第四十四話 マヤの自宅
「あれ? マヤさん、今の発言おかしくないですか?」
「え? なにかおかしいこといった?」
「だって転生の部屋って、そこから出て異世界にいったときに、記憶が消えるんですよ?」
「そうだね」
「なんで記憶があるんですか?」
「だってわたし、記憶を引きついだもん」
「えっ、それ本当ですか?」
「うん、そうしたらもう一個なんかくれるっていうから、それでMP一万もらった」
ちょっとまて、ちょっとまて。
混乱してきた。
記憶がある?
俺は思いきってきいてみた。
「マヤさんって、俺の妹じゃないんですか?」
「あれ? やっぱりお兄ちゃんなの?」
「え?」
え? なんだ?
「記憶があるなら、なんで言わなかったんだ?」
「聞いたじゃん」
「え?」
「だからさー『どうしてわたしの名前を知ってるんですか?』ってきいたじゃん。そしたら、お兄ちゃんが『周りの人にきいた』って」
「いや、俺は『どうして名前知ってるんですか』って、マヤさんが聞いてくるから。ああ、マヤは記憶がないんだなって……」
「――だって、お兄ちゃんだったとしても、お兄ちゃんに記憶がなかったら、わたし完全に変な人じゃん。なんで兄妹だって言ってくれなかったの?」
おいおい。
「いや……だって……お前がああ答えた時点で、マヤの記憶がないのは確定なんだし――そこで『兄妹だよ』なんて言ったら、完全に変な人だろ俺……」
「だいじょうぶだよ! お兄ちゃんは元から変な人だし!」
「……なんだよそれ……っていうかお前、妖精がいないじゃねーか……」
「なにそれ?」
「……フェリリだよ。記憶を引きついだら、妖精が箱に入ってるんじゃないのか……?」
「……入ってなかったけど……?」
「入ってなかった……?
マヤは異世界語をどうやって覚えたんだ……?」
「普通に覚えたけど?」
「あっそう……」
……なんかものすごい嫌な予感がする、異世界語については、ここで切り上げることにした。
「記憶を引きついだら、みんな妖精がついてるんだと思ってたんだがな……」
「そうでもなかったみたいナノね……」
「わたしも妖精さんほしかったなー。
……そういえば、テッシちゃんのアイテム、結局わからなかったね……」
「……そうナノねぇ……魔輪ムゴワとしか、分からなかったね……」
「でも、ちょっとだけ分かるデス」
「……そうなんですか?」
「はいデス! これ引っぱると伸びるデス!」
テッシちゃんは魔輪ムゴワを、両手でつかんで引っぱると、腕輪は縦長に伸びた。
どうやら、この腕輪はグニャグニャしているみたいだ。
「ヤキソバさん、ちょっと手をこの中に、入れてみてくださいデス」
俺は、腕輪に右手を入れた。
すると、俺の手首から先が消えた。
「うわっ」俺はおどろいて、手を引っこ抜いた。
「驚いたデスか?
この腕輪は中に入れたものを消す力があるですよ」
「そうなんだ……」
「出すときは腕輪を持って『~をだせ』って言うと出るデスよ。バトルの使い方は分からないんですけど……」
「だから、引っ越しの今もってきたんだね……収納できるから」
「なるほどのう」
「これからのテッシちゃんはふくろ係だねー」
「まかせるデス!」
「ふくろ係でいいのか……」
……その後、俺たちは引っ越しをすませ、マヤは――妹は宿の住人になった。




