第十六話 武器堂 レアクラスと違法クラス
「レアクラスって、副産物なんですか?
正直、レアクラスの意味すら、
知らないんですけれど……?」
「うん、ところで、きみは、
どうすれば、クラスの評判の低下を、
おさえられるとおもう……?」
俺はしばし、かんがえる。
「魔法をかけて、
冒険者の考えをあやつったり、
魔法で、冒険者の会話を監視するとか、ですかね……?」
「……きみは、けっこう、怖いことをいうね」
「そうですかね……」
おじさんに、呆れられてしまった……
思いつかないんだから、
仕方ねーじゃねーか。
「きみは、ステータスって、知っているかい?」
腕をくみながら、
おじさんはたずねる。
「筋力とかって、やつですよね?」
「そうそう、でも、アレいがいにも、
ステータスって、種類があるんだよ」
……知らなかった。
ブラインドステータスってやつか?
「どういうもの、なんですか?」
おじさんは、こまり顔でいう。
「正確な、項目は、言えないんだけれど
性格や感情などの項目だね。
つまり、クラスにむいていない気質だと、判断されたら、
クラスチェンジをはじかれるんだよ」
「……人間の心を数値化するなんて、大それてますね……
それに、人間の性格って、
なんらかの、原因で、
変わることもあると、おもうんですけれど……」
俺に、ないしょで、そんなことしてたのか……
他の冒険者は、このことを知っているんだろうか……?
おじさんが、ふつうに、話しているところをみると、
このことは、一般認識なのか……?
「たしかに、大それたことだ。
でも、この試みは、あるていど成功する。
なまけ者の人、パーティをみだす人、
ほかの、冒険者などをおそう人、
悪意をもって、こっそりと、
嫌いなパーティメンバーに、嫌がらせをする人、
犯罪に、走りそうな者、いろいろな人が弾かれた」
「なんか……すごいことになりましたね…
…」
「そうだね、それに、
数値化したことが、こうをそうした。
あるていど、明確な、相関関係をもって、
弾くことができたんだ。
二種類、三種類、あるいは、もっと複数の、
性格や、感情のステータス項目、
その組みあわせで、相関関係が分析された。
いまでも、項目の細分化で、
あたらしい項目が、うまれているし、
分析もすすめているよ。
各クラスによって、
ステータス項目の危険度のランクづけもされ、
さらに、パーティメンバーとの、
性格ステータスとの相性まで、分析された。
もちろん、そのひとの、
クラスとの関係も、おり込み済みでね」
「なんだか、画一化された社会みたいで、怖いですね」
「大手は、クラス取得者ひとりの事件で、
収益が、いちじるしく減る。
保守的になるのも、しかたないのかも、しれないね。
でも、このことを、好機と、とらえた人たちもいたんだ」
「好機と、とらえた人?
インディーズのクラス配給団体とかですかね?」
テッシちゃんは、長椅子で、
かんぜんに横になってる。
本当にゴメン。
「まあ、そんなところだけど、
インディーズとまで、いかなくても、
準大手とか、普通くらいのところも、
大手に弾かれた人を、積極的に勧誘していったよ。
『うちの配給してるクラスなら、貴方たちを受けいれます』ってね」
なんか、セリフが
怪しい勧誘っぽく、きこえるな……
「でも、すこし、おかしくないですか?
収益のために、やってることなのに、
人を弾くなんて。
けっきょく、収益が下がりそうな気がしますけど……
そのことで、文句をいう人がでて、
かんじんの評判の方も、あやしいですし……」
少々、横暴なきがする。
反発がありそうだ。
「大手は、安定性のほうを重要視してるんだよ。
一時期のもうけより、
安定した、そこそこの、収益ってことだね。
けっきょく、なんで弾かれたかは、
ブラックボックス化してるし。
文句も言いにくい。
文句を言ったらいったで、
『ほらほら、そんな性格だから、弾かれたんだよ』って、
言われそうな、ふんいきもあるしね……
でも、いちど、そのクラスになりさえすれば、
かんたんには、弾かれないと思うよ?
