5-5 風の道
100話目になりました。かなりの時間を掛けましたが、何とか辿り着きました。
これからも頑張ります。
さて、山道を登り、一直線に風の道と言われる洞窟に向かう。ここはジオフロントの大事な場所だ。風の抜け道であり、空気の入れ替えを行う重要な場所だ。
その分、洞窟も大きい。まだまだ先にあるのに、洞窟の入り口はもう見えていた。
20メートルはあるだろう。その洞窟はただ口を空けたまま静かだった。
さて、入り口前には無数の兵士がいる。刃を向けて、だ。
「国王の許可は取っている。速やかに道を開けよ。」
俺の言葉は兵士に届かなかった。兵士長と思われるドワーフが語る。
「ここは我等がドワーフの神聖な場所。如何なる者、ヒトを入れるなど言語道断である!」
またこれか。正直うんざりする。だが、行くと決めたのだ。力ずくでも通らせてもらおう。
「では、国王に反旗を翻すという意味だ。良いのだな?」
「話にならん!退くならば良し。進むならただでは済まんぞ!」
話にならないのは此方だ。奴等は聞く耳を持っていない。国王の許可証が偽物とでも思っているのか?
「ソーイチ様。ここは私が。」
「そうだね。任せる。後ろは気にしなくて良いよ。わかっているとは思うけど。」
「はい、誰も殺しません。」
ビビが薄着になり、前に進む。その行動にどよめく兵士達。後ろにいたガストン達も騒然とする。
「お、おい・・・。」
「これくらいなら、ビビ一人で十分さ。邪魔になるから、前には出るなよ。」
「あ、ああ、わかった。」
「さあ!参られよ!」
「くっ!かかれー!」
それは一方的だった。黒狼爪の石突きだけで、この場を制圧していくビビ。剣を弾き、槍を折り、一人ずつ兵士を無力化していく。鎧に大きなへこみをつくり、倒れこむ兵士。頭や首に強い衝撃を受け、気絶していく。
いつのまにかに兵士長のみとなった。身体をガタガタと震える兵士長は剣先を震わせている。
「こ、こんなことがあってたまるかー!!」
だが、兵士長の剣はビビにかすりもしない。ビビは横へとスライドし、石突きを兵士長の腹に一撃。そしてくの時になった瞬間に、首後ろに踵を落とした。
完全に無力化した。ビビは笑顔で此方を見る。うん。上達している。
「ビビつよい!」
「あんたも大概だけど、ビビさんもそうよね。」
いやいや、ビビは強いよ。薄着のビビに外簑を着せる。
「うん、良くやった。」
「ありがとうございます。」
尻尾が凄いね。ブンブンといってるよ。
それに引き換え、ガストン達は開いた口が塞がらないようだ。
「ビ、ビビは強いんだな。」
ガストンはビビの強さを再認識したようだ。
さて、邪魔者はいないし、先に進みますか。
俺達は平然と洞窟に入っていった。
「なあ、あの獣人は化物か?」
「ところがな、あの獣人よりヒトの方が強いんだぞ。信じられるか?」
「いやいや。」
「まさか、なあ。」
沈黙。
「おーい、置いて行くぞー。」
その声に、ドワーフ達が我に帰る。
「い、今行く!」
ドワーフ達も洞窟に入っていった。
★
洞窟内は光苔があるためか、案外明るかった。松明は必要ないみたいで少し安心した。
ビビが先頭に立ち、鼻の良さを生かす。マリア、テラス、俺に、ガストン含むドワーフ達と並んでいる。
洞窟は大きいが、一本道。足元危ないが、難なく進んでいる。
風の道とまで言われている洞窟なのに、風を一切感じないのは、やはりおかしい。
その謎は直ぐに判明した。
壁がある。洞窟を塞ぐ位の壁だ。厳密にいえば、土の塊が道を塞いでいた。
俺はその壁をよく見る。
これは完全にアレだね。埋め立てられたね。
その土の塊を見て、そう判断した。この大きな穴を埋め尽くすのは、大変な労力だっただろう。それに人数も必要なこの作業に、今回の件は結構根が深いと思った。
ここまでを推理すると、落盤事故は嘘の可能性が出てきたな。龍もそうだ。ドワーフ国を密閉して、何かをしようとしている奴等がいる。それも大規模に。
国王が支持されていないのが原因か?はたまた違うか?
