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光の勇者と光の巫女  作者: プフル
6/8

ギルド『暴王の城』


翌朝


レナードとエル、そしてスウィフトとサティはウェーバー邸の応接間にて集まっていた

そして…



ダンテ「来たぜ。返事を聞こうか」



ダンテとブレアも、その場に現れる

スウィフトは全員を見渡し、口を開く



スウィフト「レナード君」


レナード「…はい」



レナードの額にじんわりと汗がにじむ

はたしてどちらの結論に至ったのか

エルをちらりと見ると、どうも緊張しているようだ

どうやら、両親の決定は未だエルにも伝えられていないらしい



スウィフト「エルを…守れるかい?」



その言葉が意味することをレナードはすぐさま理解し、そして言葉を返す



レナード「そうなるよう強くなります。そして、必ず守ります。守ってみせます」


スウィフト「そうか…」



スウィフトとサティが立ち上がり、背筋を伸ばす



スウィフト「ダンテさん、ブレアさん」


ダンテ「おう」


ブレア「はい」


スウィフト「そしてレナード君」


レナード「…はい」





スウィフト「エルを…よろしく頼む」


サティ「エルをよろしくお願いします」





そう言って、二人は揃って頭を下げた



エル「じゃ、じゃあ…!」


スウィフト「エル」


エル「…はい」


スウィフト「世界を知ってきなさい。そして、成長してきなさい」


エル「はい…はい…!」



ブレア「良かったですね。また断られなくて」


ダンテ「はっ、うるせぇ」



エル「じゃあ私荷物取ってくるわね!」


スウィフト「取ってくる…?まとめてくるじゃなくてかい?」


エル「だってこうなるって信じてたもん。だから昨日のうちに用意しといた!」


サティ「あらあら、この子はもう…」


レナード「え!?俺まだなんも用意してねぇけど!?」


ダンテ「あと10分な」


レナード「は!?ちょ、ちょっと待ってくれよ…!」



ダンテの非情な宣告を聞いてレナードも急いで自宅へと戻り、すぐさま準備を済まして自分の部屋を出る

そのまま居間へと向かい、玄関へと向かう途中…



レナード「親父…」


デニソン「その様子だと…やはり行くのだな」


レナード「あぁ…」


デニソン「まったく…昨日突然何を言い出すかと思えば…」


レナード「悪い、親父…。鍛冶屋、引き継げねぇかもしんねぇ」


デニソン「なぁに、気にすんな。お前はお前のしたいことをやれ」


レナード「ありがとな、親父」


デニソン「らしくねぇな。しおらしくしてんじゃねぇよ。胸張って出て行けぃ。男の門出ってのはそういうもんだ」


レナード「はは、んなもん初めて聞いたぞ…。お袋は?」


デニソン「まだ寝てるぞ」


レナード「なにしてんだよ…。息子が出て行くかもしんねぇって日に…」


デニソン「…伝言だ。元気にやりなさいよ。いつでも帰ってきたらいいわ、だってよ」


レナード「直接言えよな…馬鹿お袋。親父、ありがとう、行って来ますって伝えといてくれ」


デニソン「…おうよ」


レナード「それじゃあ人も待たせてるし、そろそろ行くよ」


デニソン「エル様をちゃんとお守りするんだぞ」


レナード「分かってるさ。それじゃあ行ってくる」


デニソン「身体に気をつけろよ」


レナード「あぁ!」



レナードは笑顔でそういい残し、家を出て行った

デニソンはその後ろ姿をいつまでも眺め、そして…



デニソン「行ったぞ」



そう言うと



スーラ「グス…ヒック…レナード…いつの間にか大人になっちゃって…」



奥の扉から一人の女性が現れた

デニソンの妻であり、レナードの母親であるスーラだ



