5-12 ドワーフ国の平穏な日々 その2
朝から濃密なキスで起こされる。それはテラスだった。いつもなら最後に起きるテラスだが、今日は一番に目が覚めたのだろう。
目眩がする位に欲に溺れそうになる。抱きたい気持ちを抑え、テラスの頭を撫でる。
「おはよう。」
「うん、おはよう。」
また、キスをする。唇を合わせ、舌を絡める。朝だからか、それとも欲情なのか、俺は元気になる下半身を感じた。
「えへへ。」
テラスが起きる時は裸なのはいつもだ。俺のズボンを引き下ろし、そのままテラスの中に迎え入れられる。
その後は、そのまま色欲に溺れた。ビビも目を覚まし、そのまま参加する。マリアも起きているだろう。だから、引き寄せた。
四人で欲にまみれた。
★
「もう、朝っぱらから欲情しないでよね!」
マリアが風呂で汗を流す。俺達も一緒だ。
「えへへー、すごかった。」
「はい、幸せな時間でした。」
テラスとビビは反芻をしている。その表情は赤く惚けている。
「マリアだって。」
「うるさい!馬鹿!」
怒られた。ミミまで赤いマリアがそっぽを向く。
「兎に角、今日からの予定は、私とビビさんで、一週間は情報を集める。ソーイチさんとテラスちゃんは製作をする。良いわね。」
「ああ、そっちは任せた。」
「はーい。」
「わかりました。」
綺麗に身支度をするマリア。今日の格好は、動きやすい服装にしている。ビビも露出は少ない格好だ。
俺も、いつもの繋ぎに着替え、作業場に向かう。出かけるマリアとビビを送るのも忘れない。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
二人にキスをして、送る。
さて、俺は作業だ。いつの間にかに着替えたテラスと作業場に潜った。
★
さて、何を作ろうか。
掘り出した銀や鉄をインゴットにするにはどうするか?
創造を使う。銀と他を分離させれば、すぐにインゴットになった。鉄も同じだ。
その間に、テラスには、炉の火入れをお願いした。いつも見ていたからか、手際良く作業するテラス。だが、ふいごだけは、俺がやった。危ないからね。
簡単なアクセサリーは、指輪か、ピアスだ。この世界にピアスの習慣があるかはわからないので、製作は止めた。
指輪を作るのだが、曲げる方法と、鋳造がある。俺は前者の曲げる方法を選んだ。
チートを使えば簡単だから、が理由だ。
そんなわけで、銀を棒状に加工し、綺麗に円にし、指輪を作る。
だが、このままでは簡素過ぎる指輪だ。何かを付与したい。
そこで、宝石を着ける事にした。本来ならば嵌め込み部分を作り、そこに当てはめる。だが、俺はチートの能力を使い、指輪に小さなへこみを作り、そこに宝石を嵌め着けた。
これを数個作った。デザインは統一なくバラバラに仕立て上げた。無限保管の出し入れもして、完成させた。
一個だけ、鋳造のサークレットも作った。このデザインはテラスのお絵かきを参考にした。
宝石は使わず、銀のみ。だが、それが中々に良い具合だ。
夕方になり、ご飯の準備をする。テラスもお手伝いだ。
食事が完成する手前にマリア達が帰ってきた。マリアはへとへとになっていた。
兎に角、ご飯を食べながら話を聞こう。
「いただきます。」
さて、マリア達はどうだったのか。
「やっぱり良い場所は取られるわね。それに、常連が独占しているような気もするわ。見つけた場所は人が集まる場所からは外れているけど、大丈夫よね?」
「ああ、心配ない。繁盛が目的ではないからな。それで、今日作った指輪とサークレットだ。」
俺はマリアに製作物を差し出す。
「相変わらず良い腕ね。これくらいなら、売り物として扱えるわ。でも、このサークレットはかなりの高値になるわね。誰に売るの?」
「通りかかった貴族にでも買って貰うか?」
「馬鹿ね。そんな人いないわよ。」
「だよな。まあ、金持ちの商人にでも買って貰うさ。」
「呑気ね。まあ良いわ。これは看板商品にしましょう。」
と言って、指輪とサークレットを俺に返す。それを無限保管にしまう。
「さて、次は何を作るかだけど。」
「銀は余っているの?」
「いや、もう無い。そんなには取れなかったからな。」
「鉄は?」
「あるにはあるけど、やっぱり調理器具を作るのか?」
「そうね。鉄はそれしか使い道がないものね。何かしたの?」
「アクセサリーの隣に調理器具と考えたら、本当に雑貨屋になりそうだな、と思ってな。」
「見映えが悪い?」
「そうだな。それなら、アクセサリー一本の方が見映えが良いんじゃないか?」
「そうね。ならそうしましょうか。」
「良いのか?」
「さっきあなたが言ったじゃない。繁盛が目当てではないって。なら、それで良いのよ。これらが全部売れたら、黒字は間違いないんだから。無理せずやりましょ。」
「そうだな。」
なら、これからどうするかだ。銀はもう無い。また掘り出すか?
