第三十一話 捜索
「冷やかしみたいに、なっちまったな」
「たくさん、硬貨をつかったから、許してくれるんじゃないかのう」
みんなで、アクセサリーを見ていた。
「わたしはこれ買うデス」
「はい、つつみますね」フードワの女性は、商品を包む。
「この仕事、長いんデスか?」
「いえ、きたのは最近ですね。
この仕事はじめたのも、フードワになったのも」
「フードワになった?」
どういうことだ?
「ええ、クラスチェンジでなったんです。フードワに」
「そんなことできるんですか?」
「はい。けっこう、多いとおもいますよ、そういう人。
クラスチェンジをして、レベルを上げることにより、
魔源で、体が変質していって、種族を変えられるんです」
ん?
ということは?
俺はテッシちゃんを手まねきして呼ぶ。
「なんデスか?」
「テッシちゃんって、前世と髪色が違うんだけど、
クラスチェンジで変えたの?」店員さんに聞かれないように話す。
「いえ美容院ですよ。
魔源で変質させて変えたんです。
髪色くらいで、クラスチェンジなんてしませんよ。
というか、レベルあげられなかったから、講義うけていたんデスし」
そっか。
そうだよな。
そりゃそうだ。
「どうしたナノ?」
「俺ってフェリリに、妹と一香ちゃんをさがすように、たのんだだろ?
そのときって、さがす条件は、外見を優先させたじゃないか」
「そうなのね」
「それって、名前は転生するときに、かえる可能性はあるけれど、
外見は大きく、変わらないと思ったからなんだよ」
「そうだったの?」
「ああ、そうなんだ」
「やっぱり、テッシちゃんの条件。
ハダが一センチ以上、すけてる人をリストアップしたのは、無駄だったナノ」
え?
なにそれ……
この町にそんな人、そんなにいんの? マジ?
「なんの話デスか?」
「い、いやなんでもないよ……テッシちゃん」
これは、いろいろ恥ずかしい。
「とにかく、名前の方を優先してさがせば、
妹さがしも、ぐっと、近づくとおもうんだよ」
「そういうことデスか、善はいそげですね」
「はやく帰って、ヤキソバ殿の妹さがし開始じゃのう。
店員さん、これくださいなのじゃ」
俺たちは、洞窟をでることにする。
店の外にでると、町のひとに、よび止められた。
「お帰りですか?
モンスターをたおせるなら、
こっちの、『働き蟻地獄』の通路から出ると早いですよ。
またよろしく」
俺は通路を走る。
とちゅうで、幽霊船に出くわす。
「ヤキソバは、レベルアップでBP二〇〇〇以上になったから、
普通に入れるナノ」
「マジかよ」
俺は幽霊船の障壁の中へ入り、そっこうでたおした。
通路をすすむと、
俺がたおした働き蟻地獄の、結晶化された角をみつけた。
ということは、ここは洞窟の前か。
俺たちは、そこから外へでて、町へかえった。
宿へもどり、フェリリが巻物でしらべると、
けっこうな数の人間がヒットした。
俺たちは近場から、手あたり次第にしらべることにした。
「せいかくに判断できそうなのは、ヤキソバさんだけデスからね」
みんなで、手わけして探すのではなく、
俺がひとりひとり、確認することになった。
かんたんには、見つからないだろう、そう思ってたが。
そのときは、意外とはやくきた。
「妹だ」
五件目のことだった。
そこは、一軒の喫茶店。
ひとりのウェイトレスがいた。
年齢もおそらく、妹とそう変わらない。
どことなく、面影があった。
髪は金髪ウェーブで、肩にとどくくらいの長さ。
一部を青いリボンで、しばっているが。
わかる。
こいつは妹だ、まちがいない。
「ヤキソバさん……どうします……?」
「そりゃ声かけるよ……」
やっとか、長かった気がする。
四ヵ月だけど、ずいぶん、長かった気がした。
声かけなきゃ、なんてかけようか。
そうだ。
妹がはじめて、俺の家へきたとき、今ほど仲よくなかった。
でも妹が「お兄ちゃん」と言うようになってからは、距離がちぢまったんだ。
しかし俺は、なにか恥ずかしくて、妹なんて一度も言えなくて、たまに呼ぶときには、名前で呼んでたんだ。
俺はゆっくりと、妹に近づいていき、「――マヤ?」俺が声をかけると、ウェイトレスはふりむき言った。
「あの……どうして、わたしの名前を知ってるんですか……?」




