第四十二話 復活の妹編 8月3日 宿
八月三日、一陽六時。
――目がさめた俺は、背のびをすると窓を開け、カバーを外した。窓の外についている、モンスターよけのものだ。
ドアをたたく音がする。
……誰だよ……?
……俺はねんのため、武器をうしろ手にもってドアを開けた。
――兄貴やチンピラの組織に、狙われていることを忘れてはいけない。
「おはー」
「お、おはよう」
マヤさんか。
昨日、マヤさんはテッシちゃんと一緒に、カゲヤマさんの部屋にとまったんだったか。
しかし、アポイントメントを取ってから来てくれよ!
「なにしてんの?」
「特には何もしてないですね。でも、これから歯をみがきにいこうかなと」
「わたしもいく」
「じゃあ、カゲヤマさんも誘ってください」
「うん、わかった」
ふたりだと気まずいからな。
フェリリは寝てるし。
このさいだ、妹もこの宿の住人になってもらおう。
◆ ◆ ◆
宿の洗面所で歯をみがいていると、カゲヤマさんとマヤさんがきた。
カゲヤマさんは、また水玉のパジャマを着ていた。
「おはようございます」
「おはようじゃ」
「おはよー」
「マヤさんはついさっき、あいさつしましたけどね」
「ヤキソバさんは朝あった同じ人と、昼に出会ったらあいさつしないの?」
「まあ……そうかもしれないですけど」
なんか違くね?
いや、あってるのか?
「それでさー……あのー」
マヤさんは、何かを言いたげだ。
「その先は、わしからいおう」
――すこし会話がとぎれた。
……なんだよ……
言うんじゃなかったのかよ……
俺はクチに水をふくむ。
「実はマヤ殿は、この宿に住むことになったんじゃ」
俺は洗面台にみずを、ゆっくりとはき出した。
「そうなんですか。住民がふえてうれしいですね」
このひと絶対、まえに俺がやった、水をブーっての狙ってただろ……
カゲヤマさんは手をグーにして、親指をたてていた。
マヤさんが下をむいて、ブラッシングをしてるのを見て、俺はうなずいた。
とりあえず、カゲヤマさんナイス!
テッシちゃんも協力したんだろうけれど。
「今日の予定はどうするかのう」
「じゃあ、わたしの引っ越しの手伝いしてよ!」
「わかりました。手伝いましょう」
◆ ◆ ◆
一陽の十三時。
マヤさんの自宅にテッシ以外のみんなが集まっていた。
最後のひとりのテッシがやって来た。
「おそくなりましたデス」
「いや。みんな、今来たところだよ」
「じつは遅れた理由としてはデスね……
……ちょっと悩んでいたからでして……持っていこうかと――」
「……なにを?」
「……これなんデス……」
小声でそういうと、テッシは銀色の腕輪をとりだした。
「……なんですかこれ……?」
「……これ、実はセレクトアイテムなんデス……」




