第三十五話 VS棒っすトロール
「うーん、ここら辺かな?」
マヤさんは、ガイドブックをチェックする。
俺たちは森の中、あたらしい狩場へ、むかっていた。
「活動不能を回復する薬は、三本しかないから、ヤバいとおもったら帰りますよ」
「三本つかい切るまで、たたかっちゃおうよ」
「マヤさんダメっすよ。
高いんですからね、これ。
ところで、どのくらいの強さの敵と、戦うんですか?」
「それはひみつ」
「なんでですか!
俺にはみんなをロストさせない、責任があるんですよ?」
「大丈夫だって、なんとかなるよ!」
「ずいぶんと、手をやいているデスね」
「そうじゃのう」
「あっ、見えてきたよ!」
森をつきすすむと、一軒の木の家。
みるからにボロ屋で、ぶきみに巨大。
そこから出てくる、三メートルはあろうかという巨人。
その巨人は緑色。
肩から腰にかけて、ななめにかけた、モサモサの服。
巨人は、二本の木の棒をもっており、
棒は手元はほそく、先端にいくにしたがって、太くなっていく。
手元のもち手は、黄ばんだ、細い布地で、グルグル巻きにされている。
「棒っすトロール
LV六五 HP九〇〇〇 BP五〇〇〇
トロールの亜種で、棒が大スキ。
でも、棒を投げたりして、あつかいはけっこうザツ。
うそをつくと、丸い耳がとがるらしい。
戦闘狂で、冒険者がくるのを楽しみにしている ナノ」
なんか強そうじゃね。
っていうか、ヤバいだろこれ……
「やめましょう、こいつ強そうですからね」
「おーい、お前! ナマイキなんだよ。やっつけてやる!」マヤさんが大声をはり上げている。
「ちょっとちょっと!」
俺はマヤさんに駆けより、彼女の前へでる。
「大丈夫だって、わたしがワンパンで、たおしちゃうからさ」
テッシ、カゲヤマ、フェリリがよってくる。
棒っすトロールは、ゆっくりと、こちらへ歩みよる。
「俺たちが時間をかせぐので、
マヤさんはマジックで、攻撃してください」
「あいよー」
うしろを横目でみる俺に、マヤさんは左手をふり返事する。
「大丈夫かのう……」




