ハルピュイアの少女-15
逃げようとして、ブツッという音に振り向けば紐が切れかかっていた。
……逃げる?
いやこれ、追いかけられたら逃げ切れる自信ないよ。
殺される自信はあるけど。
「さぁて」
死神……クロードが手を向けると、フェネとサキュバスが浮かび上がる。
「こいつらなんか使うか」
「なるたけ遠ぉぉぉぉぉぉくに投げ飛ばしてもらえると……」
逃げられないなら恐怖を遠くにやってしまえばいい。
フェネはおろかサキュバス相手にも勝ち目のない俺ではどうしようもないからな。
「オーケー」
ぐっと掴むように手を動かして、真上に腕を振るうと遙か天空へと吹っ飛んで行った。
天空と言っても真上は水? のような光るものがあるのだが。
「おーよく飛ぶなー」
数秒して水の空に着水、水柱が立って波打って雨が降った。
「……あんたの能力は反則級ですか?」
「よく言われる。簡単に言えば――」
曰く、空間を操れる。応用で空間ねじ曲げて物理法則が適用できない状態にしてほんのちょっと時間を操れる。物を軽くして吹き飛ばす。重くして潰す。重力の影響を変えて好き勝手に飛び回れる。魔力の流れを重力で断ち切ることで魔法を無力化できる。エトセトラ、エトセトラ。
まんま、チートでした。
空属性の魔法が一応使えるけどこりゃ、対抗できないな……。
「つーか、ほんとここどこだよ」
「あぁここは――」
さっきの説明が長かったので俺が知り得る限りの範囲で懇切丁寧かつめんどくさいので超省略して説明してやった。
「えーと、つまりは剣と魔法があって銃まであるごちゃ混ぜファンタジーな世界で電子機器とか科学系なしの世界。ということであってるか?」
「たぶん……」
いまんとこエンジンとかコンピューターとかは見た覚えがない。
「俺が前にいたところとなんら変わりがねえ! もう帰ってやる!」
乱暴に腕を突き出すと真っ黒な穴が出現した。
ブラックホール? なわけないか。ブラックホールは膨大な質量を圧縮してってやつのはずだ。
だったら俺も周りの物も引きずり込まれるはずだからゲートだろう。
あの堕天使が使ったのと同じだとすれば……。
「…………。」
弾かれてら。
うん、俺と同じだねぇ。
磁石が弾き合うように跳ね返されたねぇ。
つまりは誰かに強制的に転移させられたって訳で。
「なんでだよ」
俺はそっとクロードの肩に手を置いた。
「諦めた方が良い、帰れないから」
「…………。」
「人生の終着点へようこそ、同志よ」
だって帰れないんだしここで終わるだけだろ。
「呑気だなお前」
「呑気だよ」




