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アナザーライン-遥か異界で-  作者: 伏桜 アルト
a dream of beginning [始まりの夢]
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記憶遡行-1 〉〉 記憶の間

 夢を見ている。

 とてもはっきりとした夢、きっとこれが明晰夢というやつなのだろう。

 だが、これは夢というにはあまりにも……。


 俺は過去の自分を見下ろしている。

 自分の記憶を追体験しているような感じだろうか。


 とても鮮明リアルな光景。

 もう二度と見たくない、思い出したくないそれが次々と移り変わりながら目の前に出てくる。

 早く目が覚めればいいのに、俺はもう……こんなのは、覚えていたくないから忘れたのに、なんで、なんで……。


 -1-


 教室で複数の生徒に囲まれている、ちょっと太った男子がいた。

 俺だ。

 体育の授業の後なのか着替えているが、俺だけは囲まれて何やかんや言われている。


「アキト君て、足遅いよね」


 どこででも聞くようなもの、無邪気な心から少し成長して、自分でもどう接したらいいか分からないころだ。

 始まりのささいな"いじり"。

 これがこれで終わればいいが、そのまま終わらない。


 なんで子供は小さなころは優しいのに、成長してくるといじめなどを始めるのか。

 たぶん、自分をどうやって表したらいいか分からないからだろう。

 そして相手のことを思うことも良く分からない、だから思ったことをそのまま口にしてしまう。



 見える世界が変わった。

 ちょうど仮想工学……仮想空間での決まり事やマナーの授業の時間だ。

 この時にも俺だけはいじられていた。


 野生動物は大多数と違うものを排斥することがある。

 人間の場合……とくにこの国のやつらは顕著だ。

 なんでもかんでも周りに合わせろと小さなころから教育する。

 そのせいで、合わせない者、合わない者を異端視し、排斥する。


 この時、この学年から上は第二世代、セカンドジェネレーションと呼ばれる世代だった。

 そして一つ下の学年が第三世代、サードジェネレーション。

 ちょうど分かれ目だったんだ、ゆとりとつめこみのような。

 世界的に見れば主流はセカンドであり、この中で俺だけが第三世代だった。


 世代が違う、それだけで皆から除け者にされた。



 また、世界が切り替わる。


「おいデブ、パンかって来いよぉ~」

「ついでにジュースもなぁ~。もちろんテメェの金でなぁ~」

「あっはっは、だっさー、なにあれぇ~」


 年を重ねるごとに内容が悪質になって、常習化してくる。

 気の合う者同士が集まり、その繋がりが強くなる一方で、合わない者を排斥する力が強まる時期だ。

 もうこうなってくると誰もいじめはいけないと考えなくなっている。

 見て見ぬふり、誰も標的になんかにされたくないから助けない。



 ぐるりと暗転した。

 人気のない場所でサンドバッグにされている俺がいる。


「そらよっと」

「ほらこっち、行くぜ!」


 人気のない場所に引き摺り込まれて、ストレス発散だとかで殴られ蹴られ、魔法で攻撃され。

 まるで道具のような扱いを受けてきた。


 もちろん変な痣や傷が目立つから、教師や親には何があった? と聞かれた。

 でも、ちょっとこけただけとか、階段ですべっちゃってさ、というかんじで誤魔化した。

 言えばもっとひどくなる。

 言ったところで何もしてもらうことはできない。

 ただでさえ、見て見ぬふりで誰も助けてくれないのだから、ひどくなったらいつか体も心も壊れるだろう。

 そう思って……いや、心はもうこのころには殆ど閉ざしてたか。

 心を守るために、別の人格を形成するように、あの時の俺はただ生きるだけ。

 なにかあれば反応するだけの生体機械のようなもんだったな。



 ドンッ! とドアを叩く音で世界が割れた。


「アキト! いつまでこんなことを続ける気だ‼ いますぐに出てきなさい‼」


 中等部のはじめごろだ。

 気付けば部屋に閉じこもるようになっていた。


 学校とは何のためにあるのか、理不尽なことに耐える為の力を身に着ける場所? コミュニケーション能力をごく一部の犠牲を用いて育て上げる為?

 だったら行かなくてもいい。

 勉強をするため? そんなものは通信制でどうにでもなる。


 誰も彼も俺を厄介者扱いする。

 なんでお前はいじめられているんだ、お前に原因があるんだろう、ってな感じかな。

 たぶんだけど、俺がいなくなれば笑って過ごしていくやつらがいることだろう。

 この国のシステムは黙って従う奴隷がいればいい、異端者は排除する。

 そんなものさ。



 風に溶けるように世界が飛んでいく。


「では、うちの愚息ならぬ駄息をお願いします」


 中等部最後の学年を引き籠もりで消費した後、部屋のドアを叩き壊され、縛り上げられてどこかへと連れていかれた。

 たどり着いた場所は、見た目木造二階建ての寮だった。

 実際のところ壁は合成樹脂、内装は金属面剥き出しのなかなかきついところだ。

 まあ工事中だったんだけど、そのときは知る由もなかった。


「それじゃ、この107号室が君の部屋ね。これが鍵、なくさないように。後は、いるものがあったら何か言ってね」


 そういえば管理人のお姉さんに会ったのはこの日だけだったな。

 長い黒髪に青いTシャツと膝までまくり上げたズボン。

 夢で見ている光景だというのに……俺の頭はこんなときのことまではっきりと記憶して……。



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