表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/66

第二十話 VS兄貴その2

「カゲヤマさん」

「なんじゃ?」

「さっきから、二度も、

 『ブランクキャンセル』って言ってますけれど、

 なんなんですか?」

「キャンセルスキルの、使い方のひとつじゃ。

 これを言わないと、

 キャンセルスキルが使えないんじゃ」


 兄貴がステップをふみ、リズムを取っている。

 兄貴がくる!


「わたしも――わたしも、キャンセルスキルをもってますデス!

 ブランクキャンセル!

 ぶっ叩きデス!」テッシちゃんは、ヘビー棒を振りかぶる。

「右ジャブだ!」


 兄貴とテッシちゃんの攻撃は、

 同時に、おたがいの身体へ、すいこまれていく。

 ふたりの身体は、雷光につつまれる。


「カゲヤマさん!

 とりあえず、ひとつだけでも、はじかないと!」

「わかっておる、

 ブランクキャンセル!

 減退の呪符じゃ!」


 札が兄貴へ、むかっていく。

 俺も、なで切りをつかう。

 しかし、ここで、あることに気がつく。


 しまった! 

 兄貴の、もともとのBPが、二一〇〇。

 兄貴の技は、自分のBP-五〇〇。

 カゲヤマの技は、兄貴のBP-五〇〇。

 カゲヤマの、技の下降限界が、七十%なんだから、

 俺の、なで切りは、つかう意味がねえ。

 さっきの、攻防の時の『兄貴のBP一四七〇』って、

 そのことだったんだ。

 カゲヤマの呪符と、俺のなで切りは、兄貴へとむかい。

 やがて、

 順番にヒットする。


 あれ?

 兄貴のBPが一二七〇になっている。

 なんだ?

 ――そうか。

 カゲヤマの減退の呪符は下降限界は七十%。

 だけど、俺のなで切りには、下降限界の表記がない。

 だから、『下降限界七十%』を超えて、へったのか。


 ツバぜり合い状態が終わる――。

 兄貴の右ジャブは、はじかれ、

 兄貴に、五五〇ダメージ。

 俺に視覚には、

 アニキ HP一九四〇/三〇〇〇 と写っている。


 しかし、

 なぜ、フェリリはアニキという名前で、

 巻物の情報を、魔卓へ、送ったのだろうか……?


 ……それはさておき、問題はここからだ!

 兄貴の三連続連携が――あれ?

 兄貴は一歩、後方へ、ふっ飛んでいき、

 追撃をしてこない。


「ふっふっふ、これが、ヘビー棒のスキル。

 ぶっ叩きのKB(ノックバック)デス。

 兄貴の追撃は、わたしには、とどきませんデス!」


 確か、KB(ノックバック)は、

 びっくりさせるなどの意味だったか。

 ぞくに、『のけぞり』などでも使用される。

 KBは、移動させる効果だったのか。


 そうか、連携中は、移動ができない。

 リーチのない攻撃や、技しかないヤツは、

 移動させられると、それ以降は、攻撃が、とどかないんだ。

 兄貴は、連携が終わると、

 さいど、テッシへむかっていく。


「右ジャブだ!」

「ブランクキャンセル!

 もういちど、ぶっ叩きデス!」


 俺とカゲヤマも、なで切りと、減退の呪符で、援護する。

 兄貴は、攻撃をはじかれ、ふっ飛ばされ、ダメージをうける。

 四九〇ダメージ。

 アニキ HP一四五〇/三〇〇〇


「なんどやっても無駄デスよ、兄貴さん!」

「くそがああぁぁっ!」


 兄貴の咆哮がひびきわたる。

 これはイケるか……?


「カゲさん、カゲさん」

「ん? なんじゃ?」兄貴が唸ってる中、俺は横のカゲヤマの肩を、そっとたたい。

「さっき、『キャンセルスキルの、使用法のひとつ』って、

 そういう、言い方をしてませんでしたっけ?

