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ごめん

やっぱり一番に気になるのはみんなの反応だった。家族と恋人…。どんな風に思っているんだろう。見たくないけれど見てみたくもある。まずは家族を見てみよう。


 家族は葬式の大変さで悲しみを忘れてしまう。何て事も言うけれど、実際後片付けやら、僕の遺物の片付けやら部屋の片付け、僕の職場への連絡や、僕の友人関係への連絡。全て考えるとこれは本当に面倒だろうなと思う。

生きていた頃から苦労をかけていたけれど、死んでしまってもこんなに苦労かけてしまうなら、死なない方が良かったかもしれないな…って言っても別に自殺したわけでもないし、どうしようもなかったんだけど。

 

 両親はとにかく泣いている。お母さんは特にだ。昔から心配症で、過保護だった。少し大人になって気付いたけど、それも愛の裏返しだったんだなって。

だからそれほど愛されていたから、お母さんが泣くのは仕方ない。お父さんも隣にずっとついてる。何か言葉をかけるでもなく、静かに隣にいる。

ただ、悲しさっていうよりかは葬式の準備とか片付けで疲れちゃってるって感じにも見えるけど、疲れで悲しみを忘れられるならそれもいいかなって思う。


 「あいつの部屋の片付けは俺が明日やるよ」


と…言出だしたのは僕の兄。兄は昔からしっかり者で、家族をまとめたり支えたり出来る人だ。確かに兄がこの言葉を言うのは納得できる。


 「だからさ、二人は休んでなよ、疲れてると思うしさ。父さんは母さんのそばにいてあげてよ」


兄は本当に優しくて強い。昔からそういう所に憧れていたし、助けられていた。僕はどちからというと気が弱い方だから、そんな堂々としている兄がいつもかっこよかったし、兄の弱い部分何て見た事ない。兄がいてよかった。


 「私…少し休む」


お母さんがそう言って立ち上がると、父が支えながら寝室へと向かった。寝室の扉が閉まってからすぐにお母さんの大きい泣き声が聞こえてきて、これ以上は何も聞きたくなかった。とにかく、ごめんねってそう思った。


 そういえばちょっと前にお父さんには少しだけ霊感があるって話を聞いたことがあるのを思い出した。もしかしたら…。


そう思って、あまり…これ以上見たくなかったけど、二人の所へ向かった。

お母さんは目が真っ赤になっていて、それをお父さんは優しく背中をなでている。

こういう表現は少し違うのかもしれないけど、何だか嬉しい。二人共仲が悪いわけではないけれど、少しだけ冷めてしまっているような気がしていたから、こうやってお父さんもお母さんも夫婦何だなっていう所を見ると、子供としては少しきまづい部分もあるけど、何だか納得した。


 さて、お父さんに霊感があるとしても何をどう伝えればいいんだろう。今見えてないんじゃ、見てもらう事も出来ないし…。もちろん物にも触れないし、どうすればいいかな。

って…考えていても仕方ないし、今僕がこの二人にしたい事はこれだけ。


僕は二人一緒に抱きしめた。


「お父さん、お母さんありがとう、悲しませてごめん。ありがとう。」


 きっと、これだけでいい。長い言葉を言った所で伝わらない。人に言葉が伝わらないっていうのはこんなに苦しい事だと思わなかった。こんな大事な一言だけでも伝えれたらいいのに、僕がそばにいる事も、この言葉も伝わらない。少し寂しい気もするけど。でも、きっとわかってくれてる。


 「なぁお母さん」


お父さんが口を開いた


 「少したったら悲しむのはやめよう」

「どうして?いつまでたってもきっと悲しいわよ」

「俺らが悲しんでたら、その姿見てあいつも悲しむだろう」

「…」

「さっきな、あいつがいた気がしたんだ。優しい子だからな、ごめんって聞こえたんだ。な?あいつにごめん何て思わせたくないだろ」


やっぱりお父さんには聞こえてた。きっと、少しだけだけど。正直僕は生きてる頃、死んだ人の声が聞こえるとか信じてなかったけど。本当にこういうのってあるんだな。

特に「ごめん」の部分は…凄く強くおもった事だ。強く想った事は聞こえるんだろうな。良かった。聞こえてくれて。


 また来るよ。

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