6-2 ガウスの街
ようやく到着した街、都市ガウス。東の大陸の街だ。
到着早々だが、何処か空き地を見つけて小屋を出して、休みたい所だ。
馬車でゆっくりと見物をする。かなりの大きさがある街なのは感覚だがわかった。
そして、人種だ。獣人が多い。ウィズ大森林の出身者なのか、それともガウスの生まれかはわからないが、それだけ獣人の数が多かった。
犬、猫、兎、牛に馬もいた。中々に多彩な人種だ。妖精族もいるようで、ドワーフ、エルフ、グラスランナー、ホビット等だ。ヒトは数少なそうだが、いない訳ではない。
さて、先ずは拠点だ。それなりに馬車を走らせ、良い場所を探す。
見つけたのは、ガウスの街外れ、空き地が多い場所を見つけた。人通りもない。此処ならたぶん小屋を出しても大丈夫だろう。
無限保管から小屋を出す。久々にしっかりとした休息だ。レンとイトの厩舎も忘れない。
レンとイトの世話をする。今回この街に来るとき一番頑張ったのはこの二頭だ。しっかりと世話をしよう。
マリアは食事の準備。テラスは俺と一緒にレンとイトの世話だ。ビビは一応だが、回りの確認だ。
レンとイトに飼い葉を食べさせ、塩を舐めさせる。水も大量に飲ませる。
ブラシを入れ、マッサージをする。優しい眼のレンとイト。気持ちが良いのだろうな。
食事の準備が整うと同時に、ビビも見回りから戻った。
食事を頂き、休憩をする。一時の安らぎ。
さて、これからどうするか。俺達は話し合いを開始する。
ガウスの街をよく知らないので、ビビに話をきく。
ガウスの街は冒険者の街であり、迷宮が存在している、との事。
ビビの話では、その迷宮は地下に潜る種類であり、その踏破をする為に、冒険者が集まるようだ。東の大陸では、有名な話だという。
マリアは知らなかった。やはりだが、情報はドワーフ国で遮られている。
話を戻すが、迷宮があるのか。だから、武器防具の需要が多いのだな。ぶっちゃけ、武器防具は消耗品だ。修理は出来ても、使っていれば、いずれは壊れてしまう。だから需要が多い。
「この街は冒険者が多いですが、その分、治安も悪いでしょう。注意をした方が良いかもしれません。」
ビビの発言に皆が納得する。龍の道では、その冒険者をが盗賊紛いをやっていたからな。
「となると、レンとイトを世話する人物が欲しいな。」
「いえ、この小屋生活ではなく、宿屋生活にするべきじゃない?その方が安全よ。」
安全を考えたら確かにそうだな。金銭はゆとりあるし。
「確かにな。だが、ここより快適なのは期待出来ないしな。作業も出来ないし、デメリットが多い。」
小屋の快適さは説明要らずだ。俺の作業場も完備しているのだ。手放すには惜しい。
「ならば、レンとイトを預けるだけはどうですか?馬を扱う業者もいますし、その人に預ければどうでしょうか?」
んー、それはなんか嫌だな。なんとなくだが信用出来ない。レンとイトも良馬だ。盗まれる可能性もあるだろう。
「なら、ケルトに連なるヒト、貴族はいないかしら?そのヒトを頼る手もあるわね。」
「ナイス、マリア!それが良いかもしれないな。」
ここまで大きな街だ。ケルト家に支えるヒト、貴族がいてもおかしくはない。そのヒトを探そう。
先ずは、協力者探しだな。ビビを留守番に、その貴族を探す。
酒場で聞けば一発だった。この街の有力者の一人、ディル士爵の住み家を聞き出せた。幸先が良い。
ビビの元に戻り、レンとイトを連れて、ディル士爵の住む場所に向かう。末端とはいえ、貴族は貴族。稼いでいれば、何かと目立つのは明白だ。
ディル士爵の家は小さめだが、立派な建物であり、庭もある。これはやり手のようだ。
門番がいたが、ケルト侯爵の書状を見せると、直ぐ様に開けてくれた。
ディル士爵の邸宅、応接間。ディル士爵は慌てて此方を挨拶をする。
「私がディル士爵であります。お見知りおきを。」
「私は、ケルト侯爵の観光大使のアオバ男爵だ。ディル士爵よ、誠に急だが、世話になるぞ。」
「は、はい!」
ディル士爵は俺達の来訪に驚きを隠せていない。執事やメイドも冷や汗をかいている。
俺は男爵だが、伯爵の権限がある。その書状を見せ、更に驚愕するディル士爵。
「貴様に頼むのは二つだ。我が馬を預かる事。貴様の所有地の一角を貸す事だ。出来るか?」
「はい!馬は畏まりました。二つ目の所有地とは?」
「大した事ではない。空き地を貸して欲しいのだ。やるべき事があってな。なに、貴様の邪魔はせぬ。存分にその手腕を発揮するが良い。」
慣れない口調だが、今は致し方ない。
「わ、わかりました。私の管轄区に空き地が御座いますので、そこをお使い下さいませ。」
「うむ。」
「それで、お聞きしたいのですが、宜しいですか?」
「ん、なんだ?」
「男爵様はこの地にどの様な用件でお越しになられたのですか?」
「観光大使だからな。観光を兼ねた視察だ。」
その言葉に、ディル士爵は脂汗を滴る。嘘がつけないのか?まあいいさ。余程悪どい事をしていない限りは見逃そう。
「我が大事な馬達を任せるぞ!」
「は、はい!この命に変えまして!」
ディル士爵と執事達が一斉に礼をする。軽く脅したが、まあ、悪い事はしないと期待しよう。
レンとイトに、また置いて行くの?という眼をされてしまった。申し訳ない。街で馬との同行は何かと制限が出来てしまうからな。これは仕方ない処置だ。たまに顔を見せるから元気でいてくれよ。
レンとイトと別れ、俺達はディルの所有地である空き地に向かった。大通りの外れ、人通りもまばらな場所だ。此処なら小屋を出しても、迷惑にはならないだろう。
無限保管から、小屋を出す。街の風景とはミスマッチだが、構わないだろう。
「さて、今日は休んで明日、観光しようか。」
「はーい。」
「わかったわ。」
テラスとマリアが了承する。だが、ビビは違った。
「あのソーイチ様にお願いがあります。」
「どうした?ビビ?」
「あの、私は迷宮に潜りたいです。」
ん?どうしてだろう?
