第16話 【奇襲】
第一王都周辺 草原フィールド
「今回の標的はここにいると聞いたんすが...」
1人の男性プレイヤーは小さな声でそう言った。
「どうやらいないみたいだな。」
4、5人くらいの集団は透明化のスキルを使いながらカナタを探していた。カナタを倒せば大量のGが手に入る。だから早く見つけ出して、奴を仕留める...
ガサッ...
「...来たか?」
そこには岩をまとった巨兵のようなモンスターがいた。
「こいつは...ゴーレム?!確か情報屋に聞いたところ、現在のモンスターの中で1番防御力が高いモンスターで、全く攻撃が効かないらしく、倒したものは誰もいないらしいだそうです。」
「ゴーレム?!こいつがか...、まだ気づかれていない...今は引くぞ!」
「「「「おぉーー......ぉお?」」」」
その瞬間、白い光がツバキたちの目の前に現れ、ゴーレムは一瞬で煙になり、消えてしまった。
「これは...」
「なんだったのですかね...」
「ちょっ?!霧が......」
数分前ー
少し離れたところで二人組は再び狩りに来ていた。
「やっぱりすごいな、ゴーレムが一撃で倒せるなんて...」
「はい、私も初期魔法のメラでもたおせるくらいだからね。」
そう、30分前くらいに俺達は武器を買った。それはどちらも性能がぶっ壊れていて、それはゲームバランスを壊しかねないものだった。
「ちょっとあの技使ってみていいかな?」
「あの技ってあれのこと?」
終焉電光、それはフィールド上の全ての敵を倒すというものだ。念のためメニュー欄から装備→武器を開き、『雷剣』サンダー・ライディーンの横の?から技の詳細を確認した。
ー終焉電光ー
使用方法
剣を地面に刺し、終焉電光と唱えることで使用可能。ただし、1日に一度のみ。
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とのことだ。
グサッ!
早速地面に刺してみた。そして少し期待しながらこう言った。
「終焉雷光!」
すると、剣が発光し、手元が少しビリっときて、一瞬だけ目の前が真っ白になった。
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congratulation!
G:6650000
ドロップ:ゴーレム岩×39、ゴーレム鉄×5
レベルが29上がりました。HPとMPが58ずつあがり、スキルポイントを58P獲得しました。
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いやいや凄すぎだろ...これ(笑)
「す、凄い...」
「だな...」
2人は少しにやけながら言った。
「うわっ結構煙が出て霧がやばいな。」
「でも...このフィールドのモンスターが全てやられたのなら納得がいくね!」
「あぁ、確かに...」
ん?じゃあまたモンスターがまた出現するには時間がかかるのかな。
「恵美...今のうちに風扉を探すぞ、どこを探しても無いという事はここにあるかもしれないからな。」
「うん。」
あの大量に出ていた煙は時間がたったおかげか、結構晴れていた。それを確認し、俺達は誰も行っていなさそうな草原の奥の方に歩いていった...。
カサッ...
ん?なんだこの音は...もうモンスターが湧いたのか?辺りを見渡しても広大な草原があるだけ。気のせいか...。
「今だ!」
「「「はい!」」」
「...ッ?!」
「「「死にやがれー!!」」」
カナタには何も見えないが、少しの痛覚から襲われていることが分かった。
「誰だ、お前ら...」
「随分と余裕だな。カナタ...」
女性プレイヤーか...。よし、とりあえずあれ使うか...
「プロビデンス・アイ!」
プロビデンス・アイとは隠れているアイテムやプレイヤーを一定時間見ることができるスキルである。やっぱり、4、5人ほどのプレイヤーが見えてきた。
「おいお前ら、俺を倒そうとしているのなら無駄だぞ。」
「何言ってんだ...よ...って全然HP減ってねぇじゃないか!...」
「そうだな、で...お前ら誰だ?」
「わ、私はツバキ。こいつら盗賊ギルド【グレード・チーフ】隊を率いるものだ。貴様こそ何者なんだよ。 」
盗賊ギルドか...やっぱりMMOやってるとこういうギルドも生まれるのか。
「あぁ、俺か...。俺の名はカナタ、最前線で攻略している中の1人だ。ちなみに今のレベルは460だ。」
「なっ?!」
「で、ツバキさん達は他のプレイヤーにもこんなことやってんのか?」
「あぁ、そうだよ。悪いかよ。ここではPKを行ったってペナルティなどないし、犯罪を行ったところでお前らには関係ないはずだ。」
確かに関係ない...いや、あるな。WGOに入ったばかりの頃、俺は風井さん、つまりGMに会い、色々な話しをした。その時、風井さんはプレイヤー同士の戦闘はなるべく避けたいと言っていた。だが、NASAとの協力によってこのWGOが成り立っている。NASAは政府直属の宇宙研究機関でもあるため、政府の指示なしでは何も出来ない。また、地球とこのWGOの通信手段は無いと言っていいだろう。だからプレイヤー側の俺が風井さんの思いを否定するわけにはいかないだろう。
「いや、関係あるよ。だって、お前らは犯罪を犯しただろ?人を傷つけるっていう罪をな。」