彼女の想い-24
建物や瓦礫を壁抜け魔法でショートカットして一気に逃げる。
視界端にマップを表示すれば赤色の光点ではなく赤色のエリアとして迫ってくる。
逃げ切れるのかこれ!?
「くそっ、しつけえ!」
いましがたビルの壁を抜けたにも関わらず、やつら全然勢いを落とさずに追いかけてくる。
なんでかと思って振り返ってみたら壁を斬ってやがった。
鉄筋入り強化コンクリートをバターみたいに簡単に斬り裂くっておかしいだろ。
「我が手に風を、鋭き刃と成りて悪しき者を斬り刻め!!」
追手の騎士が魔法を詠唱する。今までに聞いたことがない詠唱だ。
一瞬吸い寄せられるような感覚を覚え、詠唱内容からナニかが飛んでくるのは分かっていたから、すぐに後ろに手を向けて氷の壁を創りだす。
風の刃に簡単に切断されたが、その方向はあらぬ方向に向かい俺にあたることはない。
これでいい、受け流す。まともにやりあったらいけない。
恐らくいまのも受け止めようなんて思っていたら、今頃俺の身体は二つに分かれていただろうよ。
「我が手に炎を、深淵の闇を纏いて――」
次の詠唱。
このまま追いかけられながら対処なんて続けていたらあの子ところに行けない。
靴裏の爆発でいきなり進行方向を変えて壁をすり抜ける。
やつらが入ってくる前に床を地雷原に変えて、部屋のドアを開けて俺はさらに壁抜けでドアじゃない場所を通って逃げた。
騙せそうにもないがとりあえずな?
「待てっ!」
「じら――」
一気に誘爆したのかすごい音がして部屋ごと吹き飛んだ。
よ、よし……とりあえず死んではいないようだから救助とかで追手が減る……と思う。
まあいい、敵のことなんか気にしてる場合じゃない。
マップを表示してあの子の位置を確かめると、もう道に従って走るのをやめた。
最短コース、直線で表示。
途中にあるものはすべてすり抜けて突っ切った。
なんでこれを思いつかなかった。
魔法があるんだ、障害物なんてどうにだってなる。
最後の壁を突き抜ければ、青い髪のあの子が見えた。
なぜか懐かしさと安心を感じる。
「待って! 待ってくれ!」
出せる限りの大声で呼びかけるが、あの子は振り返ることはなく、俺に気付かずに走り去っていった。
そしてその後を追いかけるように現れた白い騎士たち。
このまま追わせるわけにはいかない、あの子を守る。
「……やれる、やるんだ」
ここを通すわけにはいかない。
「なんだ貴様、どこの者だ? 一般人ならば」
道を完全にふさぎ、十メートル以上もある分厚く高い氷の壁を創りだす。
それだけでもう追手の構えが変わる。
「こちらはアカモートの騎士団だ。そちらは桜都の人間のようだが、なんの真似だ?」
「なんであの子を追いかけるんだ。あの子が何をしたって言うんだよ」
「ヒーロー気取りならやめておけ、子憎。ここは子供の遊び場じゃないんだ」
数は……三十人ほどか。
幸いなことに民間人と思われている、なら不意打ちだ。
最初の一撃でどれほど削れるかが問題だな。
「こっちは遊び気分じゃねえんだよ!」
「自惚れもほどほどにしておけ」
リーダーらしき騎士が剣に手を掛けるのと同時、鉄を溶かすイメージで炎を放射した。
どれほどの温度が出ているかは知らないが、人が生きていられる温度でないことは確かだ。
叫び声が聞こえてもやめはしない。
燃え盛る炎でまったく見えないが、地獄になっているだろうな。
しばらくして叫び声が聞こえなくなったが、念のため温度を上げてさらに焼いておこうかと思った。
だが止める気はなかったのにいきなり炎が出なくなった。
強い風が渦巻いて、燃え盛る炎が飲み込まれて消える。
「楽勝ね」
渦巻いた風の中から二人の少女が姿を現した。
片方は金髪で両手に一本ずつ、三メートルはあろうかという長い槍を持っている。
もう片方は白に近い金髪で片手に一本の槍を。
どちらとも物騒。そして穂先の血と倒れている騎士を見ればだいたいわかる。
まったく焦げていない、貫かれた痕がある。これの意味するところは俺の炎は騎士に通用していなくて、この少女たちが騎士を全滅させたということ。
けっ……可愛いのにさらにヤバそうなのが来たなぁ……。




