第19話 【決闘 vsアスタロト】
辺り一面にはガラスの破片があり、シャンデリアの電気も消えていた。少し暗く見えにくいが、確かに昼に見た奴らもいるようだ。
「おい、確か【グレード・チーフ】団は盗賊ギルドでも対プレイヤー専門じゃ...」
「あぁ、そうさ。でもなんでコイツらが......」
何人かのプレイヤー達は武器をこちらに向けて、貴族や店員達を脅している。
「おい、お前ら。さっさと金を...」
俺らを脅しているプレイヤーはなにかに気づいたかのように、顔が青ざめていた。手元に持っている武器を震わせ、一時停止していた。
「どうした。急いで金を奪うんだ。他のプレイヤー達が来ちまうだろ。」
「で、でもこの人...。ツバキさんだ。」
「「「「「なっ!?」」」」」
驚くのも無理はない。昼まで盗賊ギルドの副ギルド長だったツバキがこんな超高級レストランにいるからな。
「ツバキさんだって?」
集団の中から1人のプレイヤーがこちらに向かって歩いてきてそう言った。黒髪にサングラス。黒衣を纏い、腰に大剣を装備し、他のプレイヤーよりも一際強そうなプレイヤーだった。
「お前は......アスタロト!」
ツバキは少し驚きつつ、恨むようにそう言った。
「やっぱりあんたが【極悪非道の大盗賊 アスタロト】か...。」
「なるほど、お前が冒険者の中で1番金を持ってるというカナタか。」
「あぁ、そうだよ。俺がカナタだ。あんたがツバキ達のギルドを壊し、盗賊なんてバカやってるプレイヤーか。」
「フッ...。まぁ大体あってる。おいお前ら、急いで拠点に戻れ。」
俺は雷剣でアスタロトに斬りかかった。
カキーン
瞬間、剣と剣が混じり合う。
「なかなかやるな。 」
反応速度にこの剣を防ぐことができるなんて......コイツは一体何者なんだ...。
「いきなり斬りかかるか?普通。面白ぇ、俺が相手になってやるよ。」
2人は一旦間合いをとった。アスタロトは大剣を構えた。その大剣からは黒いオーラのようなモノを感じた。
「恵美、ツバキ、お前らは逃げた奴らを追ってくれ。」
「カナタ、頑張って!」
「アスタロトは強い。気をつけてくれ!」
「あぁ。」
2人は走り際にそう言い残し、集団を追って行った。
「これでふたりっきりになったな。それじゃ、始めようか、カナタ。」
「あぁ。」
二人はお互いに走って斬りかかった。
カキーン
再び剣が混じり合う。やはり、アスタロトは俺と同じくらいの力を持っているようだ。いや、この【雷剣】よりも重いであろう大剣をこんなに素早く振れるくらいだ。コイツ、俺より強いな、これ。
「これじゃあ決着がつきそうにないな。少し切り札を使わせてもらうぜ。」
「切り札...だと!?」
2人は一旦お互いに引いた。
「この大剣はな、魔王様からいただいた魔力の詰まった剣だ。その名も【『魔剣』アスカロン・アスタロト】だ。」
「あんた......本当にプレイヤーなのか?...」
「いやいやプレイヤーじゃねぇよ。俺は魔王直属の『悪魔二十五騎士団』の【第二十五騎士】のアスタロトだ。地獄の大公爵と呼ばれたりもするかな。」
「やっぱりそういう系か...。」
前にもGYOにこういうプレイヤーに紛れたAIの敵がいた。こいつがプレイヤーじゃなく敵なら手加減なくできる。ツバキを苦しめたのも事実だからな。
「ハァァァァァァァァー」
アスタロトは《魔剣》に力を込めるかのようにこう言った。これは...
「魔力......魔力を溜め込んでいるのか。」
「そうだ。ほらよ!」
アスタロトが一振りすると、紫色の斬撃が飛んできた。だが、前使っていた。ファイヤーソードの必殺技【ファイヤーカッター】を愛用してきたカナタには斬撃を見切ることは簡単だった。
「おっと、危なっ...。」
「おぉ、これをかわすか...。ならこれはどうだ。」
アスタロトはさらにいくつもの斬撃をこちらに飛ばしてくる。これは流石にかわしきれないな。...そうだ。この必殺技に対抗する術は...。
カナタは地面に剣を刺しこう言った。
「【サンダーカッター】ぁぁ!」
「サンダーカッターといえばあの雷属性の斬撃のことか。でもなんで地面に...」
前のファイヤーソードの時もこれで炎を纏えた。雷剣絶断でも雷を纏えるが、これは敵にしか効かない。つまりこれで...
「サンダーカッターを纏っただと!?」
カナタは紫の斬撃を次々と切っていった。そして全て斬撃を切ったところでアスタロトに斬りかかり、こう言った。
「雷剣絶断ぉぉぉぉ!」