5-9 ビビの告白
朝になる。今日は早めの起床だ。隣にはテラスとビビとマリアがいる。
テラスの拘束を解き、身体を起こすと、ビビも目覚めた。
「おはよう。」
「おはようございます。ソーイチ様。」
ゆっくりとベッドから出て、着替える。いつもなら鍛練の型をやるのだが、生憎今日は城の中だ。テラスとマリアを置いてはいけない。なので、ゆっくりとだが、ソファーに座り目を覚まさせる。
「何かお飲みになりますか?」
「ありがとう。水をもらえるかい。」
そう言って、乾燥した喉を潤す。身体に染み込むように水を流し込んだ。
「ソーイチ様。お話があります。」
「うん。」
決意に満ちたビビの表情に、俺も真剣になる。
「私が村を出たのは話しましたね。」
「ああ。一番強い男を倒したから、だったな。」
「はい。私は弱い男の子供は作りたくありませんでした。」
確か、ビビの村は男尊女卑が激しかったらしいからな。ビビは強いが、文化には勝てなかったのだろう。
「そして、私は忌み子です。」
「それは、どういう意味だい?」
「見た目が、ヒト寄りなのです。私の姿は、耳と尻尾だけが狼人なのです。」
「それだけで、忌み子扱いか?」
「はい。狼人の自尊心に皆が反応するからです。」
「ビビの父か母はヒトだったのか?」
「はい。母がヒト、でした。家族となり、皆から離れて生活をしていました。」
確か家族は弱い者の証明だったか。確かに、その文化に合わせたら、ヒトは弱い部類だろうな。
「その母は心労で亡くなり、父は狩りの途中で・・・。私は一人になりました。」
「そうだったのか。」
「そして私は一人で森で生活をしていました。メゴに会うまでは。」
「狩りの師匠だったか?」
「はい。彼からは色々な事を学びました。」
ビビからしたら、育ての親だな。
「大人になり、私は村に戻る事になりました。新たな村長が私に目をつけたからです。」
「忌み子なのにか?」
「はい。何故かはわかりません。ですが、私は母を苦しめた村が嫌いでした。新たな村長の言い付けは無視をし続けました。」
「それで?」
「ある時、決闘になりました。勝ったものが、全てを手にする、という条件で。」
「それで、ビビが勝った。」
「はい。ですが、それは誰も認めませんでした。村の大多数から襲われそうになりました。」
「多勢に無勢か。」
「はい。昔の私にははね除ける実力がありませんでした。だから、私は逃げました。初めて逃げたのです。」
「それは仕方ない。」
「仕方ない、では済まないのです。私は敗けを認めてしまったからです。」
逃げは敗けになるのか?ビビの村ではそうなのかもしれないな。
「私は帰るべき故郷はもうありません。ここしか、ソーイチ様のお側しか、帰る場所はありません。村に帰れば、ソーイチ様にご迷惑になります。それが気がかりでなりません。」
「いや、よく話してくれたね。ありがとう。そうだよ。ここがビビの帰る場所さ。」
「はい、ありがとうございます。」
「でも、忘れ物はないのかい?遺品とかはそのままなんじゃないのか?」
「必要、ありません。もう処分されていると思いますから。」
「なら、気がかりはないのか?」
「ありません。」
「後悔は?」
「ソーイチ様?何が言いたいのですか?」
「なに、敗けたままでは悔しくないのかな、と思ってな。俺ならやり返すから。」
「・・・、悔しいです。」
「じゃあ、見返そうか。」
「ですが、ご迷惑になります。」
「良いんだよ。ビビの為なら、何だってするさ。村の人全員を敵に回しても、ビビは強いと証明したいのさ。これは俺の我が儘だ。」
「ソーイチ様・・・。」
「それで、皆はどうだい?聞いているんだろ?」
「あれ、ばれた?」
「えへへ。」
マリアとテラスも起きて、この話を聞いていた。
「そうね、多勢に無勢の卑怯者には、やり返さないとね。」
「ビビはビビのままがいいよ。」
「だ、そうだ。皆はビビの事を応援しているよ。」
「あ、ありがとうございます。」
目を潤すビビ。テラスがビビを抱きしめる。
「これで、良かったのかしら?」
マリアが語りかける。
「これは単なる自己満さ。だが、必要な事でもある。」
「本音は?」
「ビビを卑怯なまねで襲う奴はぶっ倒す!」
「はいはい。」
さて、方針は決まった。次はビビの故郷に喧嘩を売りに行く。物騒だが、それで構わない。ビビにもちゃんとした決別になるだろう。
「それまでに、自衛は必要かな?」
「いや、そこは守ってよ!」
笑顔になるビビに、俺達も笑顔になった。
さて、と。
「そろそろ朝食だろうから、テラスとマリアは着替えなさい。執事が部屋の外で待ってるよ。」
気配がしたからな。いや、わざとか?まあいいや。
テラスとマリアは着替えると、ムキムキの執事が部屋に入る。
「朝食のお時間です。」
「ありがとう。いただくよ。」
俺達は元気に朝食を食べた。
★
龍の道が開通するまでは、この国を観光する事になる。そういえば、ガベラに完成品を見せなきゃならない筈だった。
城を出て、小屋に戻り、そのまま作業に入る。鞘や鍔のデザインをマリアに任せる。その間に、俺は柄の製作にはいった。
テラスとビビは勉強だ。最近疎かになっていたので、しっかりと勉強をしてもらう。
マリアのデザインが完成したので、そのままその形を真似る。
豪華さのない、シンプルなデザイン。機能重視との事だ。
簡単なデザインだったので、鞘は簡単に出来た。鍔は金属なので、そんな簡単には出来ない。ミスリルをもらわないといけなかったので、ガベラの所に行き、少しだけ分けてもらった。
完成した刀を無限保管に出し入れして、完全に完成した。俺には刀は不必要だ。使ったことがない。剣豪ではないし。宝の持ち腐れになるだろう。まあいい。完成した刀を手に、もう一度ガベラの所にお邪魔した。
「遂に出来たか。どれ、見せてみろ。」
「はい、これです。」
俺が作った刀を凝視するガベラ。柄を握り、ささっと振るう。
「業物だな。あれからまた手を加えたのか?」
無限保管に入れたからな。そうなるか。
「まあいい。良いものを見せてもらった。こいつはお前の物だ。大切にしろよ。」
と言って、刀を返した。
「ですが、ミスリルの代金を払っていませんが?」
「構わん。持っていけ!」
豪快な人だな。いや、ドワーフか。何にせよ、これは売れないからな。その方が良い。
「それで、お前さんはこれからどうするんだ?うちで働くなら大歓迎だが。」
「いえ、龍の道が開通したら、東の大陸に向かいます。」
「そうかい。何かと向こうは物騒だ。気をつけて行くんだぞ。」
「はい、わかりました。」
ガベラの家を後にし、また小屋に戻る。もう時間も遅い。今日の行動は終わりにしよう。
マリアの料理は野菜が中心だった。
「肉ばかりは駄目よ。野菜も食べなくちゃ。」
ビビの悲しそうな目。だが、肉ばかりは駄目だ。しっかりと野菜も食べよう。
お風呂に入り、いっぱい愛して、今日は寝る。柔らかい感触がたまらない。
では、おやすみなさい。




