ハルピュイアの少女-11
「エンゲージ」
ウィリスのその宣言に、身体が反応する。
戦闘開始の合図だと本能に刻まれている。
一瞬でウィリスが移動して、おっさんの真上からエナジーソードを振り下ろす。
「危ないですな」
「よけるな変質者!」
「当たったら怪我をするではありませんか」
手首から先がぶれるほどの、見えない斬撃を軽く躱しながら挑発を返す。
あのおっさん、まんま変質者だけどただ者じゃない。
「アキト!」
ウィリスの攻撃が当たらないなら、俺が攻撃したところで意味がない。
攻撃を当てるじゃなくて動きを邪魔することも出来ないだろうから。
だったら支援だ。
移動先を狙った妨害じゃ躱される。
全域だ。
ここにあるモノと言えば魔物の死骸と植物と空気。
そして俺が干渉出来るのは生属性で植物。
動け、絡み付け、締め上げろ、拘束しろ。
緑色、生属性の燐光が舞って植物がありえない成長、変異を始める。
逃げ回る変態が踏みつけた雑草が、その足に絡みつく。
「変なことをしないで欲しいですなぁ」
が、変態はそう簡単に切れないはずの触手と化した雑草をブチブチと引き千切って平気で動き回りやがる。
一瞬も止まらねえよ。
……いや、何やってんだろ、俺が使える魔法は多いんだ。
「焼き尽くせ!」
一つの魔法でダメならあれこれ混ぜてやればいい。
追尾式の火炎弾をぶっ放し、投擲タイプを詠唱する。
「はっはっはー、子供がそんな火遊びしちゃあ、い・け・ま・せ・ん」
一発目、二発目をひらりと躱され空中でくるっと変態が回って、魔法に手を向けると火炎弾が消失した。
「……は?」
気付けば右手に用意していたはずのグレネードも消えていて、魔法の詠唱不可が綺麗になくなっている。
「近接魔法を使え、そいつに間接魔法は通用しねえ!」
「近接魔法って何?」
「魔法剣とかだ」
「…………?」
何それ?
「もういいお前下がってろ!」
ウィリスの姿が消え、次の瞬間には変態の首筋にエナジーソードが走ろうとしていた。
「ほっ」
だが変態はリンボーダンサーもびっくりの体勢で攻撃を回避する。
なんであの体勢で背中が地面に着かない、どんな筋力してやがるんだ。
明らかに次の行動が出来ない体勢のところにウィリスが足を斬ろうとするが、その体勢からジャンプして避けやがった。
「クソッ」
ウィリスが距離を取ってなにやら詠唱する。
金色の燐光が舞うのを見ながら、変態へと魔法を撃つが手を向けられると消えてしまう。
訳が分からん、なんで消える? そういう能力……?
「ストリーム!」
ウィリスの声が聞こえた途端、金色の流れが見えて地面ごと俺も吹き飛ばされた。
頭皮が悲鳴を上げる。
吹き飛ばされて土石が叩き付けられるより、頭の上のハーピーがしがみついている方が超痛い。
小さなハーピーといえどその足は鉤爪な訳で……。
「包囲陣二重展開、掃射用意!」
さっさと生き埋め状態から脱出してハーピーが怪我をしていないことを確認して周りを見ると、ラグナロクの連中が集まっていて包囲網を完成させていた。
これならあの変態も無事に豚箱行きだろう。
「こちらはラグナロクである、お前にはミズガルドの警備隊から――」
ピョーン、と。
助走も無しに包囲網飛び越えやがった。
「では、私はこれにて」
「ってこっちに来るなー!」
火炎弾を乱射するがもちろん消える。
「君、その子のためにも今は魔法は使わないほうがいい。さらばだ!」
すれ違いざまにそんな事言われて、変態は絡みつく触手をものともせずに走り去っていく。
……ああいうタイプの化け物と遭遇した場合、今後どうすりゃいいねん。
なんて、終わったって思ってたらガシャンと。
聞き慣れた音。
初弾装填。
「斉射開始!」
「ちょっ、待って!?」
飛び上がる、横に飛ぶ!?
いや待てあの陣形水平方向と上にも向いてしかも隊列二つで扇状!?
ハーピーを抱いて地面にめり込む勢いで俺は伏せた。
変態が逃げた方向は俺の後ろ側。
それはつまり射線上に俺が入ってるわけで……。
「いやぁぁぁああ!!」
凄まじい銃声が響いて耳がやられる。
そう言う経験あるけどマジで怖いから!!