デニソン「息子に泣き顔見せたくないのは分かるが、最後くらい見送ってやれよ…」


スーラ「グスッ…いやよ、わたしのキャラじゃないわ」


デニソン「キャラて…」


スーラ「そこだけは譲れないわもの」



はっきりとそう言うスーラの顔は鼻水と涙でぐしゃぐしゃになっていた



スーラ「行ってらっしゃい…レナード」


デニソン「行ってこい、馬鹿息子」



二人の顔は息子の成長を見届ける親の顔であった



ダンテ「きたか。9分半ってとこだな。ギリギリじゃねぇか」


エル「レナード遅い」


レナード「『まとい』使ってまで全速力で来たぞおい…」



レナードは肩で息をしているが二人は容赦がない



ブレア「そろそろ行きますよ」



ブレアの言葉でダンテがオーラを発し、前のようにエルとレナードも妙な力で浮かせる

そのまま高く高く上昇し、村が完全に足元にくるまで上昇した



ダンテ「行くぜ。もうしばらく戻ってこれねぇかもしんなねぇからな。村もしっかりと目に焼き付けとけよ」


エル「うん…!」


レナード「あぁ」


ブレア「では出発しましょう」



親父、お袋、行ってくる

お父様、お母様、行ってきます


二人は心の中で村と両親に別れを告げ、そしてダンテに引っ張られるように飛んでいった



―――――――――――――――



ブレア「お二人供大丈夫ですか?」


エル「は、はい…大丈夫…です!」


レナード「俺も大丈夫っす」



村を出て1時間

レナード達は未だ空を飛んでいた

目的地の『暴王の城』のギルドがある街までは飛んで約2時間ほどとのことだ

王都の隣と聞いていたので数日かかると思っていたのだが、そこはこの空を飛ぶ技術

馬車や竜車など比較にならないほどの速度なので、数日どころか2時間ほどで着くと聞いてレナードとエルは驚いていた



レナード「この速度に慣れてきた自分が怖いな…」



速度は相変わらずものすごく速い

森から村へと戻る時の速度ほどは出ていないとは言え、普通ならばまず体験しない速度だ

だがどうもレナードは慣れてきたらしく、周りの景色を見る余裕があるほどだ

エルはまだ慣れないのか目を空けるのにも苦労しているようだ



ブレア「そろそろ休憩にしますか」


ダンテ「あ?このままいけばいいだろ?」


ブレア「レナード君は大丈夫そうですが、どうもエルさんはそうではなさそうです」



ダンテ「ん?」



ダンテが振り向くとエルが申し訳なさそうに、しかしそれ以上に苦しそうにしていた



エル「う…」


レナード「エル、無理はするなよ」


ダンテ「…しゃーねぇ。一度降りるか」


エル「ご、ごめんなさい…」


ブレア「お気になさらないでください」



4人は一旦地上へと降り立つ

街道が見えたのでその傍の腰を下ろせそうな岩があるところで休憩することになった



エル「ふぅ…本当にごめんなさい…。レナードは平気なのに…」


ブレア「いえいえ。むしろたった1時間程で慣れてしまっているレナード君のほうがおかしいですよ」


レナード「そうなんすか?」


ダンテ「まぁ何日もかけて慣れさせるってのが普通だな」


レナード「へー…」


ブレア「センスがあるのかもしれませんね」


ダンテ「どうだろうな」


レナード「センスがあってもなくても関係ないっすよ。強くなることには変わらない」


ダンテ「お、言うじゃねぇか」


ブレア「ふふふ、これは修行のしようがありますね」



レナードはこれからお世話になる二人、ひいてはギルドの人達にはなるべく敬語を使おうと決めた

が、そう決めたはいいが元々敬語になれていないのでどうも不自然であり、変な感じになっている

だがそれはレナードも分かっており、これもブレアなどに教わるということで一応まとまったのだ


休憩は15分ほどで終え、再度出発してさらに1時間

