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挙止進進に異世界旅譚  作者: すみつぼ
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6-6 妖精ペタ

今回は短めです。


黒い部屋に出た。その部屋はファンタシーとはかけはなれた、近未来的な作りになっており、黒の壁に、赤いラインが走っていた。その中心には、大きな何かがある。赤いラインが集中し、天井と中心の何かを往復する流れをしていた。


「何、この部屋は?」


世界観が違うこの部屋に一歩入る。足場がまるでないので、空中歩行でその中心に向かう。マリアは抱き抱えた。


中心には、大きな水晶玉と、まさかのキーボードがあった。とても小さいが、間違いなくキーボードだ。


俺がそのキーボードを触ろうとする。


「やめろー!触るな!」


と声が聞こえた。子供のような声だ。


「誰だ?」

「それはこっちの台詞よ!」


目の前に現れたそれは、小さな小さな妖精であった。





「此処まで来るなんて信じらんない!」


腕を組み、怒りを露にする妖精は、此方に悪態を続ける。


「ガーゴイルは瞬殺するは、ミノちゃんは倒されるはで、何なのあんたらは?壁も壊しちゃって、本当に信じらんない!」


小さな小さな手で、俺をペタペタと叩くその妖精。


「わかったよ、先ずは叩かないでくれ。すまないって。」

「そんな平謝りで、納得すると思っているの?もう、こっちだって大変なのに、何て事をするのよ!」


ありゃ、尚更怒りが増したようだ。ならば、黙っている方が無難か?


「うりゃ!」


マリアが妖精にデコピンをした。あまりの痛みに悶絶する妖精。


「ぼ、暴力反対!」

「どの口が言うのよ!散々私達を襲ったくせに!」

「うっ!」


静かになる妖精に、マリアはまたデコピンをしようとする。


「やめて!わかった、わかりましたから許して!」

「なら良いわ。許してあげる。」


マリアが妖精を諌めた所で、俺は話を切り出す。


「俺はソーイチ。旅の者だ。こっちはマリアだ。」

「ペタ、よ。」


妖精はペタと言うらしい。その見た目は、お伽噺に出てくるそれであり、背中に四枚羽を背負っている。


「で、ペタは此処で何をしているんだ?」

「決まっているじゃない!迷宮の管理よ。」


迷宮管理?こいつが管理者か?


「迷宮妖精ですもの。管理者くらいやるわよ!」


迷宮妖精とか、色々と情報量が多いな。


「管理者って何をやるんだ?」

「そこから?まあ良いわ。管理者はね、迷宮を管理するのよ。あいた!」


またマリアがペタにデコピンをした。アホな答えに突っ込みをいれたのだろう。


「それで、どう管理するのよ。」


ペタの話をまとめると、ペタはこの迷宮の管理者であり、この迷宮で生きているようだ。

冒険者を招き入れ、それを養分にし、魔物を生成しているようだ。その死んだ冒険者の身体と命の一部をもらい、自身の養分にしているようだ。

しっかりとサイクルが出来ているこの迷宮で、悠々自適な生活を送っていたそうだ。


そこで、俺達の登場だ。迷宮を踏破し、ダンジョンマスタールームまで来る冒険者は今までになかったようで、焦っていたらしい。


「ミノちゃんは私の切り札なのに、変わりが効かないんだからね!どうしてくれるのよ!」


つまり、裏ボスは、この妖精ペタだった。


「それで、此処まで何をしに来たの?もしかして、迷宮を潰しに来たの?!」

「いや、そんな事はしない。ただ、気になって調べに来ただけだ。」

「そんな理由で此処まで来たの!本当に人間は信じらんない!」


またペチペチと叩くペタ。マリアがデコピンの構えをすると、俺の頭を盾に逃げた。


「あと、このキーボードだけど?」

「ああ、これ。前に人間と知り合った時に教えてもらったのよ。なかなか管理が楽になったわ。」


なるほど。その人間は転移者か転生者だな。前といっていたが、いつあったのかは、昔としか覚えていないようだ。


「それにしても、此処で一人は寂しいんじゃないの?」

「そんな事はないわ。他の妖精と繋がっているし、たまには外に出てるしね。これでも妖精だからね、姿は消せるのよ。」


と言って、ペタは姿を消す。光学迷彩のように消えたペタは、マリアにイタズラをしようとするが、鑑定眼を持つマリアには効かない。逆に返り討ちにあった。


「いーたーいー!」


おでこを押さえ、痛みに耐えるペタ。迷彩を解き、じたばたしている。


「んじゃ、これは返すよ。」


と言って、ミノタウロスの角を返す。


「触媒なんだろ?なら、これがあればまた作れるんじゃないのか?」

「え!いいの?」

「構わないよ。」


俺はその角を返す。満面の笑みを浮かべるペタは、角を持って小躍りを始めた。


「見直したわ!あなたいい人間ね!」

「調子のいい。」


マリアはジト眼になり、ペタを見る。


「さて、やることは終わったな。帰るか。」

「そう?もう帰るの?」

「ああ、暇になったらまた来る。」

「絶対に来なさいよね!次はもっと強いミノちゃんを作るんだから!」

「期待しているよ。」


そう言って手を振り、白の部家に戻る。


「おかえり。」

「ただいま。」


テラスが向かえてくれた。ビビはまだ寝ている。


ビビの疲労が回復するまでは、ここにいるか。


そう決めて、おればおもむろに櫛を作り始めた。







ビビが目覚めたのは、櫛を三個程作った頃だった。


「すみません。」

「いいよ。もう大丈夫かい?」

「はい、もう大丈夫です。」

「それじゃ、帰ろうか。」


そして、俺は帰路についた。



迷宮出口。外に出ると、暗い夜だった。


「こんな夜更けの帰還とはね。随分と頑張ったみたいだな。」

「ええ、今回は少しだけ奥に行きましたから。」

「そうか。この時間は詰所はやっていないからな。明日の朝に詰所で換金しろよ。」

「はい。わかりました。」


眠そうだが、愛想良く話す衛兵。


「さ、帰るか。」


俺は空き地に小屋を出して、ゆっくりと休んだ。






朝一番。テラスの拘束を解き、身体を起こす。そとに出て、一番に起きていたビビに挨拶をする。


「おはようビビ。」

「おはようございます。」

「さて、やるか。」


人目のつかない場所で鍛練を開始する。ビビは気を練りながらの型を始めた。


気の運用、発動はもうものにしたようだ。全身に広がる気が、身体を充実させ、赤いオーラを纏う。


黒狼爪の気の伝達は、上手くいかなかったのには、疑問をもったが、切羽詰まった時に出来たから、今後も出来ると励ました。


「ご飯よー。」


マリアが俺達に声をかける。


風呂で汗を流し、ご飯をいただく。これが幸せでならない。


「では、いただきます。」



しっかりと朝食を食べて、今日は何をするかを皆で話をした。


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