5-7 国家鍛治師
あれから10日経過した。身体も回復し、医師の完治のお墨付きをもらった。王子はまだまだ回復していないが、快方には向かっているらしい。早く完治してもらいたいものだ。
国王も俺の完治に喜んでくれた。
「完治したようだな。息子も完治に向かっている。貴様のおかげだ。」
「早い王子様の回復をお祈りします。」
「それで、貴様達はこれからどうするのだ?」
「はい。色々ありましたが、この国を観光しようと思います。」
「観光。それは何故だ?」
「はい。折角のドワーフ国に訪れたのです。鍛治を見てみたいと思っておりました。」
そう。旅の目的は、ドワーフの鍛治をみる事だ。出来るなら、その技術を見て、勉強したい。
「ふっ、珍しく、それでいて殊勝な心掛けだ。良いだろう、国家鍛治師の紹介状を書いてやる。」
「よろしいのですか?」
「構わん。」
国家鍛治師か。大物だよね。これは期待できる。
「では、ありがたく頂戴致します。」
「今から書く。ここで待っているが良い。」
「はい、畏まりました。」
国王が退室し、数分。ムキムキの執事が訪ねてきた。
「王より仰せつかりました。此方をどうぞ。」
それは書簡だった。これが案内状なのだろう。ありがたく頂戴する。
「いつ出発をなさるのですか?」
「今から向かおうかと思います。それで、国家鍛治師の仕事先はどちらですか?」
「はい。城を出まして東にあります大きな屋敷です。そこに国家鍛治師のガベラがおります。」
「ガベラね。わかった。さあ行こうか。」
「うん。」
「はい。」
「しょうがないわね。」
皆一緒に出発する。城外までは、ムキムキの執事が見送ってくれた。
そうだ。折角だから、ガストンも誘おう。国家鍛治師に会えるのだから、喜ぶかもしれない。
俺は先ず、ガストンの家に向かった。
★
「ガベラの親方の元に向かうだと!」
「親方なのか?それで、どうだ一緒に。」
「勘弁してくれ。あの親方の前に立つなんて、まっぴら御免だ。」
あら、意外な反応だな。ここは喜ぶと思っていたんだがな。
「親方に会うなら覚悟しておけよ。あの人は厳しいぞ。」
なるほど。言葉を感じるに、職人気質の頑固者か。なら注意は必要かな。
俺はガストンと別れ、ガベラの元に向かう。城の東側と聞いていた。
そこに向かうと、大きな煙突を数本携えた家に到着する。その大きさと異質さに、少しだけ驚いてしまった。
ここかな?とりあえず訪ねてみよう。
扉をノックする。声もかけた。だが、反応はない。煙突から煙は出ているから、中に人はいる。
すると、ドアが開いた。女性のドワーフのようだ。
「どちら様?」
「ソーイチと言います。国家鍛治師のガベラに会いに来ました。これが国王様の紹介状です。」
「こ、国王様からですか!はい、すぐに確認しますので、中にお入り下さい。」
「わかりました。」
中に通される俺達。客間に通され待ちされる。この部屋にいても、鍛治の音が聞こえるのだから、かなりの大音量で仕事をしているのだろう。
そうこうしていると、女性のドワーフが戻ってきた。
「あの、よろしいですか?」
「はい、構いませんが。」
「今ですね、手が放せない状態でして、見学なら好きにしろ、と言伝てをされたのですが、いかがしますか?」
「なら、そうさせていただきます。案内をお願いしても良いですか?」
「構いません。どうぞ、此方に。」
と、女性のドワーフの案内で、作業場に案内された。
広い作業場。そこは鉄火場の如く、複数のドワーフが作業をしていた。インゴットの作成から、鍛造、研磨、ありとあらゆる作業をしていた。
「しっかりやらんかい!」
「へい!親方!」
