第三十四話 郊外
「で、狩場はどこにいくんじゃ? ヤキソバ殿?」
「お、俺ですか?」
「ヤキソバ殿が、リーダーなんだから当然じゃろう? 違うんじゃろうか? わしはずっと、そうおもっとったぞ?」
「俺はべつに、リーダーじゃないですよ」
「わたしをパーティに誘ったのは、誰でしたデス?」
「俺ですね」
「わしをパーティに誘ったのは?」
「俺ですね」
「……わたしをピーティーに誘ったのは?」
「俺ですね、あれー?」
「あれー、じゃないデスよ。ヤキソバさんがギルマスですよ! ギルドマスターですよ! ギルマス! 初のおしごと、やってくださいデス!」
「初ってことは、やっぱり、いままでは、俺じゃなかったんじゃね?」
「たとえ、いままでは、そうじゃないとしてもデスねー。いまからは、ギルマスですよ?」
「まいったなー……」
「ねえ、なんでもいいから、はやくしてよー。はやくきめてよー」
おいおい、なんなんだよ、みんなして。
俺は冒険者狩場ガイドブックに、目をとおした。
こんなことで、いちいち、フェリリの生命力をつかっていられないからな。
「みなさん、希望の狩場とかあります?」
「あったら、いっておるわい」
「いや、たとえば、戦いたくないタイプのモンスターとか」
「BP高いやつにしてよー」
「いままでで、一番BPが高い敵ってスケルトンでしたよね。
ふだん、ひまそうにしてます、みたいなモンスター。
ちょっと、親近感のある」
「BP三〇〇〇じゃったかのう」
「じゃあ、BP四〇〇〇以上の狩場だね。いってみよー」
「えっ、ちょっと、まずいんじゃ……」
「わたしの魔法みたでしょ? 大丈夫だよ」
「だってお金が……
マヤさんだって、がんばってためた、バイトのお金でしょうに」
「ヤキソバ殿。ヤキソバ殿っ」
カゲヤマさんが、耳うちしてくる。
「ここは、妹さんの希望を優先するんじゃ。苦戦するようなら、妹さんも大人しくなるじゃろ」
「妹は、そんな、殊勝な人間じゃないですよ」
「そうなんデスか?」
「ねえ、またわたしだけ、のけ者なのー? なに話してるのー?」
「わかりましたマヤさん。
BP四〇〇〇以上にしましょう」
「大丈夫かのう」
「だいじょぶデスよ。お金なら、あるていど、魔源クリスタルで、もどりますデス。マヤさんが魔法つかっても、ぜんぜん、よゆーですよ」
「魔源クリスタル? なにそれ?」
「こういうもので、敵の経験値を吸収するんじゃ。吸収しきると光って、高額で売れるんじゃよ」
カゲヤマさんは胸元から、
クリスタルを取りだして、妹にみせる。
「ふーん。これいくら?」
「これは光ると五万クリじゃのう」
「じゃあ、スクロールをガンガンつかっても、大丈夫だね」
「五万ですよ? 元とれますかね。ひとりで複数つけても、この魔源クリスタルは、溜まるのがおそくなって、意味がないんですよ」
「みんなのクリスタルを、わたしにくれればいいよ」
「えっ」
「みんなの光った魔源クリスタルで、わたしのスクロール代をはらって、あまったお金を等分すれば、解決だよ!」
「そんな! みんなだって、お金が必要なんですよ!」
「まあまあ、ヤキソバさん。
マヤさんは初参加なんですし、とりあえず、それにしますデスよ」
「そうじゃのう。
ここはマヤ殿の意見を尊重するのがよかろう」
「そうですか……みんながそう言うなら、わかりました……」俺はため息をつく。
みんないいのかよ、本当にこれで……