ようやく目的地に到着した



ダンテ「ようやく着いたな」


レナード「はー、すげぇ…」


エル「大きな街…!」


ブレア「ようこそ、ギルドの街『グレル』へ」



4人は街の入り口に降り立ち、そこからはおおまかに街の全貌が見ることが出来る

ブレアがグレルと言ったこの街はレンガや鉄などで作られた無骨な建物が多く見られ、貴族や上級民などとは無縁であろう格好をした人達で賑わっていた



レナード「ギルドの街っていうと…?」


ダンテ「あー、そっからか…」


ブレア「もろもろの説明や講義は我がギルドについてからまとめて致しましょう。では参りますよ」



ここから先は歩きで行くことになり、レナードとエル街の簡単な説明だけ受けた

中央にギルド統括本部があり、その周囲はもうぐっちゃぐちゃにいろんな建物があるとかなんとか

街の入り口から北東へ歩くこと約5分

とある屋敷の前でブレアとダンテが立ち止まる



ブレア「ここが我らのギルド、『暴王の城』です」


レナード「他の建物とあんまり変わんないな…」


エル「そう?立派なお屋敷じゃない」


ブレア「エルさんの住んでいたお屋敷に比べれば小さいですが、この街ではそこそこ大きい方ですよ」


ダンテ「おら、くっちゃべってないで早く入るぞ」



ダンテは屋敷の玄関のドアに手をかけ、それを勢いよく開ける



ダンテ「帰ったぞー」


コルト「おや」


ブレア「ただいま帰りました、コル爺」


コルト「お帰りなさいませ、ダンテ様、ブレア様。お疲れでしょう、今お茶を出しますので少々お待ちください」



ダンテとブレアを出迎えたのはブレアからコル爺と呼ばれる白髪の年配の男性だった

身なりはまさしく執事といったもので、対応を見てもどうやらその通り執事であるらしい



ダンテ「あぁ、俺らの他にもあと二つ頼む」


コルト「む?おや、後ろにおられる方々は…」


レナード「あ、どうも…」


エル「お、お邪魔します…」


コルト「これはこれは、失礼致しました。お客様もご一緒でしたとは」


ブレア「ふふ、お客様ではないですよコル爺」


コルト「と、言いますと…まさか」


ダンテ「新しくうちのメンバーになる二人だ!」


レナード「よ、よろしくお願いします」


エル「よろしくお願いします」



二人はペコリと頭を下げてお辞儀をする



コルト「こちらこそよろしくお願いいたします。私、このギルドで執事を勤めさせていただいておりますコルト・シベリウスと申します」


レナード「レナード・シルダです」


エル「エル・ウェーバーです」


コルト「おや、ウェーバー…?」


ブレア「エルさんは今回の依頼の主であるスウィフト様の娘様です」


コルト「なんと…。領主様の娘様がギルドなど、よろしいので?」


ブレア「はい。大丈夫ですよ」


エル「両親からちゃんと許可も頂きました」


コルト「では私からは何も言うことはございませぬな」


ダンテ「こっちはその姫君の騎士様なんだとよ」


コルト「ふむ…?」


レナード「ちょっ…!」


エル「あら、ここまできて怖気づいたの?」


レナード「そんなことはないが…」


コルト「ははは、おおよそは分かりました。これ以上は追求しませんので、ご安心ください」


レナード「す、すいません…」



レナードは何故かコルトには頭が上がらないようで、恐縮してしまっている



ブレア「さて、他のメンバーはどうされましたか?」


コルト「ハイドン様は街へ出向いておられます。マーガレット様はご自身の部屋でまだ就寝中でありまして、エルガー様は依頼のために既にお出かけになられています」


ブレア「ハイドンはどうせまたナンパでしょう。こんな昼間から全く…。マーガレットもまだ寝ているとは…お酒ですかね。エルガーだけですよ、ちゃんと仕事をしてくれるのは」



