第五十九話 ガッツの搭6階 VS竜騎士その2
「まてーっ」
妹だ。
妹はテッシちゃんの腕の上に、乗っている。
「お前、何やってんだ?」
「お兄ちゃん! いま助けにいくよっ!」
こいつまさか、隣の塔から飛び移るつもりか?
「大丈夫だ! こなくていいぞ! 危険だ!」
「大丈夫! 届くよ!」
テッシちゃんは、ふりかぶり。投げた。
妹はスタイリッシュに飛んだ。
回転しながら、塔のぎりぎりの縁に着地した。
そこに突風が吹いた。
妹は両腕をバタバタと動かし、バランスを取ろうともがく。が。
うしろむきに落ちた。
「おい、テレポで戻れ!」俺は声を出すが――下からドスンという音が響いた。
「いたたー」魔話器から送られてくる妹の声。
「大丈夫かよ。なんでテレポで戻らなかったんだよ」
「この世界の体は、頑丈だから平気だよ。それよりも、今からお兄ちゃんのいる塔に登って、わたしも加勢するから!」
おいおい。本当に平気かよ。
「ヤキソバさん。わたしも隣の塔を登るデス」
俺はテッシちゃんの方を向いた。
テッシちゃんはとなりの塔から飛び降りた。
「奴らが来る前に、お前らを倒さないとな」キリュウが言う。
こいつも、塔から躊躇なく飛び降りる奴らとは、戦いたくないだろうな……
カゲヤマさんの、力の護符はこのターンまでか。
少し距離を取ってた敵が、じりじりと詰めてくる。
ゆっくりと、竜をふり回すキリュウ――黒竜と同時に飛び込んできた。
カゲヤマさんは、守りの護符を俺にはりつける。
敵はボディプレスを使う。
俺は二枚おろしで迎撃。
ウェイブさんは、通常攻撃をキャンセルして、キャンセルチャージ。
一攻防が終わり。二攻防目。
続いて敵は、ブラックブレス。
俺は黒いブレスを受けつつ、すずめの涙突き。
突きがヒットする。
「ゴホゴホ」 俺はせき込む。
カゲヤマさんは何もせず。
ウェイブさんはふつう突き。攻撃が当たる。
二攻防目が終わる。三攻防目
そこで、カゲヤマさんは減小の呪符を使う。
二攻防目に、カゲヤマさんが何もしなかったのは、このためか。
俺は『なで切り』をキャンセル。暴飲暴食を使う。
雑で荒々しい剣技が、竜にヒットする。
俺のBPは+二〇〇〇で BP五七九〇。
相手は減小の呪符で、二〇〇〇下がってBP五〇〇〇。
さらに、力の護符でダメージアップか。
ターンが終わる。
【魔卓の表示】
守りの護符、ヤキソバの受けるダメージ。二ターンの間 一/三減少。
ボディプレス、ヤキソバに 一一〇〇ダメージ。
二枚おろし、クロに 六三二ダメージ。
キャンセルチャージ、ウェイブはチャージした。
ブラックブレス、ヤキソバに 八三〇ダメージ。
ブラックブレス、ウェイブに 一〇五五ダメージ。
すずめの涙突き、クロに 四九六ダメージ。
ふつう突き、クロに 三〇五ダメージ。
暴飲暴食、クロに 一四五〇ダメージ。
キリュウ LV三〇 HP 六七〇〇/六七〇〇 BP四五〇〇
クロリュウ LV八〇 HP 二六九七/八〇〇〇 BP七〇〇〇
ヤキソバ LV二九 HP 二八六〇/六五九〇 BP三七九〇
カゲヤマ LV二九 HP 五〇九四/六二〇〇 BP三四〇〇
ウェイブ LV二七 HP 二六三六/五九〇〇 BP三七〇〇
ちょっときわどいか。
敵はBP以外は、こっちのステを知らないはず。
キリュウは黒竜にのり、空を飛びはじめた。
冷や汗がみえる。焦ってるのか?
少しパターン変えてきたな。それとも逃げるのか?
キリュウはこちらの上空を、いったり来たりし始めた。
すれ違うたびに、俺を先頭にし隊列を動かす。
俺は少し面倒に感じはじめた。
その時。
キリュウと黒竜は急降下し、俺の目の前に降り立った。
そして、黒竜は息を吸い込む――ブラックブレスか。
かく乱し、こちらの隊列が乱れ、揃ったところでブラックブレスを使う。
そして、出来るだけダメージを与える対象を、増やす作戦か。
黒竜がブレスを吐く――そのとき。「セカンドウェポン~」そういうと、ウェイブは刃のついた先端を上にして、槍を立てた。
槍は、周りの黒いほこりを巻き込み、姿を変えていく。
やがて槍は先刻とは違う、流線形の形へと姿を変える。
「キャンセルハンド~」
そういうと手を前に出し、敵のブレスを消し去った。
ステータスを見るとウェイブさんのBPは、さっきまでよりも二〇〇〇高い。
BP五七〇〇まで上がっている。
これと、キャンセルチャージ二回分の、BP七七〇〇で消したのか。
「セカンドウェポンは『連携参加中に、通常攻撃を一定回数おこなう』などの条件によって姿を変える。条件変化型の武器だよ。スキルが変化する武器もあるよ~」




