を掴み、離さない。ビビが手に力を込めているのか、男は相当に痛がっている。


「出ていきなさい。迷惑です。」

「離せ!ぐああ!」


骨が軋む音が聞こえる。もう少し力を込めれば、折れるだろう。


「このアマー!」


別の男がビビに殴りかかる。それを俺は受け流し、柔の力で投げ飛ばした。

受け身もとれずに、背中から落ちる男は、その衝撃で気絶する。


男共がこの光景に驚愕、怒りを露にした。


「てめぇー!」

「やりやがったなー!」


男は腰のナイフを抜き、俺を襲う。


そのナイフを流の動きでかわし、柔で投げる。完璧なる弧を描く男は、強烈な投げにより、背中から落ちる。

連係なのか、後からも襲いかかってくるが、次々と対処する。


簡単に投げ飛ばされた男共。ビビは見よう見まねで投げ飛ばすのも確認した。流石は戦闘民族。いや、ビビ。見取りだけで、柔を形にしていた。まだまだ荒削りだが、ビビの能力ならば、柔をマスターするのも時間の問題だろう。


積み重なり気絶する男共。その光景に、回りからは歓声があがる。


「すげーぞ!兄ちゃん!」

「嬢ちゃんも凄かったぞ!」

「ざまあみろ、雷竜の奴らめ!」


皆が口々に俺とビビを称賛する。豚の獣人、オークがやってきた。どうやらこの街の衛兵のようだ。この騒ぎに駆け付けたようだ。


状況を聞く衛兵。俺は隠さずに話をした。第三者の証言もあり、俺達は注意だけでお咎めなし。男共は、詰所に運ばれていった。厳重注意の後、反省を促すようだ。ナイフを抜いたのだからもう少し重い刑を期待したのだが、そうはいかなかった。


「あいつらはBランクパーティーの雷竜でさ。この街の有力者との繋がりがあるから、あまり重罪には出来んのでさ。」


老人の獣人がそう話してくれた。なるほどね。実力者だから、有力者と手を結べたのだろう。そうなれば、逆らう人々は少なくなる。それに幅を利かせた訳だ。


「あんたらも注意すんだな。あいつらは執念深いでさ。」

「気をつけるさ。」


あの程度の実力なら大した事はない。返り討ちにしよう。


「ありがとうございます。これはお詫びの品です。」


と言って、店の店長が酒と肉料理をご馳走してくれた。男性店員も女性店員も頭を下げて礼をする。


その日の酒場は、俺達を主役に大いに盛り上がった。皆から酒をご馳走され、皆で飲む。

楽しい夜が過ぎていった。





朝、小屋にいた。頭が痛い。完全な二日酔いのようだ。いつものように、テラスは裸で寝ているが、ビビもマリアも裸だった。


あれ?


俺は違和感を感じずにはいられなかった。そして気が付いた。酒場の後の記憶が曖昧だ。


「おはようございます。」


ビビが起きた。少しだけ項垂れるビビ。その仕草は妖艶だ。


「おはよう、ビビ。」


俺は少しだけの罪悪感があった。この状況、やはり、致したのは間違いないだろう。


「あの、昨日は凄かったです。」


と言うビビ。顔を赤らめ昨日の行為を反芻しているようだ。


やっちまった!これはヤバイ!思い出さないと!


内心焦りながら、昨日の夜を必死で思い出そうとする。集中して熟考すると、断片的に思い出した。


あ、ヤバイ!これはヤバイ!