「ガベラから買い取りは如何ですか?」
珍しくビビが意見を出す。
「掘り出す労力を考えたら、その方が良いかもしれないな。」
「そうね。その方が危険が無くて良いわ。」
国外に出るのは、マリアにとっては流石に危険だからな。
「後は価格だな。高いと意味が無いよな?」
「大丈夫じゃない?露天や店舗の相場を見たけど、大した事はなかったわ。」
「だがな、ガベラのインゴットは質が違うぞ?」
「確かにそうね。とりあえずは買い取ってみたら?」
「そうするか。」
案ずるより、と言うしな。とりあえず明日訪ねて見よう。
さて、食事も済んだ。ふろに入って明日に備えよう。
あ、今夜はしませんからね。朝にしたから。
テラスさん、頬を膨らませても駄目です。可愛いけど駄目です。
★
朝一番、ベットで寝ていたテラスの拘束を解き、外にでる。ビビがいつものように鍛練をしていた。
「おはよう、ビビ。」
「おはようございます。ソーイチ様。」
礼儀正しいのもいつもの事だ。
「さ、やるか。」
「はい。」
そう言って、二人で型をする。汗を流し、身体の覚醒を促す。
俺は鍛練で追加した木刀の素振りをする。素人ではあるが、中々に素早いと思う。気休めなのはわかっている。だが、折角手に入れたミスリルの刀が死蔵するのは勿体ないからだ。鍛練をしていれば、いずれ役に立つ日も来るだろう。
「おはよう。」
マリアも起き出し、水鉄砲の訓練を開始した。これも日常になっている。威力は小さいが、中々に照準は合ってきたようだ。的に当たる命中率が上がっている。
「ご飯にしましょうか。」
マリアが鍛練を抜け出し、料理を開始する。食材はもう渡してある。それを美味しい食事に変化させる。
「風呂で汗を流すか。」
「はい。」
俺とビビは風呂に入る。そうすると、テラスも入ってくるのもいつもの事だ。
「おはよう、テラス。」
「おはよー。」
ふろに浮かぶテラス。寝汗を流して、さっぱりとしたのか、ご機嫌になる。
朝食も欠かさない。一日の原動力だ。
では、
「いただきます。」
★
今回も二手に別れる。マリアとビビは露天の調査の続行だ。俺とテラスはガベラの所をお邪魔して、銀のインゴットを手に入れる事だ。
「それじゃあ行こうか。」
二手に別れて行動した。
ガベラの家に訪れる。相変わらず、家の外まで金属を叩く音が響く。
「ガベラはいるかい?」
「はい、あ、ソーイチ様。今日は何の御用ですか?」
「銀のインゴットを購入したくてね。」
「そうですか。では、御用意致します。どのくらい御用意致しますか?」
「インゴット一つで構いません。そこまで必要ではないので。」
インゴットは大体一キロ位が相場なのは、マリアから聞いている。金額も大体金貨一枚より高い位とわかっている。ガベラが高く吹っ掛ける事はないとは思うが、とりあえずアドバイスは頂いていた。
「よう!また来たか!」
「元気ですか?」
「当たり前だ!この五十年風邪もひいてないわ!」
がはは!と笑うガベラ。元気そうで何よりだ。
「んで、うちの銀で何をするんだ?」
「商売をしようと思ってな。その材料の買い出しだ。」
「そうか。何を作るんだ?」
「アクセサリーだ。」
「アクセサリーだと?また軟弱な物を作るな!」
あれ?なんか反応が悪いな。