レナードがギルドにある時計を見ると既に昼の11時を指している

普通ならばとっくに活動している時間なのだが、どうもそのマーガレットという人はかなりの寝坊体質らしい



ブレア「まぁ放っておきましょう。まずはお二人の部屋に案内いたします」


レナード「助かる。正直荷物が重くて肩が痛くなってきたところだ」


エル「え?私そんな重く感じないけど…そういえばどうしてだろう?」


レナード「は?俺より荷物多いのに?」


ブレア「…ダンテさん、でしょう?」


ダンテ「さぁな。コル爺、飯作ってくれ」


コルト「かしこまりました」



ダンテとコルトは奥のキッチンがある部屋へと移動していった



エル「…以外と優しいのかな?」


ブレア「ダンテさんはああ見えてかなり優しい方ですよ。困っている人を見ると文句を言いつつすぐ助けようとしますしね」


レナード「なんか…分かりにくい人っすね」


ブレア「そうですね。長く付き合っていれば単純な人だと分かるんですが。さぁ、行きますよ」



二人はブレアに連れられ、2階へと上がる

左側一番奥をエルの部屋に、その隣がレナードの部屋となった

ちなみにレナードのさらに隣はブレアの部屋らしい



ブレア「家具はまた街へ買いに行きましょう。ひとまず…」


「なによもう、騒がしいわねぇ」



レナードが声をした方に振り向くと、エルの向かいの部屋の扉がギィと音を立ててゆっくりと開いた



ブレア「もうお昼ですよ、マーガレット」


マーガレット「ん~、頭がガンガンする。昨日のお酒が抜けきってないわ」



マーガレットと呼ばれた女性はあくびをしながら頭をがしがしと掻いて部屋から出てきた

容姿は緑の綺麗な長髪で整った顔立ち、身長はレナードと同じくらいだろうか

スリムな体型をしており、魅力的な女性だと言える



ブレア「ちょうどいいのでついてきてください」


マーガレット「んー?あら、なによこの子達」


ブレア「それについても下でお話しましょう」



―――――――――――――――



マーガレットを加えた一行は下の居間へと移動した

居間にはソファーや食事をする用であろう机やイスなどがある

レナード達は各自適当に席につくとブレアが話を切り出した



ブレア「さて、みなさん。まだ全員揃ってはいませんが…」


ダンテ「はよ進めろや。俺眠いんだよ」


マーガレット「同意~」


エル「あ、あはは…」


ブレア「…」


コルト「どうぞ。紅茶でよろしかったですか?」


エル「あ、ありがとうございます」


レナード「いただきます」


ブレア「…」


マーガレット「コル爺~、わたし水~」


コルト「承知しました」


ダンテ「コル爺、俺はコーヒーで」


コルト「温かいブラックでよろしいですか?」


ダンテ「あったりまえだろ?」


コルト「かしこまりました」


ブレア「…」


エル「レ、レナード…」


レナード「ブレアさん、顔は笑ってるけど額に青筋が浮かんでるな…」



ブレアが笑顔で青筋を浮かべているその様子はさながら般若である



ブレア「ごほん、もういいですか?」


ダンテ「ん?あぁ」


マーガレット「あ~、頭痛い~」


ブレア「…。ではまず、改めて自己紹介から始めましょう」


エル「そういえばまだきちんとしていませんでしたね」



エルがすっと立ち上がるのに合わせてレナードも立ち上がる



エル「エル・ウェーバーといいます。よろしくお願いします」


レナード「レナード・シルダだ。よろしくお願いします」



二人はぺこりと頭をさげて再び席に着く



ブレア「ではダンテさん」


ダンテ「あー?俺からかよ…。ダンテ・グリムトンだ。このギルドのリーダーでもあるな。敬え崇めろ俺が王だ…」



何言ってんだこの人とレナードは心の中でつぶやく



ブレア「では次は私ですね。ブレア・マーカーと申します。ギルド『暴王の城』の副リーダーを務めさせていただいております」


マーガレット「マーガレット・ジャンヌよ。ギルドの役職はないけど、一応治療師ってことになるのかな」


エル「治療師?」


ブレア「彼女は水の所持者ホルダーなのですよ」


マーガレット「そ。水の能力でどんな怪我もお茶の子さいさいってね」



水の能力には治療の力があることはレナードも知識として知っている

レナード達が住んでいたボストン村には水の所持者ホルダーはいなかった

ルルも能力など持っておらず、道具と腕前だけで人々を正しく治療していたのだから名医と呼ばれるのも納得がいく



ブレア「では最後はコル爺」



ダンテにコーヒーを、マーガレットに水を運んできたコルトはその言葉を受けてたたずまいを直す



コルト「はい。コルト・シベリウスと申します。ここで執事として働かせてもらっておりますので、何かございましたらお二人ともどうぞ遠慮なく、私になんでも申しつけくださいませ」


