第五十五話 ガッツの塔3階
『四階に進むには、宝箱に入った鍵が必要です』
なぜか、親切な看板がある。
「あー、これは面倒だわ」
「ほらー いったでしょ。お兄ちゃん」
三階を歩き回ると、宝箱を見つけた。赤と金で光ってる。大き目の宝箱だ。
俺はその前に座り、手をかけた。
「ちょっとまって~」
「ん? なんじゃ?」
「宝箱には、罠が仕掛けられてるよ~」
「そうなんですか?」
「そうだよ~」
「そうなのかのう」
カゲヤマさん、ダンジョンには疎いのかな。
「どうすれば良いんですか?」
「トラップ解除の、マジックやスクロールを――」ウェイブが言い、「あ、それ。ないです」俺が言った。
「ないのう」
「……じゃあ、わたしがあけるよ~。ムーブハンド~」
ウェイブさんから離れたところ。
そこに、ウェイブさんの手を真似た、白い腕が出現した。
俺はそれをみて、宝箱から離れた。
「開けるよ~」
白い腕が宝箱を開けたとたん。
宝箱の周りに、落とし穴が出現した。
あぶねーなこれ。
「これは四レンジ先まで使えるから、ガンガン開けるよ~」
「お願いします」
俺たちは次々と、宝箱を開けていった。
竹やりが下から出てくるもの。
炎が降りそそぐもの。
取り囲むレーザーが照射されるもの。
にせのお札が降ってくるもの。
悪臭がたちこめるもの。
爆発。炎上。大合唱。
やがて、なにも起きない宝箱に出くわしたした。
「これか?」
「わたしがチェックするナノ」
フェリリが飛んでいき上から覗きこんだ。
「これっぽいナノ」
フェリリは、鍵をひとつ持って帰ってきた。
長さ二十センチくらいの、大き目の鍵だ。
「やっと見つけたか」
そこに、妹から通信が入った。
「お兄ちゃん!」
「おっマヤか、鍵みつけたぞ。俺のが早かったな」
「それどころじゃないよ!
お兄ちゃん、今わたしたちの悪口言ってるでしょ」
「言ってねーよ!」
「嘘ついたって分かるんだよ!
今、テッシちゃんが悪口をいわれ続けてて、ついに泣いちゃったんだよ!」
「いやいや、今、お前と話してるじゃねーか、俺」
「あっ。お兄ちゃんがお札をまいてる。じゃーいくね」
会話はとぎれた。
べつに切る必要ねーし。
それ多分、偽札だし……。
「むこうに、ヤキソバ殿の偽者がいたんじゃろうか?」
「そういう罠だったんでしょ」
俺は鍵をもって四階に上がった。
階段を上がると、鍵はとけるように消えた。
「また罠がセットされたのかのう」
「かもしれないですね」
そこに妹から通信が入る。
「お兄ちゃん……私たち、塔の外に放りだされちゃった……」
アホ……。