一度、そのクラスになってから、はじかれてノークラスになった人。
そういう人は、身におぼえがあるのか、
あまり、クレームをしたって話は、聞かないしね」
「えっ。いちど、そのクラスになっても、
はじかれる場合が、あるんですか……?」
「あるんだよね、それが。
クラス配給団体は、すでに、クラスチェンジした人も、
解除ができるんだ。
戦闘でえた、魔源の徴収をおこなう器具。
それが、おかれているポイントで、
クラス配給団体が『クラス解除申請』をしていると、
『器具が、そのひとを検知した段階で』解除ができる」
「ちょっと、それは酷くないですか?
いきなり、ノークラスになったら、
おさき、真っ暗ですよ……?」
「いやいや、ちょっとした理由では、
すでに、ついているクラスを
剥奪したりはしないよ」
おじさんは首をふりながらいう。
「剥奪されるのは、
おもに、法をやぶった、犯罪者とかってことですか?
ノークラスなら、まともに戦えませんし、
HPがゼロになれば、走って逃げられませんしね」
「そうだね、でも、やつらも、簡単には捕まらないよ。
もし仮に、きみが犯罪者になったら、
クラスを剥奪される状況になった場合、どうする?」
とんでもないことを聞くな、
このおじさんは……
「なんらかの方法で、
クラス配給団体の、主要施設を手中におさめ。
クラスの返還をもとめて、たてこもる。
とかでしょうか……?」
「きみの場合は、そうなんだね……
きみが、犯罪に手をそめないことを祈るよ……
正解は『魔源徴収ポイントをさける』
もしくは『違法クラスにつく』がおもだね」
なんじゃそりゃ……
俺は質問されたから、答えただけなのによ。
しかも、質問だったのに。
いつのまにか、問題みたいに、なってんじゃねーか……
「ところで、魔源徴収ポイントって、
さけられるんですか……?」
「魔源徴収ポイントは、
『公にあるもの』と『隠されてるもの』があって、
かんたんには、さけられないね。
町に入るところにも、ポイントがあるから、
町に入るのも、たいへんだ。
もし、反応したら、発行色の、光がつく魔法をかけられて、
えんえんと、追跡されるよ」
「そんなことになったら、夜も眠れませんね。
まあ、『ちょっ……おまえの発光色ってブルーじゃん……?
それ、今年のニューカラーじゃね……?』
『俺のは、シルバーグリーン。レア色なんだぜ?』
こういう会話とか、しているかもしれないですけど」
「ずいぶん、きらくな犯罪者だね……
もうひとつの方法は、違法なクラスにつくことだね」
「違法なクラスって、
冒険者協会支部の人も、いってましたね。なんなんですか……?」
「違法なクラスってのは、クラスを剥奪されて、
しめだされた、犯罪者などがつくクラスだよ。
おおくは、犯罪者の組織などが、
独自に開発してるんだ」
……そんな組織があるのか。
「『公式で、認可されてるクラス配給団体』ほどには、
経済力もない。
つまり、開発力もない。
なので、大抵は弱いんだけど、
法にふれる技などを、つかってきたりするから、
できれば、関わりたくないものだよね。
ちなみに、『冒険者協会』では
『クラスチェンジ枠として、いっさい、あつかってない』よ」
「どんな技が、あるんですか?」
そういう連中に、
出くわすことも、あるかもしれない。
それに、違法な技というものに、興味もある。
「いろいろあるけど、
さいだいの、特徴は、
LPに、直接ダメージをあたえるものだね」
「そんな技が、あるんですか?」
「そう、かんがえるのも、無理からぬことだよね。
なぜなら、モンスターに対して、
LPダメージをあたえる技は、必要ないからね。
つまり、『対人を考慮した技』ということになる。
これをつかえるやつは、
ほぼ間違いなく、違法なクラスだと思うよ」
「『ほぼ』といういい方なのは……?」
「対人用ってことは『町の警備隊』とか、
『冒険者協会の助っ人』とか、
そういう、なんらかの事情で、対人を想定している、
特殊なクラスに就いている人。
そういう人は、持ってるんじゃないかな?」
「それが、レアクラスですか?」
やっと、レアクラスの話がきけた。
俺の商人が、レアクラスらしいし、
ちょっと、気になっていたんだよな。
「そうだね。そういう、特殊な立場で、必要なクラスも、
レアクラスのひとつだと思うよ。
レアクラスは、非常に弾かれやすいクラスなんだよ。
どれくらい、弾かれやすいとかって、明確な基準はなくて、
まあ俗称だよね。
レアクラスは、大手におおいんだけど、
一説によると、実験だとか」
「……実験?」
「そう、大手はクレームが怖いって、言ったよね。
いわゆる、試作段階で、新型を投入して、
使用者の反応を、みようってことだよ。
もちろん、一定のクオリティは、保たれてるだろうし、
使用者の反応を、見たいってことは、
ふつうのクラスにはない
特殊なスキルがあると思うよ。
ステータスの、性格などの項目も、
クレームしないタイプのひとが、
えらばれているんじゃないかな……?