ブレア「そしてあと二人いるのですが…」



そうブレアが言いかけるのと同時に扉の奥からガチャッと音がして、それに続いて話し声が聞こえた

玄関から誰かが入ってきたようだ



「ちっ、どいつもこいつも俺の魅力を理解していねぇな…」


「当たり前だ。そもそも仕事も碌にせずにふらふらと遊んでるやつに魅力などない」



ブレア「ちょうどいいタイミングですね」



居間の扉が開かれ、二人の男性が入ってきた



「コル爺―!腹減ったー!!」


「帰って第一声がそれか」



ブレア「ハイドン、エルガー、ちょっといいですか?」


エルガー「帰ってたのかブレア。どうした?」


ブレア「紹介したい人達がいます」


ハイドン「あ?」


エル「あ、あの、エル・ウェーバーと言います。ここでお世話になります。よろしくお願いします」


レナード「レナード・シルダだ」


ハイドン「お、なんだなんだ、新入りか?」


エルガー「またダンテの悪い癖か?」


ブレア「その通りです」


エルガー「全く…。エルガー・カントだ。よろしく頼む」



エルガーと名乗った男性は金色の短髪をしており、身長はややレナードより高いくらいか

きりっとした顔立ちに鋭い目をしている



ハイドン「ハイドン・フロイトだ。二人共、特にエルちゃんはよろしくなー」



こっちの人は茶髪のやや長髪、身長は185cmほどもあるだろうか

端的にいってイケメンなのだが、どうも雰囲気からしてチャラい

ナンパに行っていたとも言っていたし、その通りの人物らしい



ブレア「メンバーはこれで全員です。リーダーのダンテさん、副リーダーの私、治療師のマーガレット、戦闘員のハイドン、同じく戦闘員のエルガー、そして執事のコル爺。これにあなた達二人を加えて、全員ということになります」



つまり総勢8人ということになる



レナード「8人ってのは少ない…っすよね?」


ブレア「そうですね。あなた達二人が入る前は6人でさらに少ないですしね。多いところでは100人近い構成員がいるギルドもあります。少なくても10人ほどはいるかと。我がギルドを除いて、ですが」


ダンテ「うちは数より質だ」


マーガレット「そうそう。数だけ多くしても逆にうっとうしいわ」


ハイドン「まぁ仲良くやっていくにはこんなもんがベストだと俺も思うぜ」


エルガー「人数が多ければ多いほど問題や揉め事も起きやすくなるからな」


エル「なるほどー…」


レナード「質っていうと、みんな強いってことっすか?」


ダンテ「あたりめーよ」


ブレア「レナード君は『熟練度』というものをご存知ですか?」


レナード「いや、知らないっす…。あと君付けなんかしなくていいっすよ」


ブレア「ではレナード、と呼び捨てで?」


レナード「あぁ。そっちの方がいいです」


ブレア「分かりました。で、続きなのですが、『熟練度』とは言わば所持者ホルダーの能力をいかに使いこなせているのかという指標です」


レナード「指標…」


ダンテ「1から100まで。数字が高ければ高いほどより洗練されて、熟達になっているってわけだ」


ブレア「ちなみに私は火の所持者ホルダーで熟練度は71です」


ダンテ「俺は闇で熟練度は88だ」


マーガレット「私はさっきも言ったけど水の所持者ホルダーで熟練度は68よ」


ハイドン「俺は風の所持者ホルダーだ。熟練度は71だな」


エルガー「嘘をつくな、嘘を。何かとブレアと対抗しようするのはお前の悪い癖だ。お前はまだ70だろう」


ハイドン「ふん、どうせすぐ上がるしー」


エルガー「全くこいつは…。俺は雷の所持者ホルダーで熟練度は65だ」



レナードはその数字を聞いてもピンと来ないのか、眉をひそめている



ダンテ「『まとい』が使えるのは熟練度が20を超えてからだ。んで、『獣霊』が使えるようになるのは40くらいだな」


レナード「ってことは俺はまだ20ちょっとってことか…?」


ブレア「そういうことになりますね」


エルガー「レナードも所持者ホルダーなのか?」


レナード「そうっす。光の所持者ホルダーっすね」


コルト「光…。光の所持者ホルダーは珍しいですね」


ダンテ「闇と光は他の四属性に比べて数がかなり少ないからな」


レナード「そうなのか…?」


マーガレット「そうよー。ねぇ、エルはどうなのよ?」


エル「わたし?」


ハイドン「ん?エルちゃんも所持者ホルダーなのか?」


エル「あ、一応そうですね…。わたしも光の所持者ホルダーです」


コルト「なんと…!」


エル「ただ全く使えなくて…。光を少し出すことすら出来ないんですよ。あははは…」


ブレア「ふむ?おかしいですね。いくら熟練度が低くても自分の属性を表に出すことくらいは出来るはずですが…」


レナード「こんな風に指先を光らせるとか?」



レナードが人差し指を立たせ、その先が淡く光っている



ブレア「そうです。私だったら火、エルガーだったら電気と弱いながらも出せるはずなのですが…」


エル「わたし才能ないのかな…」


マーガレット「才能以前の問題よ。はっきり言って才能0の人でも使えるわ」


エル「えー…」



ダンテ(まさかな…)



