第13話 【WGOの真実】
ー酒場にてー
「納品をお願いします。」
俺はウルフの素材を酒場のカウンターのようなところに納品した。
「はい、確かに受取りました。こちらが報酬になります。」
俺は報酬を受け取り、【二グルス】にいる、冒険者達の元へと戻った。
「カナタさんとエミリンさんの活躍に乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
二日連続の宴会、金は善意で俺が全て払うことにしている。
「宇宙...」
「ちょっと待て、流石にその呼び方だと完全に本名がバレるからやめてくれ...」
俺の名前はカナタ、逆から読めば田中だ。そして宇宙という呼び方だと完全にフルネームがバレてしまうのだ。
「じゃあなんて呼べばいいの?カナタ...さん?」
「カナタでいいよ。」
ちなみに俺は昔と変わらず恵美と呼ぶつもりだ。実際はエミリンからリンを抜いただけだからな。
「ちょっと悪いが、少し席を外すから、皆は引き続き宴会を楽しんでくれ。」
「分かりました。カナタさん!」
「カナタさんの言う通り、どんどん盛り上がっていこうぜ!」
すると、俺は酒場を出て、人のいない路地裏に来た。メニュー欄からコミュニティ→フレンド→フレンド一覧を開き【[GM] kazei】と書いてあるところの横の《call》のところを選択した。
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「おや、カナタさんではないですか。そういえば【Gブースト(超)】は気に入ってくれましたか?」
「は、はい。その説はありがとうございます。」
「このスキルは(超)ってついていますよね。このスキルを取得するにはある難関クエストを攻略した者のみが獲得できるスキルなんです。しかも一人限定で...。」
「そうなのか...。」
確かに50倍の効果のスキルを誰でも獲得できるとなれば多分ゲームバランスは破壊されるだろう。
「他にもスキルには一人限定のやつがあります。その獲得条件は...」
「獲得条件...」
「いや、自分達で見つけ出すことがいいのでしょう。」
「やっぱりそうなるか...」
まぁ、ゲームというものは攻略方法を聞いてしまうとヌルゲーになってしまう。製作側の努力を無駄にしてしまうことになりかねないのだ。
「現実での俺達の扱いはどうなっているんだ?」
「それは私達にもあまり分かりませんが、NASAによれば、一時期失踪事件となったが、NASAの「WGOによるもの」だという、正式発表にて、その混乱は免れたそうですよ。」
なるほど...
「そういえばなんでフレンド一欄にGMの名前があったんですか?システムコールで運営と連絡は出来るはずなのに...」
「GMじゃなくて風井でいいですよ。それの事なら、あなたが特別だからです。」
「特別...か、じゃあもう一つ質問があるんだけど」
「はいどうぞ。」
「このWGOには、一体どのくらいの風扉があるんだ?」
それは誰もが疑問に思うこと。そして、このWGOを攻略するために最も重要なことである。
「あぁ、それなら250ですよ!」
「にひゃ......いや、多すぎだろ」
「いやぁ、WGOを数字に例えると、250ですからね。」
「マジか。」
250...つまり最低1年はかかる...。レベル上げとかも考えて2.3年はかかるだろう。
「あ、そろそろ時間ですか...。ではカナタさん、また会いましょう。では、」
「あ...ちょっ!?」
その言葉を残し、GMとの会話が切れた。俺はゆっくりと酒場の方へ戻った。
「何かあったの?カナタ。」
恵美が心配そうな顔でこちらに問いかけてきた。
「あぁ、大丈夫だ。絶対このWGOをクリアしような。」
「急にどうしたの?」
そんなこんなでこの世界の真実を知った現時点で最強の少年とそれに匹敵する強さの少女の物語はまだまだ始まりにすぎなかった。