彼女の想い-23
俺の住んでいた町が戦場になるなんていう、非現実的なことがいま起こっている。
それでも思考は冷静だ。
しかもこういう状況を知っているかのように。
いろんなものが散らばった道路を駆ける。
倒壊したビルや戦闘で破壊された兵器が道を塞ぐが、そんなものは魔法で吹き飛ばす。
さっと視界の端にマップを呼び出して確認してみればせわしなく動き回る赤い光点、その中に混じってあの子以外の青い光点も動き回っていた。
ただしどこを見ても多勢に無勢。次々に光点がロストしていく。
マップを消すと、ちょうどマップに重なるようにして『call』と表示されていた。
誰からだろうか?
とりあえず呼び出しを承諾。
『アキト、ノイズはないか』
するとベインの声が聞こえてきた。それも直接頭の中にだ。
こういうのは慣れているから驚きもしない。
『ないけど……なんかようでもある?』
こちらも声に出さず頭の中で念じるだけで通話ができる。
他人に聞かれたくない内緒話にはもってこいだ。
『いやなに、言い忘れていたことだが後数時間で向こう側に引き戻される。覚えておけ』
言うだけ言うとぷつっと通話が切れた。
制限時間がある、だったら俺にできるだけのことを全力でやらねば。
最優先目標はあの子を助けることだ。それができなければ……出来なかった時のことは考えるな、やるんだ、俺。
第二目標は葛原鋼機とかいうクズどもを殲滅すること。それ以下でも以上でもない。
第三目標は……パソコンのお墓を……意味なんてないけどな、長年使ってきた愛機だぜ?
と、余計なことを考えながら走っていたらずっこけた。
打ち付けたところ、擦りむいたところは即座に魔法で治癒。
大丈夫だ、さっきまでのペースならまだ間に合う。
念のためマップを呼び出してルートを……なんだこの赤色のエリア。
いや、これ全部が敵? ほかの青い光がほとんどなくなっている、たぶんそっちを追いかけていたのが合流したんだろう。
「まだいたぞ、撃てぇ!!」
「ひぃっ!」
いきなり弾丸が飛んできて、咄嗟に近くの柱の陰に飛び込んだ。
ガリゴリとコンクリートが削られていく。
「逃がすな! 一人だ!」
やべぇぇぇぇぇぇぇっ!!
攻撃手段と回復手段はある、防御手段は? 氷の壁で防げるとは思えんぞこれ。
しかしそっと陰から覗き見てみると、建物と建物の間に隠れている民間人のようなやつがいた。
狙いはあっち、俺は気付かれてない。
そして追いかけているのはイーサとかいうところで襲ってきた『騎士』と同じ格好。手には銃だけじゃなくて長剣や杖といったものが握られている。
見るからに魔法使い。
「そこのやつ、出て来い!」
警告と共に隠れているやつに向けて数発の銃弾が飛ぶ、同時に俺の足元が凍結した。
……バレてた。
とりあえず加熱してすぐに溶かす。
魔法を使ったという気配が伝わったのか、向こうの構えが変わる。
「こちらは浮遊都市アカモート第二近衛騎士団だ。貴様、所属は」
さて、このまま隠れていたら間違いなく吹っ飛ばされる。
でもってなんて答えるのが正解なのだろうか。
いまの俺ならばセインツか白き乙女を名乗れるが、敵さんはどうも白き乙女を追っている様子。
「セインツだ」
「聞かん名だな、トップは誰だ?」
「レイズ」
「そうか、ならば敵だ。撃て」
いきなり火炎弾が飛来し、隠れていた柱の根元を一撃で砕く。
潰されてはたまらないので飛び出し、右手に水弾を、左手に火炎弾を作りだしてぶつけて爆破。
人工的な霧の煙幕を発生させて一目散に逃げる。
ゲームだったら戦って全滅させるとかいうイベント戦になるだろうが、そんなことができる訳がない。
自分は特別だとか思っちゃいかんのだよ。
こちらには魔法がある。向こうにも魔法がある、オマケに数の力と銃もある。
さらに言えば見た感じは訓練された兵士だ。
……勝てそうにないよ、これ。