「今までの成果を、実践したいのです。」
「なら、明日行こうか?観光はまた後にしても良いし。皆はそれで良いかい?」
「いいよー。」
「迷宮か・・・。ま、良いですけど。」
マリアの言い方に引っ掛かりがあったが、了承したので、明日は迷宮に潜る事にした。
「ありがとうございます!」
ビビは深く礼をする。
「とりあえず、今日は休もう。疲れを残したら、明日に支障が出るからな。」
「はい、わかりました。」
ビビも今日は休む事を了承する。その眼は、明日の迷宮に向けられているだろう。
食事をとり、風呂に入り、ゆっくりと休んだ。テラスに求められたが、断腸の思いで断った。膨れ面のテラスは可愛かった。
★
朝になり、いつものように鍛練をする。気合いが入っているビビは、発汗が半端なかった。そんなにやると、本番疲れるんじゃないかと心配になったが、ビビ自身が求めた事だ。好きにやらせよう。
マリアもまた、水鉄砲の練習だ。命中率も悪くない。これなら援護も出来るだろう。
朝ご飯を食べて出発だ。小屋を無限保管に入れ、迷宮の方に向かう。小屋はもしかしたら、迷宮で使う可能性も考慮してだ。
さて、迷宮は何処にあるのか。
「迷宮の入り口は街の真ん中にあります。」
ビビが言う。先程からそわそわしており、落ち着かない。そう言えば、迷宮の事は何も知らないな。情報がなくて、突入しても大丈夫だろうか?
「慎重に侵入しようか。テラスやマリアが怪我をしたら元も子もない。」
戦闘には俺とビビがいれば十分だろうが、テラスやマリアは非戦闘員のようなものだ。無茶をする訳にはいかない。
「私が先陣を切りますので、ソーイチ様は見守っていて下さい。」
ビビはやる気だ。これは一人で迷宮を踏破しようとする気概を感じざるを得ない。
「ビビ、逸るな。落ち着け。」
「大丈夫です。落ち着いています。」
これは駄目だな。先走りしそうな気配を醸し出している。
黒龍以来、なんかビビの様子が変だ。強さの求め方が異常になった。ビビの焦りを感じてならない。何事もなければいいのだが。
「迷宮に入るのには、何か必要な物はあるかい?」
「そうですね。冒険者登録が必要です。私は入れませんでしたから。」
これは盲点だな。フリーパスではないのか。
「登録をしなかったのか?」
「はい。お金がありませんでしたので、登録出来ませんでした。」
村を飛び出したビビの事を思い出す。着の身着のままの逃亡だったのかもしれないしな。
「それにしても、よく西の大陸に行けたな。金がなかったのだろう?」
「ちょうどこの街に来ていたガストンの護衛を引き受けましたから。」
なるほどね。正式ではなく、裏の取引をしたのか。金銭面は安くなるだろうが、両者の利をとったのだな。
「なら、先ずは登録が先だな。全員必要なのか?」
「登録だけでしたら、全員でしょう。確認をしていましたから。」
そうか。面倒だが、やらなくちゃいけないようだ。
冒険者ギルドに向かおう。先ずは登録からだ。
★
簡潔に言うと、登録は簡単に終わった。月々の登録料銀貨一枚を四人分支払う。皆が最低のFランクからのスタートだ。そしてカードをもらう。これが身分証明になる。まあ、ランクには興味がないので、ランクアップは目指さない。
序でに、パーティー登録も同時に行う。これは無料だ。リーダーを俺に、テラス、ビビ、マリアを登録する。パーティー名は銀の翼にした。
「うん、かっこいい。」
「良いですね。」
「あんたにしてはマトモね。」
俺のネーミングセンスはアレだが、皆から好評を得たので満更でもない。
さて、件の迷宮アタックを開始する。
迷宮入り口には、人が沢山いる。皆が冒険者なのだろうか?装備が充実しているから、そうなのだろう。
列の最後尾に並び、順番を待つ。迷宮入り口には、衛兵がいた。冒険者カードを確認をしていた。
俺達もカードを見せて、迷宮の中に入ろうとする。
「見ない顔だな。新人か?」
「そうですね。つい先日にこの街に来ました。」
「そうか。Fランクだから、無理はするなよ。中は危険だからな。」
「はい、わかりました。」
そんなわけで、初アタックを開始する。情報も何もないが、やるだけはやってみよう。
地下に続く長い階段を、俺達は降っていった。




