秋人のバレンタイン
俺は石田秋人。中学1年生だ。一応学校では生徒会の副会長をさせてもらっている。今は2月13日の夜。まさにベッドに潜ろうとしていたときだったのだが親友の花田迅からメールが来た。
『明日はなんか女子主催でチョコ争奪戦やるらしいぞ。」
『チョコ争奪戦?』
明日はバレンタインだったなー・・・。俺の彼女の澪は世に言うヤンデレというやつでそんなのに参加したら半殺しにされること間違いなしだ。
『うん、男子の希望者でバトロワって残った3人がチョコ獲得だってさ。お前は参加しないといけないんじゃないか?間宮の作ったチョコもそんなかに入ってるから他のやつにやりたくないだろ。』
そうか、主催側だったか。これで参加せざるをえなくなった。いや、最後まで残らざるをえなくなった。
『なるほど。頑張るか。おやすみー。』
『おう、おやすみ。』
そして翌日の昼休み。争奪戦は柔道場で行われることに。俺たちが着いたときには剣道場で3年が殴り合いしてたんだが・・・しかも「リア充にチョコを渡すなあああああああ!!!!」とか聞こえてたし多分同じことしてたんだろうなぁと。ばかか。参加者は60人。
「で、お前も参加するんだな、迅。」
「お前と殴り合う機会なんてめったにないだろ?いやー、腕が鳴るわ。」
そう言って指をゴキゴキならす。それ指ぶっとくなるんだぞー。イケメンが台無しだろうよ。
「ふふふ、秋人、今日こそはお前を倒させてもらうぞ。この蒼の死神の名に懸けてな。」
こいつは九重清十郎というなの残念なやつだ。ルビかっこ悪いぞそれって指摘してやった方がいいのかね。
「はぁ・・・まぁ最後の3人には残るからな。」
「それはお前が最後の3人に残るのを阻止すればライバルとして認めてくれるということだな?よかろう死力を尽くしてお前の勝利を妨害してやろう。」
「言ってねーよ。」
「はいはーい、みんな注目!ルール確認しとくよー。」
最初に思いついた女子だったはず。名前は・・・覚えてない。
「地面に膝をついたり倒れたりしたら負け、全員同時に戦って残った3名がこちらのチョコを手に入れることができるよ。もちろん急所攻撃とかなしだからね。あんま怪我とかしないように。」
ほう、今あんまっつったな。多少は九重を怪我させてもいいわけだ。
「じゃあ全員畳の上に上がってー。言い忘れてたけど勢いあまって畳から出ても失格だから。」
さてさてまずは迅を倒しておこうか。序盤なら他のやつらに紛れて安全に攻撃できるかもしれん。全員思い思いの位置についた。
「スタートっ!」
周りにいたやつらがくるっとこっちを向く。そういえばこいつら最初の位置選びで俺の方見てたかも。
「ふふふ、まずは厄介なやつをまとめてやっちまうことにするぜ。悪いな。」
「んー、みんな考えることは一緒か。俺は迅をとっとと倒しておきたかったんだが。いいよ、相手してやる。」
と、言いつつ正面にいるやつをこかして逃走する。
目標はやはり迅、後ろからなんか追ってくるが予想通りだ。
「じぃぃぃぃぃぃぃんっっっ!!!!」
叫びながら迅に殴りかかる。華麗に避ける迅、すぐに反撃に移るがもうそこに俺はいない。身代わりになってくれたのは俺を追いかけてたやつらの1人だ。仲間がやられて逆上したのかターゲットを迅に変える。作成通りだ。これでちょっとでも体力を削れるといいんだけどなぁ。
「さすが我がライバル。卑怯上等だ。」
このタイミングで九重か。俺の方が体力消耗しそうだぜ。
「誰がライバルだ。で、お前もチョコ欲しいのか。」
「はっ!?いや、いやいやチョコ欲しいとかそういうんじゃなくてな。俺の封印されし邪悪なる左腕が糖分を欲しているんだよ。仕方ないからこのイベントに参加したというわけだ。」
そんなに糖分欲しいんだったらその腕に水飴でもぶっかけてやろうか。
「めんどいからとっととやるぞ。」
腹パン。九重は一撃でダウンかと思われたが実はこいつ頑丈だ。普通に耐えて反撃してくる。
「ふははっ!いいぞ、だがそんなものではこの俺は倒せんぞぉぉぉ!」
激しいラッシュを繰り出してくる。確かこいつは拗らせすぎて色々な格闘技をマスターしていたんだっけか。これだから行動的な中二病は面倒なんだ!
「オラオラオラオラァ!!」
だんだん攻撃が重くなってくる。一撃一撃が金属バットで殴られているかのような痛みだ。
「はぁ、その程度じゃ俺だけ倒すのに昼休みが終わっちまうぞ。」
軽く攻撃を流しながら言う。実際俺を倒すのに体力を使いすぎて迅にでもやられるだろ。まぁ俺に勝てればな。
とりあえず牽制にスピード重視の蹴りを放つ。
「やっと本気を出したか。ならばこの俺も封印されし左腕を解放するとしようか。」
そういえばこいつさっきから右手しか使ってない。だが・・・
「それただ握力鍛えまくっただけだろ。」
多分70kgくらいじゃないかな?普通は全力で握られたらヤバいと思う。
「ふっ、力こそパワーだ。」
訳しただけだな。せっかく蹴りで距離をとったのに右手首を掴まれてしまった。そしてそのまま右手でラッシュを繰り出す。
「ははっ、足下がふらついてるな。このまま全力で左腕を振るだけでお前は負けだ。これで俺もお前のライバルだな。」
言った通りのことを実行してくる。空中に浮かび上がる俺、そのまま空中で一回転し着地した瞬間地面を蹴り九重に迫る。次の瞬間俺の全力の蹴りが脳天に直撃する。
まぁ・・・大丈夫だろ。普段も俺の攻撃に耐えやがってるし。
「今だぁぁぁぁ!!石田を倒せぇぇぇぇ!!!!」
うっわー、漁夫の利ってやつか。当分右手使えねぇよ、くそっ。
「貴様らなんぞ左手だけで十分だっ!!」
変なテンションが俺にも伝染った。
結局左手のみで襲いかかってきたやつらを撃退。そして今立っているのは6人。あとはタイマンを3組がして終わりだな。
「さ、やろうぜ。右手は大丈夫か?」
迅が俺の手を気遣いながらも臨戦耐性に入る。
「ああ、途中から治ってた。」
ノーガードで殴り合う。先ほどの九重の攻撃とは比べものにならないほど重いラッシュ。
「あー、お前やっぱ強いわ。」
「お前こそな。だが、俺は負けられないんだよ。」
再び殴り合う。今度は蹴りやフェイントも織り混ぜるが依然としてノーガード。多分ガードしてたら勝負がつくのにかなりの時間がかかってしまうだろう。
「もらったぁぁあああああああ!!!!!!!!」
しまった、いつのまにかタイマンはってた2人が俺を殴りにきてた。片方は何とか防げるがもう片方は・・・当たってない。
「迅か。ありがとう。」
「今日は引き分けってことで。こいつら倒せば2人とも勝者だ。」
「さぁ、共闘しますかぁ。」
・・・うん、なんか九重や迅と同じ感覚でラッシュしようと思ってたら一発で終わってた。あいつらかなり異常なんだなって思った。
「俺は澪のチョコだけでいいよ。2人で分け合って。」
迅ともう1人の勝者に言う。そうしないと俺死ぬし。
こうして凄まじいバレンタインは終わった。小説かよほんと。