6-6 妖精ペタ
今回は短めです。
黒い部屋に出た。その部屋はファンタシーとはかけはなれた、近未来的な作りになっており、黒の壁に、赤いラインが走っていた。その中心には、大きな何かがある。赤いラインが集中し、天井と中心の何かを往復する流れをしていた。
「何、この部屋は?」
世界観が違うこの部屋に一歩入る。足場がまるでないので、空中歩行でその中心に向かう。マリアは抱き抱えた。
中心には、大きな水晶玉と、まさかのキーボードがあった。とても小さいが、間違いなくキーボードだ。
俺がそのキーボードを触ろうとする。
「やめろー!触るな!」
と声が聞こえた。子供のような声だ。
「誰だ?」
「それはこっちの台詞よ!」
目の前に現れたそれは、小さな小さな妖精であった。
★
「此処まで来るなんて信じらんない!」
腕を組み、怒りを露にする妖精は、此方に悪態を続ける。
「ガーゴイルは瞬殺するは、ミノちゃんは倒されるはで、何なのあんたらは?壁も壊しちゃって、本当に信じらんない!」
小さな小さな手で、俺をペタペタと叩くその妖精。
「わかったよ、先ずは叩かないでくれ。すまないって。」
「そんな平謝りで、納得すると思っているの?もう、こっちだって大変なのに、何て事をするのよ!」
ありゃ、尚更怒りが増したようだ。ならば、黙っている方が無難か?
「うりゃ!」
マリアが妖精にデコピンをした。あまりの痛みに悶絶する妖精。
「ぼ、暴力反対!」
「どの口が言うのよ!散々私達を襲ったくせに!」
「うっ!」
静かになる妖精に、マリアはまたデコピンをしようとする。
「やめて!わかった、わかりましたから許して!」
「なら良いわ。許してあげる。」
マリアが妖精を諌めた所で、俺は話を切り出す。
「俺はソーイチ。旅の者だ。こっちはマリアだ。」
「ペタ、よ。」
妖精はペタと言うらしい。その見た目は、お伽噺に出てくるそれであり、背中に四枚羽を背負っている。
「で、ペタは此処で何をしているんだ?」
「決まっているじゃない!迷宮の管理よ。」
迷宮管理?こいつが管理者か?
「迷宮妖精ですもの。管理者くらいやるわよ!」
迷宮妖精とか、色々と情報量が多いな。
「管理者って何をやるんだ?」
「そこから?まあ良いわ。管理者はね、迷宮を管理するのよ。あいた!」
またマリアがペタにデコピンをした。アホな答えに突っ込みをいれたのだろう。
「それで、どう管理するのよ。」
ペタの話をまとめると、ペタはこの迷宮の管理者であり、この迷宮で生きているようだ。
冒険者を招き入れ、それを養分にし、魔物を生成しているようだ。その死んだ冒険者の身体と命の一部をもらい、自身の養分にしているようだ。
しっかりとサイクルが出来ているこの迷宮で、悠々自適な生活を送っていたそうだ。
そこで、俺達の登場だ。迷宮を踏破し、ダンジョンマスタールームまで来る冒険者は今までになかったようで、焦っていたらしい。
「ミノちゃんは私の切り札なのに、変わりが効かないんだからね!どうしてくれるのよ!」
つまり、裏ボスは、この妖精ペタだった。
「それで、此処まで何をしに来たの?もしかして、迷宮を潰しに来たの?!」
「いや、そんな事はしない。ただ、気になって調べに来ただけだ。」
「そんな理由で此処まで来たの!本当に人間は信じらんない!」
またペチペチと叩くペタ。マリアがデコピンの構えをすると、俺の頭を盾に逃げた。
「あと、このキーボードだけど?」
「ああ、これ。前に人間と知り合った時に教えてもらったのよ。なかなか管理が楽になったわ。」
なるほど。その人間は転移者か転生者だな。前といっていたが、いつあったのかは、昔としか覚えていないようだ。
「それにしても、此処で一人は寂しいんじゃないの?」
「そんな事はないわ。他の妖精と繋がっているし、たまには外に出てるしね。これでも妖精だからね、姿は消せるのよ。」
と言って、ペタは姿を消す。光学迷彩のように消えたペタは、マリアにイタズラをしようとするが、鑑定眼を持つマリアには効かない。逆に返り討ちにあった。
「いーたーいー!」
おでこを押さえ、痛みに耐えるペタ。迷彩を解き、じたばたしている。
「んじゃ、これは返すよ。」
と言って、ミノタウロスの角を返す。
「触媒なんだろ?なら、これがあればまた作れるんじゃないのか?」
「え!いいの?」
「構わないよ。」
俺はその角を返す。満面の笑みを浮かべるペタは、角を持って小躍りを始めた。
「見直したわ!あなたいい人間ね!」
「調子のいい。」
マリアはジト眼になり、ペタを見る。
「さて、やることは終わったな。帰るか。」
「そう?もう帰るの?」
「ああ、暇になったらまた来る。」
「絶対に来なさいよね!次はもっと強いミノちゃんを作るんだから!」
「期待しているよ。」
そう言って手を振り、白の部家に戻る。
「おかえり。」
「ただいま。」
テラスが向かえてくれた。ビビはまだ寝ている。
ビビの疲労が回復するまでは、ここにいるか。
そう決めて、おればおもむろに櫛を作り始めた。
★
ビビが目覚めたのは、櫛を三個程作った頃だった。
「すみません。」
「いいよ。もう大丈夫かい?」
「はい、もう大丈夫です。」
「それじゃ、帰ろうか。」
そして、俺は帰路についた。
迷宮出口。外に出ると、暗い夜だった。
「こんな夜更けの帰還とはね。随分と頑張ったみたいだな。」
「ええ、今回は少しだけ奥に行きましたから。」
「そうか。この時間は詰所はやっていないからな。明日の朝に詰所で換金しろよ。」
「はい。わかりました。」
眠そうだが、愛想良く話す衛兵。
「さ、帰るか。」
俺は空き地に小屋を出して、ゆっくりと休んだ。
★
朝一番。テラスの拘束を解き、身体を起こす。そとに出て、一番に起きていたビビに挨拶をする。
「おはようビビ。」
「おはようございます。」
「さて、やるか。」
人目のつかない場所で鍛練を開始する。ビビは気を練りながらの型を始めた。
気の運用、発動はもうものにしたようだ。全身に広がる気が、身体を充実させ、赤いオーラを纏う。
黒狼爪の気の伝達は、上手くいかなかったのには、疑問をもったが、切羽詰まった時に出来たから、今後も出来ると励ました。
「ご飯よー。」
マリアが俺達に声をかける。
風呂で汗を流し、ご飯をいただく。これが幸せでならない。
「では、いただきます。」
しっかりと朝食を食べて、今日は何をするかを皆で話をした。