 ほかにも、使い方があるんですか……?」

「別の使い方は、『技の差しかえ』じゃな。

 どっちかっていうと、こっちがメインじゃ」俺を見上げていう。

「どういうことですか?」

「たとえば、技A、技B、技Cの順番で、

 おぬしが、連携を、使用できるとする――」

「はい」

「おぬしが、連携中に、技Aをつかった段階で、

 仲間がピンチになったとする。

 しかし、おぬしはもう、技B、技Cと順番に使うしかない――」

「そうですね」

「ほんとうは、おぬしは、技Dという、

 『状況を、打開できる技がある』のに、

 使用することが、できんのじゃ、こまるじゃろう……?」

「こまっちゃいますね」

「そこで、キャンセルスキルじゃ!」


 カゲヤマさんの瞳が、らんらんと輝いている。


「『技Aの、つぎの技である技B』をキャンセルして、

 『技Dに変更する』ことが、できるんじゃ」

「すごいですね」

「『技Bをキャンセルして技Dにする』場合、

 『技A、技D、技C』と、じゅんばんに、使うことができるんじゃ。

 キャンセルした技Bは、効果はでないが、

 いちおう、発動したとみなされ。

 技Dも、ほかの技のルールと、おなじように。

 一回の連携中に、二度は発動できん。

 使い方は、

 『技Bの発動後、キャンセルと言ってから、技Dの名前を言えばOK』じゃ。

 もちろん、

 技のABCどれをキャンセルしても、おなじように、

 技Dへ、差しかえができるんじゃ」

「すごい便利ですね」

「もちろん、差しかえる技は、

 キャンセルスキルじゃないと、差しかえはできんぞ」

「カゲヤマさん、物知りですね」


 カゲヤマは恥ずかしそうに、ホホをかいている。

 なんとなく、このひとは、口調からして、

 教えたがりの気性が、あるようにみえる。


「忘れておった。

 ツバぜり合い状態になったら、キャンセルして、

 差しかえることはできんぞ。いちおう、いっておくと」


 カゲヤマは両腕をくみ。得意顔でいう。

 ふとみると、

 さっきまで唸ってた兄貴は、汗をたらしながら、下をむいて、

 なにやら、考えこんでいる様子だ。

 いまのうちに、逃げられないだろうか……?

 うーん、

 ちょっと無理そうか……?


「カゲヤマさん。教えてくれて、ありがとデス」


 さっきまで考えていた兄貴は、

 なにかを思いついたように、素早く顔を上げる。

 それに反応して、

 俺たち、四人は、びくりと身体を震わせる。


 アニキ  HP一四五〇/三〇〇〇 BP二一〇〇

 テッシ  HP一三〇五/二一〇〇 BP一七〇〇

 ヤキソバ HP二四〇〇/二四〇〇 BP一一一〇

 カゲヤマ HP二五〇〇/二五〇〇 BP一一〇〇


 兄貴に、手がないなら、このまま勝てるはず。

 兄貴が、こちらへむかう足は、だんだんと、速度を増し。

 やがて、コブシをかまえたまま、

 まえのめりで、走りだす。


「ぶっ叩きデス……!」

「アッパーだ!」

「アッパー BP+一〇〇〇なの!」


 俺とカゲヤマは、なで切りと、減退の呪符で、援護する。

 だが、テッシのダメージは大きい。


 テッシに、四〇七ダメージ。 テッシ HP 八九八

 兄貴に、二九〇ダメージ。 アニキ HP一一六〇


 吹っ飛ばされる兄貴。

 まずい。

 どのみち、ノックバックで、

 連携攻撃ができないと、ふんだ兄貴は、

 一撃の威力で、たたかう方針にしたのか。

 あんな威力の攻撃があるんじゃ、もし、テッシちゃんがやられて、

 俺が、直接、戦うことになったら――。

 俺のBPじゃ、ツバぜり合いが発生すると、

 攻撃が、はじかれまくるし、勝負にならねぇ。

 ヤバいな、これは……


「ピンチですね、ヤキソバさん……」テッシちゃんが背中で語る。

「ヤキソバさん、すみません。

 わたし、ちょっと、冒険しますデス……」こちら側へ、首だけむけて、おさえめの声でいう、テッシちゃん。

 そして、フェリリに、なにかを話しかけている。

 兄貴がむかってくる――。


「ふり下ろしデス!」

「BP+五〇〇なの!」


 それって、ノックバックが、ないやつじゃねーか。

 テッシちゃんは、てきが、一撃の威力を重視したのをみて、

 より、BPの高い技に、変更したのか。

 それをみて、兄貴はニヤリと、片方の口角をあげる。


「右ジャブだ!」


 しまった!