きみって、泣きねいりとか、
しちゃうタイプかい?」
ふいをうたれて、言葉につまった。
おじさんは小声でつづける。
「……君のクラスである商人は、レアクラスみたいだしね」
「どうして、レアだって、わかったんですか……?」
「店にある器具で、
クラスの承認率がわかるんだよ。
冒険者が、クラスチェンジするときに、
たしょう、お金がかかるんだけど、
そのときに、冒険者が知ることができる、
承認率とおなじだね。
クラス配給団体は、冒険者が、やみくもに申請して、
ひんぱんに、クラスチェンジをしてほしくない。
それを防止するために、お金を取っているんだ。
クラスチェンジのときに、
性格や、感情のステータスをチェックをする。
それに、手間も費用もかかるしね。
しかし、冒険者側からしてみれば、
承認されなかった場合、お金だけ取られる。
なら、せめて、どれくらいの人が、
承認されてるのか、知りたいよね。
レアクラスみたいに、承認率がひくいなら、
ダメもとで、申請してみようってことになる。
きみは承認率をチェックしないで、申請したのかな?」
「自分の場合、友達にすすめられてですね。
知らなかったです」
アイドルの、オーディションみたいなことを、
言ってしまった。
さいしょに、レアクラスが、適正クラスとなっているのは、
『特殊転生をした人だけ』なのかもしれないからだ。
セレクターであることは隠したい。
なので、嘘は仕方がないとおもった。
「承認率以外でも、
武器店で、よく使用されている器具では、
地域に、どのくらいの冒険者がいるか、
メイン、サブのクラスが、どのくらいの人数でいるか、
そういう、いろいろなデータがみれる。
それをつかって、入荷数の調整をしたりして、
商売にやくだてることが、できるんだ。
店がクラスに対して、売れる武器、
冒険者が買える武器が、決まってるってのは、
需要の予想がしやすいって点では、助かるね。
武器を製作する業者も、
商品を無駄に、作りすぎてしまうことが、少なくなるしね。
きみは運がいいよ。
レアクラスを、おもに、あつかってる武器店は、
まい月、一日にしか、ひらかない場合が、おおいんだ。
人数の関係で、あまり需要がないからね」
「だから、きょうは、
こんなに、ひとが多いんですね」
合点がいった。
「理由は、それだけじゃ、ないんだけどね……
そこのお嬢さんは、大手のクラスだから、
この武器堂で買っていって。
きみはレアクラスだから、この町の
『レアクラスの区画にある店』で買っていくといいよ。
この武器堂の外だけど、
そこまで、遠いところじゃないし」
テッシちゃんのクラスは、
大手配給だったのか……
「色々教えてくれて、ありがとうございます」
「今後、この店で、必要な装備があったら、よろしくね」
おじさんは会釈をする。
俺は会釈をかえすと、
フェリリをつついて起こした。
起きたフェリリは、
テッシちゃんの肩をゆすぶって起こす。
「またせて悪かったね。
今後、パーティに、必要な情報かもしれなかったし――。
でも、武器のこともわかったよ。
テッシちゃんの装備は、このへんだってよ」
「すみません、眠くなってしまったデス」
テッシちゃんは、右目をこすりながらいう。
テッシちゃんが、長イスから立ちあがると、
俺たちは、ふたたび、装備をさがしに歩きだした。




