第五十二話 ガッツの塔1階
草原にガッツの塔はたたずむ。
外壁には光の走るラインが通っており、どこか近代的なふんいきだ。
光を取り入れる部分があり、中も暗くはなさそうだ。
「誰が。なんのために。どうしてこんな場所に建てたんだろうな」
「さー」
「しかも、二本も。不思議じゃのう」
「あっ。そうです、そうです。ムゴワの中身をヤキソバさんに渡さないとデス」
テッシちゃんは、魔輪ムゴワを取り出した。
「また、箱を使うことになるとは……」
預けにくい物も、持ってきているから。
それを入れるために、箱は持ってきていた。
中身は、ほぼカラだったが。
「活動不能かいふく薬は五本わたすよ。こっちも五本。足りるか?」
「どっちかのパーティだけ、沢山つかうとかになったら、五本じゃ足りないのう」
「まあテレポあるし~。いざとなったら、帰ればいいよ~」
「相手が飛んで逃げるの前提なら、片方だけでも塔に登るの失敗したら、クエ失敗なんだからね? 絶対失敗しないでねお兄ちゃん」
「できるだけ頑張るわ」俺は言った。
自分は、絶対成功すると思ってるのが、妹らしいな。
妹は左の塔、俺は右の塔に入ることになった。
スタートダッシュといわんばかりに、妹は走っていった。
続くテッシちゃん。
「俺たちも行きますか」
「了解じゃ」
「は~い」
俺たちの方も塔の中に入った。
「ちょっとステータス確認したいので、武器を抜いてもらって良いですか?」
みんなは武器を抜いた。
ヤキソバ LV二六 ショウニン
HP 五九六〇/ 五九六〇 BP三四六〇
カゲヤマ LV二六 オンミョウジ LV二六 ニンジャ
HP 五七〇〇/ 五七〇〇 BP三二〇〇
ウェイブ LV二五 デリーター
HP 五五〇〇/ 五五〇〇 BP三五〇〇
デリーター?
「すいません。デリーターってどんなクラスです?」
「説明するのめんどくさい~。戦闘になれば分かるよ~」
「それもそうじゃのう」
おいおい。
カゲヤマさん納得しちゃったよ。
いきなり強いやつが、出なきゃいいけどな。
歩きながら話す俺たち。
「ウェイブさんふつうにレベル高いですね。SP高くて、セレクターだってバレなかったんですか?」
「なんで知ってるの~? まあいっか~。SPを非表示にしてたんだよ~」
そうなのか。
ついでにギルドに誘ってみるか。
「俺のギルドに入りませんか? 全員セレクターで、バレても安心ですよ?」
「入る~」
「入っちゃった!」
「よろしくなのじゃ」
「よろ~」
「ウェイブさんって冒険者長いんですか?」
「五か月前にこの世界にきたんだよ~」
「わしもそうじゃ」
「俺もですね」
みんな、俺と同じ時期か。
異世界からきたってのは、ガイドブックの情報か?
角を曲がると前方に敵。
たかさ二メートルほどの樹木が、服を着て歩いていた。
むこうはこちらに気が付いたようだ。
「ヤキソバって冒険者協会で、全然スキルチェックしないけど。新しいの覚えてるよ?」フェリリが言った。
「早くいえよ……今いうのかよ。っていうか。冒険者協会で、そういうことできるのかよ」
「ヤキソバ殿は、ほんとうに抜けてるのう……」
「いっちょ、やってみますか~」