この大音量の作業場にも負けない位の怒声が聞こえた。その声の主は、小さな身体に合わない筋肉隆々の体つき。長い髭を携えた、いかにもドワーフを体現している人がいた。
回りのドワーフも身体に合わない筋肉で、身体よりも大きな金槌を振るっていた。
なんというか、血が騒ぐね。
前の世界では金属加工師をやっていたんだ。この作業を見て何も感じない訳がない。
この技術を吸収したい、と思うのは当然だ。
何となくだが、視線を感じる。やはり、作業場に余所者が来れば、邪魔をしてしまうか。だが、
「余所見をすんじゃねぇ!」
「へい!親方!」
この一言により、視線は霧散する。
この作業場の主たる、ガベラが此方を見る。そして此方にやってきた。
何やらガベラの視線が痛い。此方を凝視する。
「お前が国王様の紹介者か。」
「はい、名はソーイチと言います。妻のテラスにビビにマリアです。」
「で、この場所に何の用だ?」
無骨に答えるガベラ。腕を組み、俺を品定めするかのように見ている。
「ドワーフの金属加工の技を見たくて来ました。」
「そうかい。貴様はやったことがあるのか?」
「はい、まだまだ未熟者ですが、習得しております。」
「そうかい。じゃ、見せてみろ。」
は?急に何を言ってんの?手招きしているし。
「いってらっしゃい。」
「ソーイチ様の実力を知りたいのですね。」
「頑張れー。(棒)」
マリアは完全に他人事だな。まあ、いいや。何かを得られるかもしれないし、やってみよう。
「そうだな、剣を打ってみろ。金属はミスリルだ。」
「お、親方!いくらなんでも、素人にミスリルは?」
「喧しい!いいか、初手のタイミングだけ教えてやる。」
「は、はい。」
俺はミスリルを手にする。見た目は銀、いや、白金に近いか?渡された金槌で、ミスリルのインゴットを叩く。
集中してその音を聞く。キーンという音が響く。だが、何というか、違和感を感じた。初めて触る金属なのにだ。
俺は首を傾げた。それを見たガベラがインゴットを手にし、同じように、金槌で叩く。
キーンの音が響くが、やはり違和感を感じた。それはガベラも同じようで、顔色が赤くなる。
「誰だ!こんな駄物を作った奴は!」
やはりというか、このインゴットは不純物が混じっていたようだ。
「す、すいません!」
「別のを持ってこい!ミスリルだぞ!」
「へ、へい!」
そう言って、弟子の一人が新たなミスリルのインゴットを持ってきた。金槌で叩く。澄みきった金属の音が響く。これはかなりの上物だろう。
「おい、あいつは何だ?」
「耳がいいのか?駄物を一発で見抜きやがった。」
「いや、それだけじゃないだろ。」
何やら、他の弟子も俺に視線を送る。
ミスリルのインゴットを炉に入れる。とんでもなく大きな炉であり、赤々と熱が伝わるのがわかる。どこまで熱すれば良いのかわからないので、集中して、インゴットを見る。
「今だ!」
俺はミスリルのインゴットを炉から取り出し、金槌で叩く。響く音はない。鈍い音だが、確かな一撃を感じさせた。
「お、おいおい。」
「何なんだあいつは?」
数回叩き、また炉に入れる。炉から離すタイミングは掴んだ。後は叩いて変形させて、湯に浸け、また炉に戻す。そして刀身を作れば良い。
俺は夢中でやった。集中し、時間を忘れ、作業に没頭した。
実際、刀には波紋をわざと作り、強度を上げる。だが、これはミスリル。鉄ではない。なので、波紋は作らない直刃、片刃の刀を作った。
本来ならば刀を鍛造するならば、折り返しが必要だが、俺はわざとしなかった。未知の金属であるミスリル。鉄とは違うからだ。
どのくらいの時間が経っただろうか。半日は経過しただろうか。いやそれ以上か?俺はインゴットから刀を作った。
