ハルピュイアの少女-16
何か諦めたような顔をしたクロードは、それでも帰りたいらしく俺にあれやこれやと聞いてきた。
帰るためのヒントなんて俺は持ってない。
あ、いや、ベインの魔法なら。
あの時なんて言ってた?
確か帰るためには……忘れた、まあいいや。
ウィリスを捜しながら歩いて、いつの間にか話が変わってレイズと戦ったとか言い始めて、しかも叩きのめしたとか言い始めた。
で、いろいろあって拉致されて、なんやかんやであの堕天使の下僕にされて、かくかくしかじかで俺と同じように気付いたら異界へGOってなったらしい。
それにしても……あの美少女を叩きのめしたことについてはほっといて、勝ったってことはだ。
俺の独断と偏見で作るランキング更新だ。
第一位に堕天使はそのままおいといて、第二位にクロードを入れてレイズを第三位に落として。
「どこに向かってる」
「仲間の所。ウィリスってやつだ」
「青いエネルギーブレード使って瞬間移動みたいなことする男か」
「知ってんのか」
「ちょっとな……」
なんか戦ったことあるような感じだな、こいつは。
……生きてるってそう言うことか、勝ったのか。
「それにしても静かだな。血の臭いしかしねえ」
確かに静かだ。
ふつうは夜でも虫の鳴き声とか、何かの遠吠えとか聞こえてきそうなんだけど。
「ここの生態系は」
「俺が見た限りじゃ植物が人を襲うとか、でかい狼が出るとかってとこかな」
あのキラートマトとか、危険度が冒険序盤に出てきちゃいけないレベルのフェンリスとか。
「てことは、あれもか」
「どれが?」
「後ろ」
振り向けば、今通ったばかりの場所に太い枝を大量に生やした巨木があった。
「……木まで動くのかよ」
見てる分にはそこらに生えてる当たり前の木なんだけど、ほんの数秒前にはなかったのに振り向いたら音もなく動いてきたのか当たり前のように生えている。
怖い。
気付いたら食われてましたのパターンに直行だぞ、これ。
「とりあえず圧し折るか」
クロードが敵意を向けた途端、風もないのに木が揺れた。
「お前は離れてろ、俺がやる」
そう言われて背中を向けたら、枝が鞭のようにしなって、ヤバいと思った時にはもう弾き飛ばされていた。
「がっ――」
焼けるような痛みに背中を触ったら血がついた。
服が破れて肉が裂けて……直撃喰らったら内臓破裂の背骨粉砕で即死コースか。
「あれ? ハーピー?」
頭の上の重みがなくなっていて、辺りを見回すとあの嵐のような鞭の攻撃の中にいた。
ただ、軽すぎるのか風圧で押し退けられて全然当たってない。
ていうか怖がってない、遊んでる。
「危ないからこっちに――」
足元から注意を逸らしたのがいけなかった。
ボゴッと音がして頭を動かすのは間に合わず、視線を下に向けると嫌な現実が見えた。
地面から槍みたいに尖った鋭い根っこが突き出して、心臓狙ったコースだと直感的に感じて身体を動かすけど無理だこれ!
脇腹を抉られて内臓が出たのは分かった。
で、一本だけで終わってくれない。
二本目、三本目が次々と飛び出してきて空中に打ち上げられて太い枝で地面に叩き付けられる。
動く木は魔法学校のアレだけで十分だ。
他にも出てくるなら眠って木と同じようになってくれ。
「く、そっ」
下半身が動かない、息をする度に激痛。
肋が折れて神経やられたか。
治癒魔法で回復しながら見上げると、一番太い枝が俺の方に――