「うちの大将は根っからの武器職人ですから。」
受付嬢がフォローをする。なるほど、分野が違うから、気を悪くしたのかもしれないな。
「お前さんなら、良い武器職人になれるだろうに。貴族なんか辞めて、とっととうちに来い。鍛えてやるぞ。」
「それは勘弁だ。俺にも目的があるからな。」
「そうかい。で、何故貴族様が商人の真似をするんだ?」
「正直、懐が寂しくなってきたからな。少しは潤わせたい。」
「そうだったか。だが何故アクセサリーだ?お前さんの武器なら引く手あまたじゃないか。」
「作った武器を適切に使われるなら良いが、殺しに使われたら嫌だからな。武器は人を選べない。」
これは武にも繋がる。護身拳法も、使い方次第では人を殺す技術になる。それで護身とは、と言い難い事実もあるのだ。所詮は使う人が決める事なのだ。人を守る術か?人を殺す術か?そういう事だ。
それに俺が作る武器は性能が良すぎる。出回るのは争いの火種になりかねない。ならば、武器は作らず、防具の方が良い。だけど、防具の作成には、時間も労力も桁が違う。安定した収入にはなりかねない。
「わかった。それなら話は別だな。」
と言って、机に銀のインゴットを置く。
「金貨一枚。それで良い。」
「良いのか?相場より安いぞ。」
「その代わりだが、何か作ったらうちに卸して欲しい。何でも構わん。適正の値段で買い取らせて貰う。」
その時、銀のサークレットを思い出したので、それを無限保管から出す。
「とりあえず、こういうのを作ったが?」
「ほう?どれどれ?」
ガベラがサークレットを見る。年の功、鑑定力もありそうだ。
「良い物だな。値段は?」
「マリアからは、金貨一枚としている。売り物ではなく、見せる物として飾る予定だった。」
「よし!ならばこのサークレットとインゴットを交換だ。それならば文句はあるまい。金貨一枚する物を買う奴は限られる。うちは顧客がいるからな。これを高額で買う奴もいるだろう。」
それなら、こちらも願ったりだ。死蔵させるよりはよっぽど良い。必要ならまた作れば良いのだから。
「もしかしたら、何かを依頼をするかもしれん。その時はよろしく頼む。」
「こちらこそ。」
ガベラは仲介者をやってくれるようだ。ならば、高額になる商品はガベラに売ろう。
「お互い、良い商売をしよう。」
そう言って握手をする。銀のインゴットを無限保管に入れ、ガベラの家を出る。
「よかったね、ソーイチ。」
「ああ、そうだな。」
銀のインゴットも手に入ったし、早速作成に入ろう。指輪に腕輪、イヤリングにネックレス、色々と作れそうだ。
俺は足取り軽く小屋に帰った。
ガベラの家、応接間。
「どういう風の吹き回しですか?」
「このサークレットの出来に感心してな。この技術ならば、貴族や大商人に高く買い取らせてやれると思ってな。」
「それで、そんなに太っ腹だとは思いましたが、裏はあったのですね。」
「これは一品物として、オークションにしても良い値がつくだろう。今から楽しみだぜ。」
「親方、顔が怖いですよ。」
「それは生まれつきだ。」
「さて、作業に戻る。これは大切に保管しておけ。」
「はい、わかりました。」
ガベラは作業場に向かい、また怒声を放つ。それをやれやれといった感じで、受付嬢は見守った。




