第7話 【メテオの威力】
「みんな、今からボス部屋に入るから、しっかりと回復してくれ。」
ダンジョンの奥深く...
20名のプレイヤーが大きな扉の前で、休憩をとっていた。
「皆さん、HP回復ポーションを使うのは勿体ないのでヒールかけます!」
確かに普通のプレイヤーではHP回復ポーションを一つ買うのには、モンスターからドロップする金額に対して、高すぎるのだ。20人使うとなるとやっぱり高い。それに比べ、ヒールは1回で30レベル程度のプレイヤーのHPならすぐ回復ができる。そして、ヒールは範囲効果のスキルなので、効率がいい。さっき俺がMP回復ポーションをあげたのもこれが理由だ。
「おぉ」
「どんどん回復してる!」
そういえば俺もヒールは初体験だな。
「ありがとうなエミリン。」
「いえいえ、さっきの事に比べればこのくらいどうってことないですよ!」
よし、そろそろ行くかな。皆もしっかり回復したようだしな。
「じゃあ、この扉を開けるぞ。重っ!?何人か手伝ってくれ」
「「はい!」」
俺は少し苦笑いしながら頼んだ。1人ではボスと戦えないってこういうことなのか?まぁ、そんな事はどうでもいい。今はボス戦だ。
ギシッギシッという音をたてながら、大きな扉を開いた。急いで陣形を整えて、戦闘準備に入る。横を見てみると、少女は緊張しつつ、少し自信ありげに構えていた。
恐る恐る中に入っていくと、円状の空間、例えるならドームのような所に出た。さっきの洞窟のようなダンジョンに比べると、結構明るかった。そして、俺達のいる反対側にゴブリン数体と、ゴブリンを巨大化させて、王冠をかぶせたようなモンスターがいた。
「デカっ!!」
思わず口から出てしまった。しかし、他のプレイヤーも俺と同じく驚きの顔を見せていた。よく見てみると、ボスと思われるゴブリンは、普通のモンスターなら、HPゲージが1ゲージのところを、奴は三ゲージもあった。
「ちょっとやって見たいことがあるのでやってみてもいいですか?」
「え?あぁ、いいけど...」
エミリンは、その答えを聞いた瞬間木の杖を上にあげ、息を思いっきり吸い込み、こう言い放った。
「【メテオ】!!」
「え?」
その瞬間、上空に丸い空間が現れ、隕石というにふさわしいものが出てきた。確かに【メテオ】は、25レベル分のスキルポイント、〈50P〉が必要だが、そこまで貯めるにはヒール、〈10P〉だから、30レベル以上なはず。そんな事を考えていると、ゴブリン達とボスはこちらに向かってきた。【メテオ】もゴブリン達に向かって凄まじい迫力で進んでいった。
皆唖然として【メテオ】を見ている。そして【メテオ】がゴブリンに直撃したように見えた。その途端、爆音とゴブリンの声が聞こえ、煙が舞い上がった。
数秒後、煙が晴れてきて、ゴブリンはいなくなっていた事に気づいた。残っているのはボスだけ。結構近づいていたので名前が見えていた。
その名は【キングゴブリン】...
まぁ予想通りだった...
「ぉ、おぉ!ゲージが1つ減ってる」
「エミリンさん恰好良すぎだろ」
エミリンは急いで後ろに引いた。そして2人以外の皆は笑っていた。
...と、次の瞬間キングゴブリンは手持ちの大きな棍棒を振り回していた。しかし、みんなよそ見をしていた。
「危ない!!!」
「えっ......ヴッ!?」
キングゴブリンの大きな棍棒は前の方にいたプレイヤーを1人、横の方へぶっ飛ばした。それは飛ばされたプレイヤーが壁にあたり少しひびの入るくらいの威力、まさしく電子漫画によくありそうな感じでぶっ飛ばされていた。
そして、プレイヤーは煙になって消えていった。多分【二グルス】に戻ったのだろう。
「みんな気をつけろ、キングゴブリンは明らかに強すぎる。協力しないと絶対勝てない!!」