俺は彼女達と致した事を思い出した。言葉にならない程の淫乱行為をしてしまっていた。


「怒っているか、ビビ?」

「何故ですか?」

「いや、昨日の夜なんだが・・・。」

「はい。とても素晴らしい時間でした。」


ビビは頬を赤らめる。どうやら怒ってはいないようだ。テラスは大丈夫だとは思うが、マリアはどうだろうか?少し、いや、かなり怖い。


「マリア?」


俺はマリアを起こす。眼を覚ますマリアは俺の顔を見る。


「あ、おはよう。もう朝なのね。」


まだ寝惚けているのだろうか。普通だ。


「き、昨日の事なんだが・・・。」

「昨日?・・・っ!!」


急激に顔を赤くするマリア。耳まで赤くし、目線を反らした。


「昨日は、そう!気の迷い、そうよ、気の迷いよ!」


と言って手をブンブンと振る。昨日の激しさが恥ずかしかったのか、顔を隠してしまった。


「怒っている?」

「なんで?」

「いや、自重しなかったから、さ。」

「そ、そうね。怒ってはいないわ。は、恥ずかしいだけよ。」


そうか。それは良かった。


俺は安堵する。嫌われる事はないにせよ、かなりハードな事を致したからな、機嫌を損ねると思っていた。


テラスも起こす。


「テラス?」

「えへ。おはよう。」


うん、いつものテラスだ。癒される。


「おふろ、はいりたい。」

「そうだな。お風呂にしようか。」


俺は女性陣を連れて、風呂に入る。今日は洗濯が大変になりそうだ。


食事をしてから、マリアのお小言を貰い、罰として洗濯をする。洗濯機が欲しいが、無いので手洗いだ。


「もう、あんなのはごめんよ。」

「はい、自重します。」


今日は頭の上がらない一日になった。







洗濯も終わり、街に繰り出す。今日も買い物をするのだが、なにやら視線を感じずにはいられなかった。


好奇の目、尊敬の目、畏怖の目、様々だ。聞き耳をたてる。


「あれが、あの雷竜をコテンパンにした人達か?」

「そうには見えないが、聞いた話ではそうだな。」

「狼人が強いのはわかるが、片割れはヒトじゃないか。眉唾だな。」

「見かけに判断しちゃいけねえぜ。」


等々、散々な言われようだった。


俺は気にしないで、買い物を続ける。何故だか、値引き交渉をしなくても、おまけをしてくれる店が多かった。


口々に、ありがとう、とか、話を聞いて胸が踊った、等様々に言われる。こんなに早く昨日の事が広まるとはね。それだけ、雷竜の幅は大きかったのだろう。


実際、悪い気はしない。街の人達が口々に感謝するのだ。良い気を通り越して、恐縮してしまう。


さて、買い物も終わり、小屋へと戻る。途中で、見知った人がいた。猿の冒険者と出くわした。


「あんたら!凄いな!あの雷竜をやっつけたって聞いたぞ!」


彼は興奮しながら、俺達を称える。もう賛辞は聞きあきていたので、軽く挨拶だけをして、別れようと思っていた。


「な、なあ、お願いがあるんだが、聞いてくれないか?」

「お願い?」

「ああ。」


俺は一考する。断る事は簡単だ。だが、彼の追い詰められたような表情に、聞くだけならと、聞く事にした。


「俺の妹が、迷宮から戻って来ないんだ。探しに行きたいが、俺一人では、何にも出来ねえ。だがら、雷竜すら倒せるお前達に、協力をお願いしたい。」

「それは大変だが、頼む人を間違えていないか?その仕事は探索者の案件だろう?」

「そ、それなんだが、無理なんだ。」

「何故だ?」


彼は口がごもる。何やら言い出しにくいようだ。


「・・・、金がない。」


そうか。金がなければ、探索者は雇えない。借金制度があれば別だが、この世界ではどうだろうか?命が軽いのだ。借金はなかなかに難しいだろう。


「金がないから、俺達か?それは少し虫が良すぎるんじゃないのか?」

「わ、わかっている。」

「それにあなたにも仲間はいるだろう?その仲間同士で探せば良いじゃないのか?」

「・・・、それが、無理なんだ。だからあんた達にお願いをしている。」


彼の目は真剣だ。俺はマリアを見た。彼女は首を横に振る。


「俺達はそんなにお人好しではない。やるなら自分でやれ。」


俺は突っぱねた。


「頼む!頼むよ!そうしないと、妹の命が!」

「冒険者になったのならば、覚悟はしている筈じゃないのか?そんなに妹が大事なら、なんで守ってやらない!」

「無理なんだ。俺には無理なんだ。」

「それは、何故だ?お前だって冒険者だろ?危険に立ち向かってこその冒険者ではないのか?」

「俺はしがない冒険者だ。ランクもDで止まったままだ。才能がないんだ。」


彼は泣き出した。マリアを見るがやはり首を振る。


「すまないが、お前の嘘に付き合う暇はない。他を当たれ。」


俺は確信を切り出した。猿の冒険者の顔がみるみると青くなる。


「な、何故?」

「勘だよ。勘。」


実際はマリアの鑑定で発覚している。彼女の眼が、彼の嘘を暴いていた。


「何故そんな嘘をついた?」

「そ、それは・・・!」


猿の冒険者は逃げ出した。流石は猿。その俊敏性はなかなかだ。


「追いますか?」とビビが言う。

「別にいいさ。だけど、注意は必要だな。」


俺は、その猿の冒険者の行動が気になった。何を企んでいるかはわからないが、俺達に何かが迫っていると考えた。


「さ、帰るか。」

「はーい。」


俺達はいつもの小屋に戻った。







「失敗か。」

「使えねえ!」

「まあいい。奴等は俺達に喧嘩を売った。躾が必要なのは変わらない。」

「俺達、雷竜に喧嘩を売った事を骨の髄までわからせてやる!」

「で、ですが、奴等は俺達をいとも簡単に!」

「それはお前達が弱いだけだ。」

「そうそう!弱いだけの奴なんかいらないよ!さて、使えない奴はどうする?殺す?」

「待って下さい!もう一度機会を!」

「良いだろう。奴等を迷宮に引き下ろせば何をやっても構わん。連れてこい。」

「は、はい!」

「それまでこいつは預かる。ぬかるなよ!」

「妹には、妹には手を出さないで下さい!」

「それは、お前次第だ。」


男性はその場を去る。その場を去る途端に、女性の悲鳴が木霊する。男性は、拳から血を出し、震えた。


「必ず、助ける。」


男性は、木霊が聞こえなくなる場所まで素早く駆け出した。



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