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第十九話 VS兄貴

 チンピラの兄貴ぶんが出てきたか……

 俺は巫女の子の、

 口にあるテープをはがし終えた。

 巫女の子は、自身のクチのベトベトを気にして、

 手でさわっている。


 身長一四〇センチの小柄な女の子だ。

 赤いカチューシャを付け、

 腰くらいまである、黒髪のロングヘアは、先端でまとめられている。

 まつげが、ちょっと長い。

 テッシちゃんの方も、

 巫女の手に巻かれた縄を、ほどいたようだ。


「巻物でステータスをみたナノ。

 ミチタカ アニキLV三〇

 HP三〇〇〇 BP三〇〇〇

 スキル 兄貴肌

 パーティの、チンピラの数×三〇〇ポイントBPが上昇、ってあるナノ」


 俺は『兄貴とよばれている者』をみた。

 俺から、やや、はなれた場所。

 三メートルくらい、うえの段差にいる。


 BP三〇〇〇かやべえな。

 でも、これって、みんなで走れば、逃げられるんじゃね。

 兄貴とよばれる男は、格好をつけているのか知らんが、

 すこし、高い所にいるし。


「みんな、走って逃げよう。

 俺のかけ声と、どうじに走ってくれ」


 俺は小声で言う。


「わかったナノ」

「わかりましたです」

「了承したのじゃ」


 チンピラが、兄貴へ、黄色い声えんをおくる中。

 俺たちは、こっそりと逃げるために、

 さいてきな位置へ、にじりよる。


「今だ!」


 俺たちは、まっしぐらに走りだす。


「兄貴いぃぃいい!

 やつらが逃げ出しましたぜ!」


 くそっ!

 お前は兄貴だけをみてろよ――。

 俺たちは、しばらく走りつづけた。


「こっちなのじゃ」


 道を右にまがる。

 なんかい、道をまがっただろう。

 これ、本当にあっているのか?

 いやな予感は的中し。

 いき止まりにぶちあたる。

 道をもどろうとしたとき。

 まがり角から、兄貴が顔をだす。


「すまん……

 もう走れないのじゃ」


 巫女――もとい、カゲヤマはその場へ、へたりこむ。

 これじゃあ、たとえ、

 道をまちがえなくても同じか……


「おーいお前ら!

 ここだ!

 ここにいるぞ!」


 兄貴は、声をはりあげる。


「兄貴のBPが、二一〇〇まで、下がってるナノね。

 チンピラが消えたからみたい。

 兄貴はチンピラをよんでいるけど、

 来るわけないとおもうの。

 あいつらは、はってでしか、動けないナノから」


 いや、あいつらは、くる気がする。

 時間はかけられねえ。


「みんな、おたがいの名前は、

 相手に、聞かれないようにしてくれ、

 ここで、兄貴をたおす!」


 兄貴は、ポケットに、手をいれたまま。

 ゆっくりと、歩いてくる。


「もう、逃げられねーぞ。おい」

「きみは、どんなことができるクラスなのか、

 教えてくれないか……?」


 兄貴をスルーして、

 俺はカゲヤマさんをみて、小声でたずねる。

 テッシちゃんは薬草を食べている。


「得物がないので、

 援護しか、できんのじゃ」うなだれるカゲヤマさん。

「わかりました。援護をおねがいします」


 彼女は、俺の小声での言葉をきくと、

 片足ずつ、たち上がり、俺を見あげて、うなずいた。

 俺たちは、三人で声をあげ。

 パーティを組んだ。

 装備が、ないってことは、

 BPがひくい――攻撃力と守備力が低いってことか。


「兄貴をこっちへ、通さないように、おねがいします。

 俺とこの子が、援護します」俺は、テッシちゃんを見て言い、テッシはうなずく。

「魔卓の機能で、

 『ステータスや、ダメージを可視化した』の。

 みんなの名前を、声に出せないからね。

 だれに、なんダメージあたえたのか、これで、確認してね。

 あいての情報は、巻物から、おくったナノ」

「サンクス」


 俺は視覚化した、ステータスを確認する。


 ヤキソバ ショウニン   LV一〇 HP二四〇〇 BP一一一〇

 テッシ  ダメプリースト LV一〇 HP二一〇〇 BP一七〇〇

 カゲヤマ オンミョウジ  LV一一 HP二五〇〇 BP一一〇〇


 ちゃんと見えるな。

 相手が、視界に入ってないと、見えないから。

 俺が、ほかのパーティメンバーの、前で戦っている場合は、

 フェリリに、まわりを確認してもらう方が、たのもしいがな。


 ステータスは、

 視界の、邪魔にならない範囲に見える。

 すこし、違和感があるが。


 人間は自分の鼻が、つねに視界で、みえ続けている。

 なぜ、それが、気にならないかというと、

 脳が、気にならないように、補正してくれるそうだ。

 なので、普段から、この魔卓の、機能をつかってる人は、

 脳が補正して、気にならなくなるのだろうか?