確認し、出来映えを見る。
うん。俺にしては上等だな。後は研磨をすれば完成だ。
俺は出来上がった刀をガベラに渡す。
「変わった形だな。」
と言って、刀を俺に渡した。
「研磨は出来るか?」
「はい、やります。」
そう言って、刀を受け取り、俺用の黒石の砥石を取り出す。
歪な形を綺麗にするのは、時間がかかる。黒石の砥石でも簡単には終わらないだろう。
俺は丹念に研磨を開始した。でこぼこを綺麗にするために。刃を作る。何でも切れるように。
俺の砥石はチートアイテム。普通なら何日もかかる作業だが、六時間程で完成までこぎ着けた。
「出来ました。」
「ふむ。」
回りは騒然としている。弟子達は作業を止め、ずっと此方を見ていたのだろう。途中からは何も聞こえなかったし、視線も気にしていなかった。いや、わからない位に集中していた。
「良い腕だ。」
ガベラのその言葉に、回りは騒ぎになった。
「お、親方が誉めた!」
「ありえねぇ!」
「何者だ!あいつは!」
騒然とする回り。
「これは武器か?それとも飾りか?」
「武器として作りましたが?」
「そうかい。これで完成か?」
「いえ、後は鍔と柄、鞘を作って完成ですね。」
「そうかい。なら、今日はもういい。」
「はい、わかりました。」
俺はガベラに礼をする。
「良し!酒を持ってこい!今日は機嫌が良い!ありったけを持ってこい!」
その言葉に、回りが歓声を上げる。肩を叩かれ、背中を叩かれ、口々に俺を誉める弟子達。
その日の夜は大宴会になった。
★
ドワーフは酒豪である。強い酒も何のそのと飲み続ける。火酒を飲まされた時は、一瞬だが気を失いそうになった。
つまみも肉がメインであり、とても旨かった。ビビの食欲に回りが刺激されたのか、大食い対決が始まっていた。
テラスは相変わらずだが、歌を歌い、場を和やかにする。マリアはというと、酒に潰れて眠っていた。俺を膝枕にして。
「名を聞いていなかった。何という?」
「ソーイチです。」
「あんたは良い腕をしている。ヒトが勿体ない位には。」
「いえいえ、まだまだ未熟者です。上れるならまだまだ上りたいですね。」
「その向上心も気に入った!さあ、どんどんと飲め。今日は帰さんからな!」
といって、強い酒を飲まされ続けた。
気がついたら朝になっていた。
「野郎共!いつまでも寝ていやがるんだ!とっとと起きて作業しやがれ!」
「へ、へい!」
二日酔いの頭に響くその声に、俺は目覚める。テラス達は俺にもたれながら寝ていた。
さて、起きますか。
痛い頭をおさえ、身体を起こす。気がつくと、弟子達も二日酔いなのか、顔をしかめて頭を抱えていた。
テラス達を起こし、一旦作業場を後にする。完成したら、見せる約束をして。
外の空気がうまい。今日はテラス達とゆっくりと過ごそう。
「マリア、大丈夫か?」
「今日は無理。」
完全な二日酔いとなったマリアを抱き抱え、俺達は小屋に戻る事にした。
★
今日はお休みだ。ゆっくりと休む。風呂を炊き、疲れを癒す。テラスとビビが求めてきたので、それに答えた。
やはり元気が一番だ。快楽という極上の愉悦に微睡む。二日酔いだったマリアも焼きもちからか参加して、四人で幸せの感触に没頭した。
久しぶりに抱いたので、テラス達は満足していた。動けなくなるまで、痙攣するまで、俺の想いを伝えた。マリアは失神をしてしまったのには驚いたが、それでも満足していた。
「まだ、できる?」
テラスはまだまだしたいようだ。その言葉に、俺は簡単に反応する。テラスを抱きしめ、そのまま、快楽に没頭した。
今日は一日中愛し合った。




