第三十二話 再会の妹編 喫茶店
俺は声が出なかった。
数秒のち、しぼり出すようにいった。
「あの……周りの人がよんでるのをきいて、それで――」
「そうですか――それでご注文は?」
俺は、てきとうに選んだ、注文をいった。
注文をきくと、マヤさんはふり返り、
俺から遠ざかっていった。
そのうしろ姿を、俺はどうすることも、できなかった。
俺たちは食事のあと。
店をのぞめる、離れたところで作戦会議をする。
「なんでだよマヤ!」
「おちつくナノ。
ヤキソバだって、こうなること、わかっていたはずだよね?」
「それはそうですけど……」
「とりあえず、パーティへさそうデス」
「ウェイトレスをいきなり冒険にさそうって、
ちょーっと、不自然じゃないですかね……」
「それもそうじゃのう」
どうしたもんか。
「わたしに考えがあるデス。
とりあえず、マヤさんのお仕事が終わる時間まで、待つですよ」
◆ ◆ ◆
店の外で待っていた俺たちの元へ、フェリリが帰ってくる。
どうやら、終業時間になったようだ。
テッシちゃんは、かんじんの、考えとやらを教えてくれない。
となりの、テッシちゃんの肩をゆすぶって起こす。
テッシちゃんは、頭を大きくゆらす。
テッシちゃんは予想より頭をふり、俺の歯にぶつかった。
いてえ。
「はっ、すみませんデス。いってくるです」
「なにをするのかのう」
「だいじょぶデス。
ぜったい、連れてきますから。
ヤキソバさんはスタンバイしててください」
「わかった、まってるよ」
「どうするつもり、なんじゃろうか」
「わかりません」
そして、テッシちゃんはかけていく。
店の裏口から、テッシちゃんとマヤさんが出てきて、
まっすぐ、こちらへむかってくる。
「すげー、テッシちゃんどうやったんだ?」
妹が三メートルばかりの距離まで来ると、
テッシちゃんはこっちへきて、小声でいう。
「ね? きたデスよ?」
「なんて言ったんですか?」
「あなたに興味ある男性がいて、
冒険者のパーティ――いっしょに、組んでほしいっていったデス」
「こ、こまるよ、そんなこと言うなんて……」
「パーティに入れちゃえば、こっちのもんデスよ!
あとは、煮るなり焼くなりデス」
妹は視線をななめ下にそらして、こっちをみない。
どうしたもんか……
「あのー、マヤさん?
じつは俺、パーティメンバーをさがしていてですね――」
俺は、妹の顔色をうかがう。
「それでマヤさんには、なみなみならぬ、
才能をかんじるんですよ――」
恋愛感情があって――みたいな、
ふんいきには、したくない。
マジで。
「それでマヤさんにも――」
「いーよ」
えっ。
「ほんとうですか?」俺は信じられず、聞きかえす。
「パーティに入ってもいいよ」
なんか、あっさり成功したな。
「やったのう、ヤキソバ殿」
「大成功ですね。かんぺきデス」
二人はよろこぶ。
「で――これからどうしようか」
「戦闘ですよ――当然デス!
みんなで、いっしょに戦って、連帯感を強めるデスよ」
「あのさー。
わたしって『レベル一』なんだけど……」
「わかってますデスよ、そんなこと――最初はみんなルーキーですよ」
「じゃあ最初は『ダサねずみ』からかのう」
みんなは、目的地へむかって、歩きはじめる。
俺は前方の妹へむかって、話しかける。
「マヤさん、ステータスをみてもいいですか?
チェックしておきたいので」
「いーよ」
フェリリに、こっそり耳うちする。
「フェリリ、いも――じゃない。
マヤさんのステータスみてくれ。
セレクターの証拠をみつける」
「うたぐり深いよね、ヤキソバ」
「十中八九、妹にまちがいないとおもうが。いちおうな」
「マヤ LV一
HP二八〇 BP九〇 SP九〇 MP一〇一一〇
うーん、とくに隠れたスキルはなさそうなのね。
今のところはだけど――」
「そっかー、ん?
おい……ちょっとまて……」




