第十二話 VSリザー刀その2
「――とどめデスっ!」
テッシが、リザー刀へ、かけていく。
まだ、リザー刀のHPは、結構あるけどな。
リザー刀は、おもむろに、刀をおさめる――。
「ふり下ろしっ!」
かけ声とともに、テッシは金属棒を、
リザー刀の、頭めがけて、ふり下ろす。
そのとき、リザー刀の瞳が、あやしくかがやき、
左腰にある、刀を抜きはらった――。
一筋のひかりは、ながい、三日月のような、残光となり、
テッシの、右わき腹をおそう。
つぎの瞬間。
雷光がはじけとんだ。
「攻撃どうしが、ぶつからなくても。
自分と相手の攻撃が、同時に、あたりそうなほど、
距離をちぢめると、つばぜり合い状態が、発生するんです」ララさんがいう。
「リザー刀の、居合い抜き、BP+一五〇〇なの!」
「+一五〇〇? やべえ……!」
援護しようと、スタンバってた俺は、あわててかけよる。
「なで切り!」
相手の剣へ、技をあてるが、
俺とテッシは、吹っとばされる。
「テッシちゃんに、三五〇!
ヤキソバに、三三一ダメージなの!」
「敵と仲間が、つばぜり合い中に、
『自分の技を、あいての攻撃範囲に、ぶつけた』場合、
ダメージは、自分PTの、連携参加人数で、等分されるわ」「ダメージを。分散させたい場合でも、援護は有効ね」
ひるむ、俺たちをみて、
リザー刀は、ニヤッとわらう。
リザー刀は、自身の刀をおさめようと、
まえに、かかげた刀の、切っ先を下へむける。
「させないデスっ!」
テッシは、すばやく間合いをつめると、
敵の刀にむかって、金属棒をふる――。
「ふり下ろしっ」
敵の武器と激突し、
つばぜり合いが発生する。
俺も参加しねえと……
「なで切り!」
俺は駆けよって、技をはなつ、
雷光がはじけ、相手はふっ飛ばされた。
「リザー刀に、二一五ダメージ
『納刀』 BP+〇 自身の刀をおさめる
が失敗したよ!」
あれって技なのかよ。
効果っていうか、行動じゃないのかよ。
いや、ヤジマジロの行動とかも、なんか、あれだけどよ。
「『技の追加効果は、弾いてしまえば効果は出ない』わ。
ヤキソバくんの、『なで切り』が弾かれた場合、
『鍔ぜり合いの最中は、BPマイナス二〇〇が出る』けれど。
鍔ぜり合いの後に、連携がまだ続いていたとしても、
『それ以降の、BPマイナス二〇〇は無効化される』わ」ララさんが説明する。
「追加効果は、連携中に有効っていったけれど。
あの『納刀』は、連携後もきえない効果のようね……」リリさんがいう
そりゃ、連携が終わった瞬間に、
刀が、飛び出てきたら、ビックリですよ……
リザー刀の方をみる。
納刀しようと、しているみたいだな。
テッシちゃんが、見逃さなければ、
おなじ方法で、納刀をキャンセルして、
ハメたおせるはずだ。
「フェリリ。
あと、リザー刀の、残りHPはいくつだ?」
「リザー刀 HP 五五一/一二〇〇 BP八〇〇
ヤキソバ HP 一〇二九/一三六〇 BP六七〇
テッシ HP 五五〇/一〇〇〇 BP四七〇 なの」
「わかった、サンクス」
テッシは、後ずさりするリザー刀に、
にじり寄って、おいつめる。
「ふり下ろしデス」
「なで切り」
「リザに、二一七ダメージなの」
「ふり下ろしデス」
「ほいほいっと、なで切り」
「リザっちに、二二〇ダメージなの」
「ふり下ろしデスです。ふわぁ~」
「なで切り……」
「たぶん、二〇〇くらいの、ダメージなの。たおしたナノ」
なんか。
もう、ルーチンワーク化しているな。
リザー刀は、たおれると、黒いほこりと化し。
分裂し、パーティーにくばられる。
「テッシちゃんのLVが、六になったよ。
ヤキソバは、おいつかれたナノ」
「やったデス!」
テッシちゃんは、金属棒を、右ほほと右肩ではさむ。
両腕で、胸にかかえて、うれしそうだ。
「おいつかれた、かー」
俺はいう、が。
ダメねずみ一体分のリードなんだから、
いままで、おいつかれなかったのが、
不思議なくらいだったな。
「よろんでいるところ、
水を差すようで、悪いんですが。
ちょっと、いいですか?」ララさんがいう。
「はいデス」
「パーティの連携に、参加したときに、
自分がつかえる連携は、
『自分ひとりで、つかえる連携技と、おなじ、組みあわせと順番』です。
つまり、技A、技B、技Cの順番で、
ひとりで、連携技が、つかえるのなら、
連携中も、これらが、おなじ順番で、つかえます。
あいだに、仲間の技、敵の技が入ってしまっても、同様です」
「そうなんデスか」
「もうひとつ、ルールがあります。
ルールというより、法則なんですが。
連携は『強い技から、弱い技へ、つながっていくことが多い』です。
大ダメージ技、中ダメージ技、小ダメージ技というような、感じですね」リリさんが、後ろ手に、持ったつえを、左右へふりながらいう。
「……ってことは。
弱い技から、つかっていき、
敵が、技をつかい切ったら、強い技で大ダメージ。
とかって、できないってことですか……?」
「……簡単にはできませんが、パーティで、
それに、近いことは、できますね。
ヤキソバさんと、テッシさんが、ヤジマジロ戦で、やっていた連携ですね。
テッシさんが、ヤジマジロに、ガードをつかわせて、
ヤキソバさんが、追撃をしていましたよね?」
ああ、そんなことあったかな、
そういえば……
「きょうのところは、これで、終わりですね」「おつかれ様です」
置いていた、荷物をかたづけて、
帰りの、したくをする、リリさんとララさん。
テッシちゃんも、俺へ背中をみせ、荷物をいじり、帰る準備をしている。
「テッシちゃんが、帰っちゃうナノよ?」
「わ、わかってるよ……」
なんか、緊張して、へんな汗かいてきたな……
俺は、テッシちゃんに、近よっていく……
気配に、気がついたのか、
俺の影に、気がついたのか、
ふいに、テッシちゃんが、ふりかえる――
「ヤキソバさん、どうしたんデスか……?」