 兄貴は、テッシちゃんが使った技が、ノックバック技じゃないのをみて、

 三連携できる方の技へ、切りかえてきたのか!


「キャンセル! ぶっ叩きデス!」


 おっ。

 テッシちゃんが、ノックバック技へ変更した……!

 兄貴とテッシちゃんの技は、

 ぶつかり、ツバぜり合い状態になる。


「――減退の呪符じゃ!」

「なで切りっ……!」


 雷光がはじけ飛ぶ。

 兄貴はノックバック効果で、一歩ぶん後退する。

 これで、兄貴は、一方的にダメージをうけた。

 テッシちゃんのふり下ろしは、フェイントで、

 これをねらっていたのか。

 しかし、

 キャンセルを言うタイミングも、

 『キャンセルをふくめた時間こみ』の、

 技の発動タイミングだって、

 はじめてなのに、ぶっつけ本番で、よく成功できたよ。

 兄貴の攻撃ははじかれた。

 そして、

 一方的に、五五五ダメージを兄貴へあたえた。


 アニキ  HP 六〇五/三〇〇〇 BP二一〇〇

 テッシ  HP 八九八/二一〇〇 BP一七〇〇


「わたしだって、兄貴さんが、アッパーの後へ繋がる、

 『なんらかの、べつの組み合わせの連携コンボ』を

 隠しもっていた可能性も、考慮してますデス。

 BP+一〇〇のために、

 KB(ノックバック)効果を、すてたりしませんデス」


 まあ、それもそうかもな。

 兄貴の方をみると、まだやる気のようだ。

 ダメージは、わかってるのかも、しれないが、

 兄貴は『こっちのステータスが、わからないはず』だからな。

 兄貴の方は、

 まだ、こっちをおしきって、たおせると、

 おもっているのかな……?

 ん?

 ふとみると、俺の右手が光っている。

 よし!

 こいつで決めるか!

 俺は、剣をサヤへおさめる。

 兄貴が飛びこんでくる。


「アッパーだぁぁっ!」

「ブランクキャンセル! ぶっ叩きデス!」

「減退の呪符じゃ!」


 俺は、なで切りを使わない。


「おぬし、なにやっとるんじゃ。加勢せい」

「加勢はします。大丈夫です」

「武器を、しまって、おるじゃないか。

 連携中に、アイテムをつかったり、

 武器を出し入れしたり、

 もち手を、かえたりするのも、

 技のひとつとして、カウントされるんじゃぞ。

 コンボがないと、つながらん」


 鍔ぜり合いがおわる。

 テッシに、四四〇ダメージ。

 兄貴に、二七一ダメージ。

 兄貴は、一レンジ、ふっとぶ。


 アニキ  HP 三三四/三〇〇〇 BP二一〇〇

 テッシ  HP 四五八/二一〇〇 BP一七〇〇


 俺は兄貴のところへ、

 すばやく走りよる。

 このターン、俺はまだ、

 連携に、参加していないから、移動できる。

 このタイミングなら、まだ、連携中だ。

 兄貴に、アッパーから、つながる技が、ないのなら――


「左フックだ!」

「左フック BP+〇なの!」


 俺はサヤに、おさめたままの剣へ、手をかけ――。


「居合い抜き!」


 抜きはらった――。


「居合い抜き!

 BP+一五〇〇! 五一二ダメージなの!

 兄貴のHPは〇ナノ!」


 ヒザをつく兄貴。

 よし! 兄貴をたおした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