第三十話 町 VSデク
「ドワーフさん、いますデスかねー」
「どうだろうね」
「地図に載っていないくらい、長い間ふさがれていたんだから、死んじゃってても、不思議じゃないと思うナノ」
「だいじょぶデスよ。きっと、元気にしてるデスドワ」
「テッシちゃん、まざる気マンマンだね……ドワーフに」
がけは急な階段があり、俺たちはおりていく。
「こういうところって、手すりがないから、不安じゃのう……
わしはよく転ぶしのう」
「俺はカゲヤマさんより、フラフラのテッシちゃんのが不安です」
「わたしは、フラフラなれしてるから、平気デスよー」
「テッシちゃんが、落ちそうになったら、
わたしが、タックルで押しもどすナノ!」
「まあ、でもドワーフは生きてると思うよ。あんなに、大きな火がついてますからね」
近づくと、十数メートルは高さがありそうな、太くて大きな煙突。
その上部には、燃えさかる巨大な炎。
住宅とおぼしき建物へちかづくと、中から人がでてきた。
身長は百三十センチほどの、褐色の女性。
「何かごようでしょうか?」
「ドワーフの町があるって、カンバンがあったので遊びにきたナノ」
「そうなんですか、でもここは、フードワの町ですよ」
「えっ、それってどういう……」俺は言葉を返す。
「ここはフードワっていう、ドワーフの親戚の種族がつくった町なんです」
「でも、ドワーフの町って、あったんじゃがのう……」カゲヤマさんは、ホホに指をあてて、首をかしげる。
「それは、便乗しようとして、作ったカンバンですね。ドワーフのが人気あるので」
「そういうのは、よくないとおもうナノ!」
「まあまあ。フェリリさん落ちついて」
「ちゃんと、株分けされていますから。れっきとした親戚みたいなもんですよ」ちょっと、こまったように言う。
「そうなんですか」
「本家にはおとりますが、装備なども作っていますよ。見ていきますか?」
「ええのう……。ちょっと見ていかんか?」
「いいですね。行きましょう」
俺たちは、装備をみることにした。
みんなは、武器のある店へむかって歩きだす。
「あの巨大な炎はなんですか?」
「装備をつくるときの火を、共同でつかっているんです。それで、あそこの炎を各所に配ってるんです。そういう機構がありまして」
「そんなことできるんですか、すごいデスー」
「あのー……装備つくっても、売れるんですかね……入り口ふさがってるのに」
「ああ、べつの入り口があるんですよ。
働きあり地獄っていうモンスターがいて、
そのモンスターが掘った穴で移動して、外部と交流してるんです。
おばけが出る洞窟へ、つながっている方の道は、今はつかっていないですね。
あなた方は、そちらの道から来たのでしょう?」
ふーんそうなのか。
そんなこんな言ってるうちに、俺たちは武器ショップについた。
「よくかんがえると、わたしたちって、装備買ったばかりでしたね」テッシチャンはかがんで、並べられた装備を見くらべる。
「そうだよね。でも、こういうのって、見てるだけでも楽しいですよ」
「これとかええのう……」
「刀はふってみないと、わからないナノ」
「これの試しぶりを、お願いなのじゃ」
「はいはーい」
「それにしても、ドワっていわないですね。残念デス」
「そりゃそうでしょ」
カゲヤマさんが刀をふる音が、トビラごしに聞こえる。
「ええのう、ええのう」
「俺もご一緒しても、よろしいですか?」
俺はトビラを開けて中へ入る。
すると、俺の顔、30センチばかり手前をカゲヤマさんのふる刀が通りすぎる。
「あぶなっ!
なんでこっち側をむいて、ふってるんですか!
鏡みてふって下さいよ」
「出口をみないと、なんだか落ち着かないのじゃ」
硬貨を入れる俺。
「ほら、百クリ入れたから、マトが出ますよ」
ここの試しぶりは、硬貨でマトが出る仕組みになっている。
機械が起動する音。
すると、床の穴が開き。
ゴザの撒きついた人形が出現する。
「うおぉぉお! なにか出てきたのじゃ」
「人形にゴザを、巻きつけたやつですね」
刀をふるカゲヤマさん。
しかし、カゲヤマさんの攻撃はさけられる
「あたらんのじゃ……」
「残念ながら、カゲヤマさんの攻撃は、俺のデクにはあたらない……」
「なんじゃ、レバーで操作できるんか」
リズミカルに左右にさける人形。
「こやつ……、横に速いぞっ……」
「どうしたんですか、カゲヤマさん?
俺の百クリが無駄になりますよ?」
「べつにかまわんのう……」
硬貨を三枚投入する俺。
床がひらき、人形が三体出現する。
「うおおおおおお、増えたのじゃ!」
「知らなかったようですね。
俺のデクは増えるということを」
「はっ」
にぶい音が響きへこむ人形。
「テッシ殿!」
「助太刀にまいったデス!」
「ふん。俺のデクに勝てるとおもっているのか」
「むしろ、ヤキソバの勝利条件が気になるナノ」
俺はさらに三枚硬貨を入れる。
硬貨を入れる音が響く。
「まだ増えるのかのう……」
「カゲヤマさん、あぶないですデス!」
背後からカゲヤマさんにむかう人形。
人形を裂く音。
「お待たせしました」
「ヤキソバ殿!
じゃあこのデクはいったい誰があやつって――」
「わたしナノ!」
「フェリリ殿!」
「俺も参加しますよ、これからはね」
なにやら、硬貨がつぎつぎと入る音がする。
と、どうじに、人形がたくさん床から排出される。
「フェリリさん! なにやってんすか!
それ俺のお金ですよ!」
「だいじょうぶナノ、お札を両替するなの」
機械音がして、お札が両替機に吸いこまれる。
俺はフェリリの元へ走りより、つかまえる。
「やめてください!
お札は両替すると、全部つかっちゃうもんなんですよ!」
「両替しなくても、わたしは全部つかうから、関係ないナノ」
「いったん落ちつこう。
とりあえず落ちつこう。それがいい」
俺はフェリリをなだめ。
三人で汗だくになりながらも、なんとかマトを全てたおした。
「やっと、全部たおせましたデスね……」
「つかれたのう……」
「お客さま……楽しんでるところ、もうし訳ないのですが、商品の方はお決まりになりましたでしょうか……」
「あっ、武器は持ってるのでいいっす。防具とかアクセサリーありますか?」
「そうですか……」




