ハルピュイアの少女-2
リナさんを起こさないよう、そっと立ち上がる。
確かにしっかりした足場があるけど、見えないだけですごく怖いし歩きにくい。
まあ、焚き火から目を離して暗闇に集中するとすぐに目が慣れるからいいんだけど。
焚き火の明かりを目指して歩く。
近づいて見れば臙脂色の作業服、というか軍服のようなものを着た人たちがいた。
置いている装備を見れば剣や杖、弓と言ったファンタジー系から拳銃、アサルトライフルとか俺のよく知る武器まで色々。
それにしてもどこで見たっけなこの人たち……。
なんて思っていれば、俺に気付いたのか振り向いてきた。
「よう、起きたか」
「えぇっと……」
金髪の男だ。見た感じは俺と同じくらいの年か。
でだ、誰だっけ? この人。
確かに会ったことがあるはずだ。自己紹介もされたはずなんだけど……。
えーと……ヴァン? いや違うな、あいつはもっとこう、金髪が土で汚れたような色をしていた。
あー……思い出した、ウィリスだ。サブリーダーの方だ。
「一応、ありがと」
「礼は言うな、偶然助けただけだ」
偶然か、でもその偶然で俺はここに居るわけだ。
「副長、そこぁ正直に言っちまいましょうや」
白い粘土みたいなのを焚き火で焼いていた男が話しかけてきた。
顔は臙脂色のバイザーで覆われていてよく分からないが、口元から笑っていることが分かる。
「いやそれは」
「実はですねぇ副長が、ががが――」
言おうとした途端、ウィリスがさっと腕を回し、男を締め上げてタップを無視して絞め続けて落とした。
なんだ、そこまで聞かれたくないのか。
「上から落ちてきたからお前らをキャッチした、ただそれだけだ!」
「俺が落ちてきた? どういうことだよ?」
「どう言うも何も、いきなり空間が割れてそっからお前らが落ちてきたんだろーが。ありゃ空属の転移じゃねえし、いったい何した?」
「えぇっと……」
「覚えてないのか」
「なんか記憶がすっぽりと抜けてる」
「……どうしようもねえな、お前」
「……ですよねー」
ほんとにどうしようもない。
それよりも体中が痛いし、何より疲れてる。
「ま、俺たちは任務だしお前らも予定がないんだろ?」
「そう、だけど」
「そんじゃ明日いろいろ話そう。今日はもう疲れた、寝る」
そう言ってごろんと横になってしまう。
すると別のやつが寄ってきて。
「ふくちょー……白いサキュバス相手に丸一日逃げ回ってさっき結構上から落ちたんすよ。そんでそんときにたまたまもっと上から落ちてきたあんたらを回収したんすよ」
「なるほ――っど!?」
一瞬ビュオンッと音がしたかと思えば、ウィリスの跳び蹴りで目の前の男が吹っ飛んでワンバウンド、端の方から落ちていった。
「おいっ!?」
「大丈夫だ、風使いだから飛べる。それより」
「い、言わねえよ! 俺は落ちたら死ぬ!」
「だったらいい」
逃げるようにさっきの焚き火まで戻る。
何だよさっきの蹴りは。
全然見えなかったぞ。
あぁ、なんか先行き不安だなぁ。
気付いたらまぁた訳の分からないところにいるし……。
つーか俺がカレー作ってたときよりも前の記憶が…………。
思い出そうとしている内に、眠気に負けてそのまま意識が落ちた。




