第六十一話 決戦、学帝ガリベン編 10月1日 自室
十月一日。一陽十二時。
俺の部屋に、
テッシ以外の、パーティの、みんなが、
あつまっている。
「テッシちゃんは、まだなのか?」
「うん、装備を買いに、行ってるってさー」
「そういえば、今日は、月に一度のレアクラスの装備品が買える日。俺も、今日こそ、装備を買わないとな」
「竜騎士の件とかで、ゴタゴタしてたもんね。一生、買えないパターンかも」
「わしは、テッシ殿に、新装備の購入をまかせておる」
「俺に黙って、みんなは、
着々と、強化してますね……」
「わしは、へんな奴らに、おわれてる身。人に、たのむのは当然じゃ」
「俺だって、発表会事件の件で、
あまり、表には、出たくないですよ」
「ヤキソバ、ヤキソバ」
フェリリが飛んできて、俺の前のイスに座る。
「きのう、寝るまえに、巻物で、しらべたナノ」
「なにをだ?」
「技覚醒なの、知りたがってたじゃん」
「ああ、一応、使ってはいるけど、
あまり、有効に、使えていない気がするよなアレ」
「定期的に、調べてはいたんだけどね。
探し人も、見つかったし、その、あまった分で、ナノ」
「何かわかったのか?」
「いまのところ、このスキルは
『どんな技でも使える』ってことが分かったナノ」
「え? どういうことだ?」
「技覚醒は
『最終スキルステータス以下のレベルで、おぼえる技』で、
『装備してる武器と、使用するスキルが、適正』
なら、すべての技が、使えるみたいナノ」
「『最終スキルステータス以下のレベルで、おぼえる技』
って、どういうことだ?」
「クラスは通常。
LV五ごとに、技やマジックの、スキルを覚えるんだって。
そして、『覚えるときのLV』が
『スキルLV』になってるみたいナノ。
ヤキソバって、発表会のとき、
『最終スキルステータス』が全部、九五になってたナノよね?」
「そうだな」
「だから、ヤキソバは、
LV一〇〇で覚える『マスタースキル』以外の
LV九五までに覚える、この世界に存在する、
すべての、技スキルが、使用可能ナノ」
「マジで!
でも、名前が分からないと、使えないな……」
「その辺は、てきとーに、名前をいって、
あてれば、いいんじゃないの?」
「雑だけど、
分からないんじゃ、仕方ないのう」
「武器が適正じゃないと、
使えないのも、忘れちゃいけないナノよ。
剣の技は、剣を装備してないとダメなの」
「分かってるって。
ウェイブさんの、マスターキャンセラーみたいのは、どうなんだ?」
「装備スキルは、武器LVや、装備条件を満たせていないと、
ムリっぽいナノね。
ウェイブさんの、マスターキャンセラーは、
抵抗力が一三〇ないと、ダメなの」
「なるほど、ムリか」
……俺はふと、違和感を覚えた。
外が、ガヤガヤと騒がしいな……
俺は、窓にむかって、歩きだした。
「危ないナノよ」
危ない?
俺は、窓の外をみて驚いた。
むかいには、スクロール屋がある。
その、まえの道。
はば数メートルの、道の両端に、
人が、土下座して、長蛇の列で、ならんでるじゃないか。
「なんだこりゃ」
「ガリベンが、くるナノよ」
「ガリベン?」
「ちょっと、調べてくるナノよ」
フェリリは、窓から、飛びだしていく。
やがて、
しばらくすると、戻ってきた。
「学帝ガリベン
異神帝王の手下。
六魔帝のひとりで、リーダー的存在。
戦闘能力は、魔帝の中では、低いながら。
学歴の力で、魔帝にまで、のぼりつめた異端児。
人語を介し、流暢にしゃべるその姿から、魔族の尊敬のまとだ。
【セレクトスキル】 ダブルレンジ 技やマジックのレンジが二倍になる なの」
「ん? ステータスは?」
「あれ?
出てないナノね。ボヤけてる」
「ヤキソバ殿は、ガリベンのこと、知らなかったんじゃな」
「なんなんです? ガリベンって」
「毎月、一日の一陽。
正午に、町長に、金をせびりに来るんじゃ。
この道は、町長までの、道のようじゃな」
「……毎月……?
俺、これ見るの、初めてなんですけど……?」
四月一日は、くるのが、結構、おそかったのか。一陽じゃなかった。
五月一日は、異世界語を覚えるのに、缶詰で、窓も、カバーでおおってた。
六月一日は、五月と同じ。
七月一日は、朝はやくに、冒険者協会にいってた。
八月一日は、武器堂に、いった日だったか。
武器堂へ、実際に行ったのは、
三陽だったが、フェリリが暴れてたし、部屋にはいなかった。
九月一日は、昼前に、塔に出かけた。
なるほど。
「自己解決しました」
「ヤキソバ殿……
まさか知らなかったとは。
この宿が安いのも、そのせいかもしれんのう」
「そういえば、武器堂の人。
『今日、ひとが多いのは、レアクラスの武器が買えるからだけじゃない』
って言ってましたね」
「みんな、巻き込まれたくなかったんじゃのう」
「巻き込まれる?」
「ガリベンは、因縁つけて、暴れることがあるんじゃよ」
ふーん。
六魔帝のひとり、学帝ガリベンか――。




