第十四話 武器堂編 8月1日 自室
八月一日。
きょうは、ヤキソバの部屋へ、テッシが来ることになっている。
だが、掃除をするヤキソバを、フェリリは白い目で観察し、悪態をつく。
「ヤキソバは、女の子の、知りあいが増えたからって、
ガツガツしすぎナノ」
「おまえ、なんか、勘違いしてるだろ?」
もくもくと、廃物をつまみ。
所定の容器へ、ほうるヤキソバ。
「ヤキソバの部屋の方向から、テッシちゃんが、こらえきれぬ落涙で、床の羽毛をしずませながら、廊下をひたはしる――呆然とするわたし――そして、果敢にも、わたしはヤキソバの部屋の開扉を試みる――扉は意外、無抵抗――すると、得体のしれぬ濁りが、空気をよどませ――それをひと噴きの新風が、窓布をはらませつつ消し流す――ゆれうごく扉、その金具は、不快な音をかきならしながらきしむ――それが、人の、心もちさえも乱す中、背肉で壁にもたれ、無造作に足をほうり、うずくまる、血まみれのヤキソバが……」
「……おい!
撃退されてんじゃねーか俺が!」
「……ま、実際そうなると、おもうナノ」目をつむり、腕をくむフェリリ。
「今後、仲間にいれるクラスとか決めたり。
パーティの方向性とか決めたり。
倒しやすい、モンスターの生息地をしらべたりして、
今後の方針を決めるだけだからな……?」
「スケベな意味で、
今後のふたりの、将来の方向性や、
方針を決めたいナノ……?」
「お前は暴言王かよ……。
そうだ、妹を探す件、どうなってるんだ……?」
ヤキソバは話題をかえつつ問う。
「また女なの……?」
「そら妹だから、当然だろ」
「血の繋がらぬ妹と、血を繋げたいナノ……?」
「意味不明すぎだろマジで……。
フェリリさん、もしかして、なにか怒ってます……?」
「わたしはレシートじゃない……!」
「えっ」
「最近のわたしの仕事が、
敵のステータスの数字を、口から排出する仕事ばかりになってたナノ!
改善を希望するナノ! ストライキなの!」
「……魔卓の機能で、
敵や味方のステータスの数値、および、ダメージを可視化するっていう、
魔法をつかった機能が、あるみたいなんだが――
今度から、それにするか……?」
ヤキソバは、
フェリリの顔色をうかがいながら、説明する。
「……駄目ナノ」
「そうそう、ダメージの話」
「……違うナノ……! その案は没ナノ……!」
「えっ、なんでなんだぜ……?」
「わたしの仕事が、皆無になりそうナノ!」
無理難題を提起され、ヤキソバはうなだれ、困り顔だ……
そんな、会話をする二人を、
ドアの隙間から、のぞきみるテッシがいた。
「すごく……
部屋に入りにくいデス……」