 俺、テッシちゃん、カゲヤマさんはうなずくと。

 テッシちゃんは、兄貴へむかっていく。

 ゆっくりと、近づく兄貴、

 それに対し、テッシちゃんは、ヘビー棒をふり上げる。


「ふり下ろしデス」


 兄貴は、ポケットから腕を出し、

 右パンチをはなつ。


「右ジャブだ!」


「振り下ろし BP+五〇〇

 右ジャブ  BP-五〇〇 ナノ」


 BP-五〇〇?

 なんだ?

 兄貴の技、BPが減っているじゃないか――。

 ふたりの攻撃は雷光をはなち。

 ツバぜり合いになる。

 よし!

 援護だ!

 ふたりが火花をちらす中。

 俺はテッシちゃんの背後から、右横に身体を出し、

 なで切りをはなつ。

 兄貴に、俺の斬撃がヒットする。


 おなじパーティ内なら、技があたらない。

 かくれて使うには、べんりなルールだ。

 ちょっと、格好がつかないがな。

 とはいっても。

 テッシちゃんにあたると、

 技が失敗するかも、しれないし、

 ツバぜり合いが終了したら、俺が、ねらわれるかもしれない。

 そこは、注意が必要だな。


「ブランクキャンセル!

 減退の呪符じゃ!」


 カゲヤマさんが札をはなつ。

 軽そうな札。

 それは、不思議にも、いきおいを失なわず、

 上下をバタバタと、はためかせ。

 黒いオーラをまとって、まっすぐ、兄貴にむかっていく。


「減退の呪符 キャンセルスキル

 レンジ四 BP-五〇〇 攻防中、対象のBP-五〇〇

 下降限界七十%

 (相手の、下げられるBPは、相手の初期BPの、七十%になるまで)なの」


 フェリリは俺の耳元でささやく。

 おそらく、この距離だと、

 相手には、聴かれていないはずだ。

 攻防中ってのは、ツバぜり合いが終了するまで、

 もしくは、つぎの、自分の技が、発動するくらいまでか……?

 

 相手BP一四七〇。

 いける!

 ちいさな電とともに、

 ツバぜり合い状態が、解除される。

 テッシが、相手の攻撃をはじく。

 上半身をよろめかせる兄貴。

 そして、兄貴に、五一〇ダメージ。

 兄貴の、のこりは、HP二四九〇。

 全然いける!

 しかし、兄貴はさけぶ。

 

「左ジョブ!」兄貴は、上半身をもどすと、技をくり出す。

「左ジャブ BP-五〇〇 なの!」


 兄貴の声に、反応してか、

 フェリリの声に、反応してか。

 テッシは技名をさけぶ。


「ふり下ろしデス!」


 しかし、技は発動しない。

 兄貴は、テッシちゃんをなぐりつける。

 テッシちゃんに、二九〇ダメージ。


「右ストレートだあああぁぁっ!」


 兄貴がふりかぶる。


「右ストレート BP+五〇〇なの!」

「ふり下ろしデス!」


 テッシが言うが、

 なおも、技は発動を開始しない。

 ヘビー棒をふる――が、動きがにぶい。

 テッシは、半身になり、左手を盾にする。

 そこへ、兄貴の右手がヒットした。


 テッシちゃんに、五〇五ダメージ。

 テッシ HP一三〇五/二一〇〇


「ブランクキャンセル! 治癒の呪符じゃ!」


 黄色のオーラをまとう札が、テッシのもとへ飛ぶ。


「治癒の護符 キャンセルスキル レンジ四 

 BP+〇 対象のHPを回復

 効果終了後、この攻防の間は、自身のBP-五〇〇 なの」


 テッシはHP一〇五回復する。

 テッシ HP一四一〇/二一〇〇


「装備がないから。

 護符の効果が減じておる……」カゲヤマは、か細い声でいう。


 兄貴は、攻撃をおえると、

 軽快なステップで、広めに一歩、バックする。

 兄貴の攻撃は、三連携の攻撃か。

 だから、テッシちゃんが、対応できなかったんだな。


「フェリリ。

 呪符にあるレンジって、どのくらいの距離だ?」

「『一レンジは、やく一・五メートル』なの!」

「そなた。そなた」


 カゲヤマが話しかけている。

 俺にか。


「わしは、いま得物をもっとらん。

 呪符は、ソデに入れてたから、使えるんじゃが、

 相手の連続攻撃をうけたら、ひとたまりもない。

 畢竟(ひっきょう)するに、銀髪の子にわしを守らせておくれ」


 カゲヤマは俺の左腕を、自身の両手で、にぎって言う。

 震えがつたわってくる。

 だいぶ、怖がってるな、この子。

 だけど、BPが低いのは、俺もおなじだ。

 テッシちゃんが、やられたら、俺たちは負ける。

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