まあ、いいや。それはさておき、この土の塊を排除しなければならないな。
無限保管を使い、土を吸い上げる。掘るのもいいが、崩落の恐れもある。折角のドワーフ達だが、出番はない。
風の道を塞ぐ壁はなくなった。ヒンヤリとした風が流れてくる。
ドワーフ達はその状態に首を傾げた。
「ん?どうした?」
「あ、いや、風が弱すぎるんだよな。この風の道は暴風で、吹き飛ばされる位に風が強いんだ。それなのにそよ風しか感じないのは、おかしいと思ってな。」
あ、そりゃそうか。空気の入り口は出来でも、出口がないんじゃ、意味がないな。
それに気がついた俺は洞窟を出る事を勧めた。
次は天井の蓋を取り除く。
風の道を進めば、山の外に出る。だが、山の外は魔獣が住み着いていると聞いていたからだ。この人数で、山を登るのは危険だし、もしかしたら龍がいるかもしれない。ドワーフ達には、兵士達を縛ってもらうとして、俺達四人は先に進む事にした。
★
やはりというか、なんというか、風の道に魔獣はいなかった。それはそうだ。魔獣からみても、ここは危険地帯と認識されているだろう。
山の外からは、何でも吸い込む掃除機のようなものだ。簡単には近づかない。
それでも、蝙蝠なんかは生息していたが、害はないようなので、無視することにした。
風の道を抜ける。新鮮な空気が、身体の内部を清浄してくれるようだ。マスクをとり、深呼吸する。
空気が旨い!
さて、皆も深呼吸をやっていた。
「なんかくうきがおいしいよ。」
「外は良いですね。」
「やっと一呼吸ね。」
皆は思う存分、綺麗な空気を堪能していた。だが、次はここからだ。やるなら急いだ方が良い。
テラスを抱き上げる。マリアはビビに任せた。ここは未開発の森だった。道なんてない。それに魔獣が出る可能性も考え、俺は急いで山道を登っていった。
ジオフロントの登頂部に、風の出口があるはずだ。そこに向かうようにする。
山は急斜面だったので、ビビもマリアを抱き上げての移動には困難だった。そこで、簡易的に椅子を作った。そこにビビを座らせ、マリアはそのまま抱き上げる。テラスは俺が抱き上げているので、これで三人を担ぐ事が出来る。
「ゆっくりね。」
「マリア殿、暴れないで下さい。」
「これは絶対にヤバい!私はパス!嫌だ!」
「んじゃ、行くぞ!」
俺は二段跳躍、空中歩行で、山を登る。いや、上る。マリアが煩いが、それを気にしないで、ジオフロントの登頂部があるであろう場所に降り立った。
「こんかいはこわくなかった。」
「マリア殿?大丈夫ですか?」
「もう嫌、このチート野郎!」
マリアさんひどい。頭を叩かないで下さい。
下りた場所の付近に、小さな洞窟があった。小さいとはいえ、高さは5メートルはある。十分に大きいが、さっきの洞窟を見てしまうと、小さく感じてしまった。
さて、ここが件の場所かな?
俺が中に入る。皆も後ろからついてくる。
洞窟に入ってすぐだった。道が塞がれている。これも土砂で道を塞いだように見える。
そういえば、クレが言っていたな。天井は故意に塞いだって。
何故そんな事をしたのか。龍の存在が起因のようだが、その龍は辺りにはいない。やはりデマだったようだ。
ならば、この土を吸い上げれば、万事解決となるだろう。
やろうとしたその時だった。
「それ以上はいけません。」
後ろにいたのは、ムキムキの執事だった。
★
「それ以上は許可をされておりません。速やかに退去なさって下さいませ。」
「どういう事だ?」
「今はお話出来ません。話の続きを知りたいのならば、速やかな下山をお願い致します。」
この執事も反国王?いや、それにしては違うような気がする。
反国王ならば、許可証など揉み消す方が簡単だ。それをしなかったし、城内の騒ぎにかこつけて、俺達を国外退去、または、犯罪者に仕立て上げただろう。だが、それをしたかった。
「どうか、よしなに。」
「・・・わかった。信用する。話はしてもらうぞ。」
「はい。」
俺は下山した。洞窟の外には、道があり、そこからジオフロントに帰れるようだ。重い扉を開けると、空気が押し寄せる。身体が飛ばされる位に。風の道を空けたからだろう。その為、この場所も風の出口になっていた。
皆が国内に入ったら、重い扉を閉める。程なく風は止んだ。
執事の案内で、城に向かう。空気の悪さは相変わらずなので、マスクを着用する。
徒歩での移動だったが、王国の外縁を進み、城へと入城した。
通された部屋は先程の客室。何もなかったかの様に、片付いていた。
俺はソファーに座る。テラス達も俺の側を離れない。ムキムキの執事が扉の前で立ち尽くす。部屋の奥には入ってこない。
「説明をしてくれるんじゃなかったのか?」
執事は無言だった。それを破ったのは、意外な人物だった。
「では、説明をしよう。」
現れたのは、国王だった。




