ハルピュイアの少女-8
臙脂色の軍服着た連中が整列する。
「各自、バディ確認。全員いるか?」
ウィリスの指示でてきぱきと相方を確認して、綺麗に整列し直す。
まるで軍隊だ。いや、軍服着てアサルトライフみたいなの持ってる時点で軍隊か。
変なところと言えば、現代的な服装なのに装備が剣、弓、杖、アサルトライフルとか混ざってるところだ。
「総員九十名、脱落、負傷者ありません」
「よし……少々予定外のことがあったが……」
チラッと俺に視線を投げるなよ……。
仕方ないけどさ。
「これより行動を開始する。一から十組はバナナ狩りだ、十一から二十組はトマト狩り、二十一から三十組はリナの捜索、行け」
了解、と。
返事と同時に太い枝の上を歩いてユグドラシルの中に消えていく。
それでもまだそこそこの人数が残ってるんだが。
「残りは出発前に説明したとおりだ。ミズガルド警備隊からの依頼、あいつを引っ捕らえるぞ! 集合は日没までに中層のキャンプだ、他の組は終わればそのまま帰還するから、その伝言もあれば聞いておくように。以上、行動開始」
宣言と同時に詠唱が聞こえて、銀色の光が強く輝いてあたりを覆い尽くす。
銀色、空間魔法の色だ。
光が収まったときにはウィリス以外はいなくなっていた。
なんだよ……揃いも揃って転移魔法使えるのかよこいつら。
「おっし、そんじゃお前は俺と一緒に来い」
言われなくてもついて行くしかない、俺、こんなところで死ぬ自信しかないんですから。
だけど気になるな。
「その前に一ついいか」
「なんだ」
なんだじゃないんだよ。
「バナナ狩りとトマト狩りってのはなんだ」
さっきの今でまともな狩りじゃないとは思うよ。
リンゴ狩りとかブドウ狩りとかいう、まともな狩りじゃないとは。
「キラーバナナとキラートマトを仕入れて欲しいってやつからの依頼だ」
「それってぇ……さっきのトマトみたいなの食うってことか」
「そうだな。正直俺はあんなものを食いたいとは全く以て思わん。……あんなゲテモノ」
俺も食いたくない。
むしろあんなのとやりあっていたらそのうちトマトを嫌いになるぞ。
歩き始めたウィリスについて行く。
このまま枝の上を歩いて行けば、木の幹……側面? 壁? に開いている大きな洞から中に入ることになる。
何つーか、見るからに茸生えてじめっとして落ち葉積もって虫がたくさん……踏み込みたくない。
「そういえば、"あいつ"ってのは」
「これだよ。正直勝てる見込みはない」
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ランクS【捕獲】
・内容:指名手配犯の逮捕
・報酬:金貨50枚
・場所:ユグドラシル
・期間:無し
・依頼主:ミズガルド警備隊
・備考:最悪殺してしまっても報酬は出します。もはや我々ではやつを止めることができません。ミズガルドの風紀を保つためどうかお願いします。やつの特徴はシルクハットを被った変態です。武器も持たずにあの魔境を走り抜ける全裸のおっさんを捕まえてください。
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最後の備考欄を読んで、なんだこれは? と思った。
金貨五十枚がどれほどの価値なのかは分からないけど、ノン装備……ていうか全裸でこんな危険な場所に逃げ込むってどういう神経してんだよ。
……いや、それだけの実力があるから、他の連中が追ってこられない場所に隠れるのか。
隠れる必要があるか、逃げる必要があるか、ないだろ。
「……こいつは?」
「あのレイズの猛攻から逃げ切った変態だからな。実力はある」
「マジデスカ……」
うん? あの絨毯爆撃とか太陽とかをどうやって凌ぐんだ?
「ああ、マジだ。俺もレイズが『降り注ぐ星々の光』っていう超広域掃射魔法を使ったのにやつが生きていたのを見たことがある。あれはまず避けられないし防げない」
「ちなみにどこで?」
「アスガルドの空が、今まさに魔王が復活しました! って感じのところがあるだろ? あそこだよ」
「oh………」
それ以外に言えねえよ。
あんな惨状になるほどの猛攻を受けてなお生きてるっておかしいよ。




