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英雄と呼ばれるのは危険過ぎる。  作者: 落武者弥八
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やりたくない仕事も世の中にはあるさ。糞ぉ…。

一人の戦士が剣を横に薙ぐ。二人の兵が斬られるものの腕が伸びきり、鋒が止まると空かさす兵が飛び付き戦士の腕を押さえにかかる。

その戦士はつい先日まで『勇者』と呼ばれていた少年だ。

「押さえたぞ!」

「魔導鎖を持ってこい。」

「足も押さえろ!」

他愛の無いものだ。

確かに個人の能力としては破格なのだろうが。

一人対三千人で『逃げ』を選択しないのは只の馬鹿と云うものだ。

まぁ、何度か将軍閣下の手勢と渡り合った揚げ句撃退させたとの話も聞くのだ。自信が有ったのだろう。が『幼い』な。


「一本じゃ足りねぇ!もっと持ってこい。」

「おい!怪我人を退かせ!」


流石は『勇者』と呼ばれていただけの事は有る。剣が振れなくなっても魔法で兵達を振り払おうともがいている。

魔導鎖で魔法が封じ込めきれていない。化け物め。

だが、三千の兵相手に何処まで耐えれるかな?


「死傷者はどのくらいだ?」


俺は 隣に控えている副官に訪ねる。


「はっ。百を超えました。」


俺の大事な駒(部下)をよくもまぁ、やってくれる。

コイツらは『精鋭』と迄はなくとも『練兵』ではある。20年来、何かと手懐けてきた俺の『財産』だ。


こんな仕事。やりたくなかったよ…。



俺は三千の兵を纏める『軍団長』を勤めている。平民出の俺がだ。15で入隊し20年。ここまで登り詰めるのにただ軍事の才能だけでは当然無理だ。上官に気に入られないとまずいし、『御貴族様』からも後押ししてもらわないとやはり無理だ。そして最後に『駒』どもだ。コイツらが担ぎ上げてくれる事で王都の市民どもからも信頼される。

面白いだろう?本人の能力じゃなく、他人の評価で『信頼』が作れるんだぜ?


散々持ち上げてくれる駒ども。何度か助けた軍団長である男爵家の次男坊。そんなこんなである日、将軍閣下の伯爵様が一人の女性を連れてこう言ったのさ。

「最近ますます頑張っているようだな。お前は見所が有ると常々思っていたのだ。」

と。なんでも助けた男爵次男坊の姉だそうだ。まぁ、売れ残りだな。でも俺の様な男からしたら綺麗に着飾って御澄ましした御貴族様の女は極上にみえるさ。不満なぞありゃしない。

それにこれはどう考えても政治なお見合いさ。平民出の俺が断れる訳が無い。そして晴れて『軍団長』に成ったわけだ。


「やったぞ!!」

「軍団長!やりました!」


手にした槍を掲げて吠える様に報告する兵達。飛び散った血は『少年』の物だけではあるまい。それだけに達成感もひとしおだろう。


「死傷は?」

「五百を超えてます。」


俺の軍団は暫く機能しねぇ。やってられねぇなぁ。


「よくぞやり遂げてくれた。勇猛なる戦友達よ。私はとても誇らしい。」


手柄を立てたとき位は持ち上げないとな。それに俺は平民出だからな、『戦友』って言葉で駒どもの身近な存在である事をアピールしないとな。


「そいつには賞金が懸かっている。当てにしてくれ。」


そして何よりも平民出の駒どもには『金』だ。『名誉』も悪く無いが平民には『金』が一番説得力がある。


死傷者達には一時金が必要だ。国からも出るがたかが知れてる。だから俺からも出さなきゃならん。軍団長は金が無いとやっていけない。だからこその御貴族様の女だ。女と僻地の村を貰った。そこからの金で軍団を廻す訳だか…赤字だな。五百だぞ?

賞金は駒どもに分配だ。負け戦なら金の出し渋りも赦されようも、勝って手柄が在るのに出し渋りは赦されねぇよなぁ~。


ホントやってられねぇ。

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