ハイドン「まぁでも目をみる限り間違いなく光の所持者ホルダーだな」


エル「ひぇっ…」


ハイドン「目をみただけで引かれた…!?」



ハイドンがエルの目を覗くが、エルはすぐに身を引いてしまう



レナード「でもエルの体内のマナの貯蔵量は物凄く多いみたいなんだ」


ブレア「ふむ、マナは大量にあるのに能力が使えない…と」


エルガー「極度に疲労している人にはたまにこういった症状は出るが、それも一時的なものだし、なによりそんなに疲労もしていないな」


マーガレット「不思議ね」


ダンテ「…」


ブレア「能力も使えなくて戦闘能力もないとなると簡単な依頼くらいしかこなせませんね」


ハイドン「まぁこんな子が戦闘なんてこっちがヒヤヒヤするからちょうどいいんじゃないか?」



レナード「あぁ。エルは俺が守るから大丈夫っすよ」


ハイドン「お?」


エルガー「…!」


マーガレット「あらあらあら~?」


コルト「ほっほっほ」


レナード「な、なんだよみんなして…」


エル「えへへ…」


ブレア「ま、そういうことです。ではエルさんは基本的に簡単な依頼がきたらそれをこなすということにしましょうか」


エル「来ないときはどうしたらいいですか?」


ブレア「そうですね…」


ダンテ「コル爺の手伝いとかはどうだ?」


ブレア「え、領主様の娘さんですよ?家事をやらせるなんて…」


エル「いえ、大丈夫です!やらせてください!」


エルガー「いいのか?こう言ってはなんだが、コル爺の家事スキルはかなり高いからコル爺から学ぼうとすると大変だぞ?」


エル「こ、これも成長するための勉強のうちです!」


ブレア「…ということですが、コル爺」


コルト「教鞭を振るえ、ということであれば私は容赦しませんよ?」


ダンテ「おー、こわ」


エル「お願いします!」


コルト「よろしいでしょう」


ブレア「今日はいろいろと買い物に行ったり休みを取ったりした方がいいので、明日からにしましょうか」


コル爺「かしこまりました」


エル「はい!」




ハイドン「エルちゃん良い娘やなぁ」


マーガレット「あの愛くるしさ、ついつい撫でたくなるわね」


エルガー「度が過ぎると嫌われるからほどほどにしておけよ」


マーガレット「わーかってるわよー」




レナード「俺はどうしたらいいっすか…?」


ブレア「レナードはしばらくは修行と勉強の毎日になりますね。私達のギルドに舞い込んで来る依頼は極端なのが多いので、まずは力をつけることに専念しなければなりません」


レナード「極端っていうと…?」


ブレア「大体は強力な魔物の討伐や盗賊などの捕縛などですね。過去には七星獣の一匹を追い払ってくれなんて依頼もありましたよ」


レナード「七星獣…?」


ブレア「それもおいおい勉強していきましょう」


エル「あの、その勉強、わたしも受けていいですか?」


ブレア「もちろんです。では時間が合いやすい夜を勉強の時間としましょうか。昼間はエルさんは家事のお手伝い、レナードは修行です」


エル「わかりました」


レナード「了解っす」


ブレア「では今日は夜までの残りの時間で街に買い物にでも出かけましょうか。私が同行してついでに街の案内も致しましょう」


マーガレット「あ、わたしも行くわ。ちょっとほしいものもあったし」


ハイドン「いってら~。俺はまた寝るわ~」


ダンテ「俺も寝るとしますかね」


エルガー「二人とも仕事しろよ」


コル爺「行ってらっしゃいませ。夕飯を作ってお待ちしております」



この日はブレアの言うとおりに家具やらなんやらをまとめ買いした

レナードは持ち前のお金が少し足りなかったのでブレアに借りることになった

出世払いでいいですよ、とはブレアの言葉だ

そして買い物が終わる頃にはエルとマーガレットが物凄く仲良くなっていたのにはレナードも驚いたものだった


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