ハルピュイアの少女-14
「誰だ」
そいつが近づいてくる。
薄暗いこの場所で、全身黒一色。
まるで死神のような……。
「答えろ、それとここはどこだ」
おかしいこいつ、確かにそこにいるのに認識しづらい。
一歩一歩の動きが見えるのに次が予想できない。
逃げよう、こいつは、ヤバい。
「黙るなら斬るぞ」
「ちょっと待った! 俺の首からナイフ除けよう! なっ!?」
あっれぇ……なんかいま一瞬で距離詰められたよ……。
しかも見える範囲、ナイフが浮いて包囲してるし。
つーか、ヤバいのはナイフか。
青く光る文字が刻まれた、妙に切れ味のよさそうな超物騒なもん。
なんだろ、この感じは知ってる。
「さっさと答えろよ。嫌なら斬るぞ」
「いや、俺もここに飛ばされてからあんま経ってないし」
「使えねえ、いつ頃飛ばされた」
「変なもんが来て騒がしかった……あー、五月の終わりぐらい?」
うん、たぶんそれぐらいだったと思う。
日常的に曜日感覚が死んで日付も気にしてなかったし、たぶんそれぐらい……だったよな?
冷房も暖房も使ってなかったし、春過ぎて夏にはなってなかったはずだ、あのくらいの温度ならたぶん五月か六月か、雨ばっかりでもなかったし……。
「はぁ……どんだけ時間差あんだよ」
黒いやつは俺から離れて、あちこちに刺さりまくっているナイフの回収を始めた。
死体の数はすごいが、こいつどんだけナイフ持ってんだよ。
百本くらいあるぞ。
と、紐で縛られた恐怖……もといフェネが暴れている。
その隣のサキュバスは簀巻きにされてまるで……蓑虫?
まあいい放っておこう。
ここで解放してしまうと俺が破壊されるだけだ。
散々殴られた仕返しをしてやろうとか思えない。
そんなことしたら今度は全裸で馬乗りされて頭潰されるのが落ちだ。
意識が三途の川に叩き落とされるどころじゃない、戻って来れない向こう側に吹っ飛ばされる。
触らぬ神に祟りなし。
助けても何しても後が怖い。
ヤバい連中しかいないし、解析して今後の対抗策を組立ながら逃げよう。
【クロード・クライス】
種族:おそらく人間
職業:死神&重力使い
【スキル】
未来予知Lv.3
重力制御Lv.MASTER
魔術分解レイア式
【召喚獣】
【魔法】
破壊力:――
速度:――
射程:――
持続力:――
精密動作:――
魔力総量:――
成長性:――
俺に視界に映ったのはそんな情報。
何だろうねコレは。
もう人間ですらなかったよ。
死神だと。
神だと。
んで未来予知ときたよ。
ウィリスみたいなこと出来ると。
その下二つ。
重力制御がマスター?
レベル1000でもマスターにはならないのならこいつは相手したらいけないな。
さらに魔術分解。
魔法使いの天敵で死神なこの男はマジでヤバいと。
そっと一歩踏み出せば、フェネが本格的に暴れ始めた。
なんか緩んでるよ。
もう少しで抜け出しそう、なんで見てるだけで助けないのかとか言って殴られるかも。
逃げよう。
ウィリスのこと?
知らないね、俺は自分の命が最優先なんだよ。




